エリアLOVEWalker総編集長・玉置泰紀のまち散歩 第6回

全国でも珍しい観光防災拠点「テラッセ オレンジ トイ」が静岡県伊豆市の土肥海水浴場に爆誕!夏に遊びに行きたい伊豆の観光スポットも回ってきたぞ

文●玉置泰紀(一般社団法人メタ観光推進機構理事)

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 静岡県伊豆市の土肥海水浴場に、全国でも珍しい津波避難複合施設『テラッセ オレンジ トイ』が2024年7月12日オープンし、竣工式典と『みなとオアシス土肥』の登録証交付式が行われ、筆者も駆けつけた。この複合施設は、海で遊ぶ観光客や地域住民を津波の脅威から守る「避難施設」と、平常時には遊び、くつろぎ、交流できる「観光施設」を兼ね備えた施設で、観光防災街づくりの一つのマイルストーンになりそうだ。

『テラッセ オレンジ トイ』の全景

筆者

記念式典で正午、近くの港を出発した駿河湾フェリーの汽笛に合わせて同施設3階から関係者がテープを一斉に投げた

菊地豊市長らによるテープカット

 松原公園津波避難複合施設『テラッセ オレンジ トイ』のある伊豆市土肥地区は、南海トラフの巨大地震が発生した際に、最大10メートルの津波が想定され、静岡県の津波災害特別警戒区域「オレンジゾーン」に指定されている。ところが、夏は多くの人でにぎわう海水浴場周辺に、高さ10メートルを越える避難場所が不足していることから計画され、普段から活用され利用者に親しまれる施設で、レストランなど観光拠点にもなり、備蓄倉庫も用意されて、1200人が避難できるようになっている。

 設計は東京大学生産技術研究所の今井公太郎教授で、この日は自ら施設の説明会も行った。南海トラフ巨大地震発生の6分後には沿岸部に津波が到着すると想定されているため、海岸付近にいる観光客や市民が短時間で高い場所へ逃げられるように設計されている。高さ18.8メートルの4階建てで、3階から上が避難スペース(海抜14メートル以上)となり約1200人を収容でき、水・食料・簡易トイレやオムツなどが備蓄され、AEDや非常用の発電機も設置されている。

 建物の周りを巻くように4本の階段があり、傾斜の緩い階段(登るのがつらい人向け)と急な階段(急いで上がれる)になっている。デザインは周囲の松林に馴染むものに。また、普段は、市民や観光客の交流の場所として活用される。1階には地元の新鮮な魚介類や野菜などを販売する土産物店やカフェ、3階にはレストラン、4階の屋上には「天空BBQ」も。

 施設の名称は、「テラッセ」には 1. 絶景を楽しめる「テラス」(フランス語)/2. 災害時には灯台の様に生命を守り照らせる/3. 伊豆市の観光や未来を照らせる、という意味があり、また、「てらっせ」には土肥の方言の「こらっしゃー」(来なよ)に、「おれんじ」は「おらっち」(私の家)と響きが似ていて、「私たちの、土肥にいらっしゃい」という意味が込められている。「オレンジ」には 1. 土肥の海に映る美しい夕陽/2. “全国初”のオレンジゾーンによる施設/3. 名産のミカンから、暖かいイメージを。

 「toi」にはヨーロッパの「toi toi toi」というおまじないで、幸運を祈る、応援の意味がある。

設計をした今井教授

備蓄倉庫

 また今回、全国162ヵ所目の「みなとオアシス」として登録されたが、これは、国土交通省港湾局長が申請に基づき登録するもので、地域住民の交流や観光の振興を通じ、地域の活性化に資する「みなと」を核としたまちづくりを促進するため、住民参加による地域振興の取り組みが継続的に行われる施設を意味する。

