日本独自の推進策が対象・支援内容・投資額共にパワーアップ
AWSが国内の生成AI開発・活用企業を募集 目標設定から寄り添う“実用化”支援プログラム
2024年07月23日 09時10分更新
アマゾン ウェブ サービス ジャパンは、2024年7月22日、国内の企業・組織を対象とする「生成AI実用化推進プログラム」の応募受付を開始した。生成AIを開発・利用する企業を支援する日本独自のプログラムで、支援には総額1000万ドル規模のサービスクレジットが含まれる。
同社 執行役員 サービス&テクノロジー事業統括本部 統括本部長 安田俊彦氏は、「2023年には生成AIのテクノロジーを“作る”ためのプログラムを展開したが、そこから一歩進んで、そのテクノロジーの“業務活用”や“社会実装”を支援していく」と説明する。
生成AIを開発・利用する企業の“実用化”をゴール設定から支援、総額で1000万ドル規模のクレジットも用意
AWSジャパンはこれまでも、生成AIの活用を推進する日本独自の取り組みを進めてきた。2023年には、大規模言語モデル(LLM)の開発を支援する「LLM開発支援プログラム」を展開。実際に17社が、技術的支援や計算リソースの確保、そして、総額600万ドル規模のサービスクレジットといったサポートを受けた。
同プログラムを進化させた施策として、今回開始するのが「生成AI実用化推進プログラム」である。生成AIの活用によってビジネスの課題解決に取り組む国内企業を対象にしており、今回は「モデルを開発する」企業に加えて、「モデルを利用する」企業に対しても支援を展開する。
プログラムでは、これらの企業の経済的な負担を軽減するために、総額で1000万ドル規模のクレジットを用意。提供されるクレジットの額は、支援プロジェクトで想定されるコストの半額が上限となり、支援内容によっても変動する。
加えて、課題解決のための戦略策定から、本番環境での活用に至るまでの過程において、AWSによる様々なサポートが得られる。まず、生成AIの活用で達成したいビジネスゴールを、一緒になって明確化するところから始まるのが特徴だ。
AWSジャパンのサービス&テクノロジー事業統括本部 技術本部長/ソリューションアーキテクトである小林正人氏は、「『生成AIで何を目指していくか』、『どういう作戦で実現していくか』を定めるところから支援して、最終的には本番環境にそれを適用していく。ディスカッションに基づき、ユーザーのプロジェクトを加速させる最適な手伝いをしたい」と説明する。
モデルを開発する企業に対しては、前述の戦略策定からはじまり、開発環境構築やデータ準備、モデル活用やビジネス適用、協業マッチング、サービスクレジットの提供といった一連の支援を提供する。
2023年の支援プログラム参加企業からの「開発したモデルをどう適用していけばよいのか」という声を受けて、モデルに合った課題を有するユーザー企業や価値を広げられるパートナー企業などとマッチングさせる施策も追加している。
一方で、モデルを利用する企業に対しては、戦略策定から設計方針、カスタマイズ、AWSパートナー活用、サービスクレジットの提供といった支援を展開する。
目指すべきゴールによっては、プロンプトエンジニアリングやRAG、ファインチューニングといった、モデルをカスタマイズする手法も提案する。「実業務で活用していくとなると、公開された基盤モデルのままでは実現できないケースが出てくる」と小林氏。
これらの支援は、AWSジャパンのチームをはじめ、生成AIやプロトタイプ開発などを専門とするグローバルチーム、さらには、国内の連携パートナー企業から提供される。パートナーとの連携が加わったのも、2023年の支援プログラムからの強化点だ。
この生成AI実用化推進プログラムは、2024年7月22日から10月31日まで参加企業を募集し、支援期間は2025年3月末までを予定している。AWSジャパンの担当者への連絡、もしくは、特設サイトにて参加を受け付けている。
小林氏は、「昨年のプログラムから対象を広げたため、より多くの支援につなげたい。目安として50社程度へのサポートを設定している」と見通しを語る。加えて、プログラムに参加するメリットについて、「最初にゴールを定めるところから支援する点が重要だと思っている。共に議論しながらゴールを明確化した上で、既にある計画や体制に足りない要素をAWSが補う」と強調した。