佐々木喜洋のポータブルオーディオトレンド 第295回
ソニーエリクソンでかつて培われた、パーソナルサウンドの技術を搭載
NUARLのMEMS搭載完全ワイヤレス「Inovatör」(旧X878)の秘密とは?
2024年07月14日 11時45分更新
まさに、音の聞こえと市場の改革者となるか?
X878は「Inovatör」という名称で発売するそうだが、これは英語の革新という意味だけではなく、ウムラウトを使用することでaudiodoが拠点とするスウエーデンを意識し、かつ2x2の模式化という意味も込めているということだ。
開発中の実機を用いて試聴した。実機はやや大きめの筐体だが、一度耳に装着すれば装着感は悪くない。
スマートフォンを立ち上げてアプリを起動し、新規プロファイルを作成すると聴覚テストが始まる。これは身体検査の聴覚測定のようなトーン音が、音量/音の高低を変えながら発信され、それが聞こえるかどうかを繰り返していくものだ。この手順自体は他社のパーソナル補正機能でもよく用いられるが、同種のものに比べると繰り返し回数や音量の高低の幅が広く、聞こえるか聞こえないかの判別がしにくい音が多く使われているように感じた。終了すると結果がが自動的にイヤホンに格納されるようで、とてもスムーズにテストできる。
X878はポタフェスで試作機を聴いた時と同様にとても明瞭感が高くシャープな音質に感じられた。ヴォーカルの再現性がとても良い。Nuarlアプリを再度起動して、音楽を聴きながらaudiodoの補正機能をオンにしてみると、音質がさらに晴れ上がるようにクリアになった。無理なイコライジングが適用される感じはなく、元の音質がそのまま高くなる感覚だ。たしかに元の音質を大きく変えるものではなく、全体の音のバランスを整えるための技術に感じられた。
このバージョンではまだ空間オーディオへの対応はなされていないそうだが、audiodo技術が左右の音の差を高精度に補正するという点から推測すると、空間オーディオに適用する効果も大きいように考えられる。
Inovatörの発売はまだ先だが、今後を期待したいイヤホンである。
![](/img/blank.gif)
この連載の記事
-
第294回
AV
AirPodsで使用者の動きからBPMを認識、それを何かに応用できる特許 -
第293回
AV
次世代AirPodsにはカメラが付くらしい、じゃあ何に使う?(ヒント:Vision Pro) -
第292回
AV
OTOTEN発、LinkPlayの多機能ネット再生機「WiiM」とSHANLINGの「EC Smart」を聴く -
第291回
AV
ビクターの新機軸、シルク配合振動板の魅力とは? HA-FX550Tを聴く -
第290回
AV
HDTracksがMQA技術を使ったストリーミング配信開始へ -
第289回
AV
TIDALがMQA配信から撤退、すべてFLACに──360 Reality Audioも聞けなくなる -
第288回
AV
「AirPods Proの“会話を検知”だけじゃ不十分」──ワシントン大学が凝視するだけで相手の声を抽出する新技術 -
第287回
AV
Roon ARCがCarPlayやAndroid Autoに対応、車内で音声操作を -
第286回
AV
MQAに新動向、MQA技術の先にある「AIRIA」「FOQUS」「QRONO」とは? -
第285回
AV
新感覚のオーディオイベント「REB fes」を体験、自分だけのストーリー実現に悩もう! - この連載の一覧へ