 『みなとオアシス土肥』は 、賑わいと防災を兼ね備えた海辺の空間をテーマに土肥ならではの「金山」や「駿河湾フェリー」などの施設で構成されており、松原公園・屋形海岸、佐渡金山に次ぐ産出量を誇った“伊豆最大”の金山であり、現在は砂金採りや坑道見学を体験できる金のテーマパーク「土肥金山」、土肥港旅客ターミナルからなる。

『テラッセ オレンジ トイ』

1階:土肥特産市「ありがとう」

 地場産品直売所。採れたての地元農産物、国産小麦を中心に選定し、天然酵母を使用したパンや焼き菓子、伊豆市内で醸造された日本酒・ワイン・地ビール、駿河湾で水揚げされた地元魚介類の加工品や鮮魚、更に、伊豆市内の特産品や様々な地域資源等を活用した商品、伊豆市ブランド「AMAGIFT(アマギフト)」の販売も行う。 

営業時間 9:00~17:00

1階:Porto 101

 テイクアウトカフェ。100%伊豆産の生乳を使用した伊豆牛乳を作って100年以上、地産地消、手づくりをモットーに事業を展開している大木乳業が提供するテイクアウト専門のカフェ。伊豆産牛乳を使用したモーモーミルクで作るプレミアムソフトは滑らかで濃厚な口当たりとカリカリのワッフルコーンが絶妙。ほかのメニューは、マヒマヒサンド、プレミアムソフトクリーム、君だけプリン、西伊豆まるごとフルーツミルクなど。

営業時間 9:00~18:00(季節により変動/年中無休) 

3階:海と夕日を奏でる食事処「ありがとう」

 レストラン。地魚を使った料理を中心に、創作料理や、お子様にも対応したメニューが楽しめる。 旅館の夕食を人数限定の予約制にて提供(夕食の予約時はBar営業は休業) メニューは、タワー丼・地魚海鮮丼・地魚刺身定食・にぎり寿司・わさび丼・焼肉定食・お子様ランチなど。

営業時間 レストラン営業10:30~15:30 Bar営業19:00~22:00(季節により変動)

■施設情報

施設名:松原公園津波避難複合施設 (愛称 Terrasse Orange toi(テラッセ オレンジ トイ)」)
所在地:静岡県伊豆市土肥2657-6松原公園内
構造等:鉄骨造、地上4階建て(地上18.8m) 避難スペースは3階以上(海抜14m以上) 
※津波浸水想定高10m+余裕高4m
機能等:避難面積約600m2、想定避難者約1,200人 
【災害時】一時避難スペース、防災備蓄庫等 
【平常時】地域交流の場、物販、飲食の提供、観光情報等の発信
ウェブサイト土肥温泉旅館協同組合公式サイト

海も山も温泉も滝もグルメもぜ~んぶ満喫の伊豆市の観光スポットを回ってきたぞ

 伊豆半島の中央部に位置する伊豆市は2004年4月1日、田方郡修善寺町・土肥町・天城湯ケ島町・中伊豆町の4町が合併して発足した。人気の温泉街を持ち、海は勿論、山や川、滝など豊かな自然を楽しめる。9世紀に禅寺としてこの地に開かれた修禅寺や、竹林の小径も知られる。中世に開山された土肥金山には、復元された坑道や黄金館がある。狩野川の上流では、浄蓮の滝を堪能できる。今回は『テラッセ オレンジ トイ』の取材とともに、いくつか観光スポットを巡ってみた。

●修善寺温泉

 修禅寺は、平安時代に弘法大師(空海)が開いたという。川原で病気の父親の体を洗う少年のために「弘法大師が独鈷を用いて岩を砕き、そこから湯が湧出した」との開湯の伝説がある。鎌倉時代には、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも取り上げられた2代将軍、源頼家が幽閉され暗殺された事でも有名。

