新たな国内大型上場ユニコーン誕生。スキマバイト「タイミー」社長に聞いた「変わらないこと」
株式会社タイミー 代表取締役 小川嶺氏インタビュー
起業からの失敗エピソードをnoteで赤裸々に公開。後輩スタートアップへ伝えたいこと
――noteに失敗エピソードなども書いています。あえて公開する狙いは?
小川氏:世の中は、しくじり先生から学ぶものだと思っています。メディアが取り上げてくれるのは基本的に成功体験なので、完璧な経営で簡単に上場したように見えるかもしれません。実際は右も左もわからない学生が起業したのがタイミーなので、noteに書いていることは起業を目指している方にとって、再現性のあるノウハウが詰まっていると思います。
自分と同じところでつまずいてほしくない。自分の知識や経験が後輩スタートアップの役に立つのであればという思いから、スタートアップのリアルを伝えられるように等身大で発信するようにしています。
―― 改めて、後進のスタートアップ経営者に伝えたいメッセージはありますか。
小川氏:起業家として背中で語り、「小川さんに負けたくない」と思ってくれることがスタートアップエコシステムへの還元になると思っています。今後は大企業と競争することになりますが、ここで負けたらつまらない。せっかくスタートアップが夢を持って成長し、上場したところに、大手から類似のサービスが出て負けてしまうのでは、スタートアップエコシステムが成り立たなくなる。実力で勝てるように戦略戦術を立てて、何を尖らせるかを意識し、自分たちのポリシーを明確にしていれば大企業にも負けることがないことを証明していきたいです。
―― 今後の展開についてお聞かせください。
小川氏:タイミーのミッション「『はたらく』を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」を実現することに力を入れていきます。まずは、今の「タイミー」は1日しか働けませんが、複数日、1カ月と働ける期間を選べるようにするところから着手していきます。次に、「人生の可能性を広げる」に関して、タイミーを利用しているワーカーさんは、非正規での働き方を望まれる人もいれば、正社員になりたい人もいらっしゃる。そういった方へのさまざまなルートを提供するために、新サービスの「タイミーキャリアプラス」を立ち上げました。
「タイミーキャリアプラス」は、タイミーのアルバイトで多くの店舗から高評価を受けている人材を企業の正社員として推薦していくサービスです。キャリア相談やリスキリング講座などを提供し、働く方々の可能性を最大化していきます。
また、タイミーのサービスエリアは現在47都道府県をカバーしてますが、地方はまだまだ人材不足が深刻なので、自治体と連携して市町村単位までサービスを浸透させるのがこの先3年のミッションです。さらには、日本と同じような労働力に課題を抱えている、韓国や台湾にも進出していきたいと考えています。
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起業家・経営者として大事にしていることという問いには、「自分たちはミッション・ビジョンに雇われてる、という意識を持つことです。創業者が一番偉いという体制では、2代目、3代目と続かない。ミッション・ビジョンに雇われているのであれば、仮に私が退いても会社は長く続いていけるでしょう。20年後、 30年後のために今から文化を作っていくことが重要だと考えています」と答えてくれた小川氏。ただのHRサービスとしてではなく、”新たな文化”としてどのように根付かせることができるのか、スタートアップとしての挑戦は続いていく。