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新アーキテクチャの採用で「クラウドの柔軟性とExadataの高速性を両立」

「数コア」の小規模DBにもExadataの性能を、オラクルが「Exadata Exascale」発表

2024年07月16日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 オラクルは2024年7月11日(米国時間)、あらゆる規模のデータベース(DB)ワークロードに「Oracle Exadata」の高速性や可用性のメリットを提供する、新たなクラウドDBアーキテクチャ「Oracle Exadata Exascale」を発表した。

 Exadata Exascaleでは、コンピュートレイヤーからストレージレイヤーへ直接、RDMA(Remote Direct Memory Access)を使ってデータリクエストを送信するアーキテクチャなどの新技術を採用している。これにより、OLTPトランザクションにおいて、他のクラウドDBサービスよりも圧倒的に高速な「テラバイト/秒レベルのI/Oスループット」と「マイクロ秒レベルのIOレイテンシ」が実現するという。

 また、これまでのようにExadataを占有利用する高額なサービス(最小でも月額1万800ドル)ではなく、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)上のDBサービスで「数コア」レベルの小規模なワークロードから利用できる(最小で月額357ドル)ため、「最大で95%のインフラコスト削減が可能」である点もアピールしている。

他社クラウドDBサービスと「Exadata Exascale」の、OLTP I/Oレイテンシ比較(オラクルによるデータ)。I/Oレイテンシは最大50倍改善、I/Oスループットは最大230倍高速化するとアピールした

説明会に出席した、オラクル Exadataスケールアウト・テクノロジー開発担当SVPのコディー・ウママゲスワラン(Kodi Umamageswaran)氏

Exadataのパフォーマンスが小規模/低価格でも利用可能に

 オラクルによると、Exadata Exascaleは現在、OCI上の「Exadata Database Service on Exascale Infrastructure(ExaDB-XS)」や「Oracle Database 23ai」サービスを通じて利用できる。

 オラクル Exadataスケールアウト・テクノロジー開発担当SVPのコディー・ウママゲスワラン氏は、Exadata Exascaleによって「Exadataがもたらすインテリジェンス」と「クラウドDBがもたらすメリット」を両立させることができると説明する。

「Exadataのインテリジェンス」「クラウドDBのメリット」の両方を実現できると説明(画像は公式ブログより)

 Exadata Exascaleは、コンピュートリソースの共有プール、ストレージリソースの共有プールという2レイヤーで構成される。いずれも複数のテナント(ユーザー)が共有して利用するリソースプールであり、ユーザーが実行するDBワークロードに応じて必要なコア数とストレージ容量を柔軟に割り当てる(プロビジョニングする)ことができる。利用料金は、DBのコア数とストレージ容量に応じた従量課金型(Pay-Per-Use)であり、IOPSに対する課金はない。

Exadata Exascaleの基本的なアーキテクチャ

Exadata Exascaleアーキテクチャの特徴は

 ウママゲスワラン氏は、新アーキテクチャの特徴のひとつとして「共有型のストレージリソースプール」を挙げた。これまでのクラウドDBでは、ストレージプールは各テナントが専有するアーキテクチャをとっており、柔軟性が低く、コストは高かった。一方でExadata Exascaleのストレージプールは、数千のテナント、数百万のデータベースによる共有利用を実現するという。

 「中間レイヤーの排除」と、それによるパフォーマンスの大幅な向上(高速化)も新アーキテクチャの特徴だ。ウママゲスワラン氏は、現在主流のクラウドDBでは、コンピュートレイヤーとストレージレイヤーの間にいくつもの中間レイヤーがあり、それぞれでレイテンシやボトルネックが生じていたと説明する。

 一方、Exadata Exascaleは、コンピュート/ストレージの2レイヤーのみで構成されるため、中間レイヤーのレイテンシやボトルネックが排除できる。さらに、中間レイヤーを排除したことでRDMAが使えるようになり、Oracle Database 23aiのインテリジェントなクエリ送信も可能になる。

従来のクラウドDBとExadata Exascaleの比較。Exadata Exascaleは中間レイヤーを排除し、100GbE(RoCE)ネットワークを使ったRDMAの直接リクエスト送信を可能にしたことで、大幅な高速化を実現した

 なお、Exascaleのストレージレイヤーは、階層化による最適化処理も自動で行うと説明した。XRMEM(Exadata RDMAメモリ、RDMAアクセスが可能なメモリ)、フラッシュキャッシュ、ディスクドライブの3階層を使い、ホット/ウォーム/コールドデータのインテリジェントな移動によって、パフォーマンスと容量の最適化を図る。

 また、仮想マシン(VM)向けにもRDMA対応のブロックボリュームを独自に開発しており、DB以外のデータ(ファイルシステム)のI/Oについても、低レイテンシ、高スループットを実現できると説明した。今後、RDMAによるVMのライブマイグレーション機能も提供予定だという。

 ウママゲスワラン氏は、AWSやAzureといった他社クラウドDBサービスではI/Oレイテンシが1ミリ秒(1000マイクロ秒)、I/Oスループットが10~20GB/秒程度であるのに対して、Exadata Exascaleではそれぞれ17マイクロ秒、2880GB/秒(2.8TB/秒)まで高速化できると、オラクルによるテスト結果を紹介した。

分析クエリやAIベクトル検索をストレージレイヤーで分散並列処理

 Exadata Exascaleが実現するインテリジェンスのひとつとして、ウママゲスワラン氏は「AIベクトル検索(AI Vector Search)のストレージレイヤーへのオフロード」を紹介した。AIベクトル検索を実行すると、透過的に複数台のストレージで分散並列処理が行われ、クエリが最大30倍高速化されるという。

 なおこのインテリジェントな分散並列処理は、AIベクトル検索だけでなく、一般的な分析クエリにも適用される。

Exadata Exascaleでは、透過的な分散並列処理によって

 そのほかにも、本番DBとデータブロックを共有するシンクローンの技術によって、開発/テスト用クローンDBを即時作成しつつ容量増加を大幅に抑制できること、各テナントからは物理サーバーは見えず(透過的であり)、一切のストレージ管理が自動化されていることなどの特徴を挙げた。

 なおオラクルによると、Exadata Exascaleアーキテクチャを採用したOracle DBサービスは、OCIの日本リージョンでも今後1週間程度で提供開始される予定。さらに今後、顧客/パートナー専用リージョンの「Dedicated Region Cloud@Customer」や「Oracle Alloy」でも順次提供していくほか、Microsoft AzureやGoogle Cloudのデータセンターに展開しているOracle DBサービスへの展開も検討中だという。

Exadata Exascaleアーキテクチャで実現するDBサービスのメリットのまとめ

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