公式サイト伊豆修善寺温泉

修善寺川と独鈷の湯

修善寺川(桂川)に架かる5つの橋の一つで、5つ全ての橋を願いをかけながら渡ると恋が実るといわれている

修禅寺

竹林の小径

●旭滝

 伊豆市の滝では浄蓮の滝が有名だが、知る人ぞ知る名瀑が旭滝だ。旭滝は、落差105mと伊豆半島でもっとも高い滝だが、大雨の後以外は水量が少なく目立たない滝。滝面は東向きで、朝日が昇る時に輝くので旭滝と名付けられた。六段に分かれた崖を右に左に流れを変えて落ちる姿は優美で、落ち口から滝壷まで一気に落下せず、岩肌の上を水が滑るように落ちる「渓流滝」を楽しめる。筆者が訪れたときはまさに雨中の合間で、流量も多く堪能できた。

 実際に、滝の前まで行くと、人工的に石垣を積んだようなに見えて驚いたが、この岩は『柱状節理(ちゅうじょうせつり)』と呼ばれるもので、火山のマグマが急激に冷やされて出来たもので、前から見ると蜂の巣のような形ですが、横から見ると柱状になっている。旭滝は伊豆半島ジオパークのジオサイトに指定されている。

 また、滝の前には、いまは廃宗となった普化宗(編み笠をかぶり尺八を吹奏しながら行脚する虚無僧の宗派)の寺・瀧源寺の境内があったといい、遊歩道の途中には虚無僧の墓標である卵搭が残されている。尺八本曲『滝落』は、ここで作られた尺八の名曲として知られ石碑がある。

 さらに、旭滝の入り口には、「高皇産霊神(タカミムスビノカミ)」が祀られている「大平(おおだいら)神社」がある。「高皇産霊神(タカミムスビノカミ)」は、天地を生成する力を持つ神様。また、大平神社の向かいには「龍泉寺」があり、境内には旭滝大仏が鎮座している。

所在地:静岡県伊豆市大平
ウェブサイト伊豆市観光情報サイト

●筏場(いかだば)のわさび田

 約15ヘクタール、1500枚のわさび田の棚田。東京ドーム3個分がすっぽり収まるくらいの大きさ。棚田の周りには木が覆いかぶさるように生えているが、これは先人の知恵で、わさびに陽があたりすぎないように日除けの役目をしているの。筏場のわさび田は「静岡県の棚田10選」に選出されている。また、わさび田は私有地であり、大切な資産なので、わさび田の見学に際しては、下記リンク先のルールを必ず確認して欲しい。

ウェブサイト伊豆市観光情報サイト
伊豆市内のわさび田見学・視察に関するルールについて[2022年4月改訂]

●恋人岬&ステラハウス

 土肥温泉街から南に8kmほど行った国道136号沿いの「恋人岬」バス停から、富士見遊歩道と木製デッキを進んだ先にある。年間25万人が訪れる。岬の先端にある展望デッキは180度以上のパノラマが拡がり、富士山や駿河湾を一望できる。展望デッキにある、愛の鐘「ラブコールベル」を3回鳴らしながら愛しい人の名を呼ぶと愛が実るといわれていて、伊豆の恋愛パワースポットとして人気だ。遊歩道入口にあるステラハウスではスイーツやネコ店長が迎えてくれる。

所在地:静岡県伊豆市小下田3135-7
公式サイトhttp://koibito.toi-onsen.com/

●道の駅「伊豆月ケ瀬」

 伊豆縦貫自動車道・天城北道路の月ケ瀬インターチェンジに直結し、国道136号からも利用可能な、伊豆半島の交通の要衝。2019年12月14日にオープンした。 伊豆半島全域の観光情報提供、サイクルステーション設置など、伊豆半島の観光拠点になっている。 敷地内には、狩野川沿いの緑豊かな立地を生かした水際公園があり、伊豆の風景の魅力を感じられる場となっている。また会合などで利用できる多目的スペースもあり、観光拠点としてだけでなく、子どもたちの遊び場や、地域の憩いの場として日常的に利用できる施設としても活用されている。

所在地:静岡県伊豆市月ケ瀬78-2
公式サイトhttps://www.izutsukigase.com/

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