このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

小型筐体に収めた駆動力、かったつなサウンドを奏でる!!

なるほどそう来たか!! 似てそうでまったく違った「DENON HOME AMP」の感激サウンド、これは本当に音がいい!!

2024年07月10日 17時00分更新

文● ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

音を聴いて興奮、でも時に知的に音楽の全体像も楽しめるのだ

 気になる音についても少しふれておこう。まずは、光デジタル入力で基本性能を確認するところから。スピーカーはすでに述べたように、デノン試聴室のB&W 801 D4を使用している。

 最初はCD再生でFourplayの「Bali Run」を聴く。音のバランスが全体に良く、調和感、やさしさ、まとまりの良さなどを感じる。奥行き感の表現や、音の立ち上がりの速さ、そして楽器の音色感など、全体的に優れた再生であることに驚かされた。山内氏によると、同じHi-Fiでも積極的な方向の音に追い込んでるそうだ。デノンの「RCD-N12」が敢えてHi-Fiらしい、おとなしい音調にしているのとは対照的に攻めた感じの音がする。

PMA-50やRCD-N12などと筐体サイズを比較

 続いて再生されたのが、アリソン・クラウスのボーカル曲「Away Down The River」。こちらはCDではなくネットワーク再生になる。最初に感じたのは、声のチャーミングさ。そして、芯のある低域の支えだ。ドラムを叩く位置の違いといった細かなニュアンスなども明確に描き分ける力があるのには感嘆する。一方で、ギターのアタック音などはちょっとなまるというか独特な響きがある。中高域の詰まり感はMODEL M1でも感じたので、Axignのデジタルアンプの特徴の一つかもしれない。一方、音場の広さという点では、間奏部の音の広がりが素晴らしい。「積極的な鳴り方である一方、S/N感がいいので安心して聴ける」というのが山内氏のコメントだが、このあたりはミニコンポとは出せない単品機ならではの魅力と言えるかもしれない。アナログ的で滑らかな音の再現性も持っている。先日のサウンドバー「DENON HOME SOUND BAR 550」の発表時にデノンは、その音の特徴を“音楽を奏でる”という言葉で表現したが、DENON HOME AMPもまた“奏でる”タイプのオーディオ機器である。

 続いて、高音質レーベル2LからHoff ensembleの「Stille, Stille Kommer Vi」。ピアノとドラム、ブラス楽器による調和感のある伴奏の上に載る声の重なり感が非常にいい。ここも少しウォーム系と言うか、ブラスの音色(抜け感)に少し特徴があるように感じるが硬い金属系の音は硬質に鳴るのでレンジの再現自体は広いと言える。

 ストリーミング再生として、Amazon MusicからEkcleの「Moonstone」。EDM系の楽曲。効果音を交え、アンビエンス感のある冒頭のフレーズのあとにくる「ずーん」という音が試聴室に広く響く、逆にそのあとはデッドで音場が狭く、響きを抑えた表現になり、空間の広さと近さの対比が明確なのが面白い。スクラッチ音、スピーチ音などが曲の合間に挟み込まれ、個々が明瞭。全体が鳴りにぎやかなクライマックスは、音が整理されにくい面もあるが、大型の801 D4でも駆動力不足は感じない。低域の沈み込みがよく、ウーファーをしっかりと動かしている様子が印象的だった。

 その後はCDに戻り、ピアニスト、ユジャ・ワンの演奏するリストのロ短調ソナタではホールの空間性に加えて、ステージに近いかぶりつきで聴いているようなタッチの鋭利さ、低域の量感や支え感などがあり、演奏の迫力が伝わってきた。

 山内氏は「RCD-N12の開発から1年が経過しており、スムーズに開発ができた」とする。その背景としては経験を積んだことで、カスタムコンデンサーを使える局面で効果的に入れていけるノウハウを得たことがある。構成自体はRCD-N12と似ているが、個々の作り方やパーツ選定などはかなり異なる。しかし、その開発で培ったノウハウや経験は非常に役立ったとコメントしていた。

 最後の再生はドナルド・フェイゲンの『Kamakiriad』から「Teahouse on the Tracks」。弾む感じの低域が印象的な曲で、少し低域に寄ったバランスにも感じた。音の感じはリアルで拍手やクラップは多少硬いもののしっかりと前に出てきていた。

音のレイヤーが整って重なる、マエストロの実力を発揮する逸品

 DENON HOME AMPの音を聴いて総合的に感じたのは、空間表現の多彩さである。特に音の発する場所が左右方向、奥行き方向にしっかりと整理され、レイヤーがきれいに分かれるのが印象的だった。定位が非常にクッキリしているため、個々の音の楽器やそのニュアンス、そして音楽の全体構造がハッキリと理解できるのがいい。色彩感の描き分けが優れており、個々の楽器の音にフォーカスを当てていくのも楽しいが、オーケストラ曲などでは、指揮者がそうであるように、知的かつ俯瞰的に音楽全体を眺めることも可能かもしれない。

 指揮者と書いたが、冒頭でも触れたようにMODEL M1との比較でブランドによる音楽へのアプローチの違いが感じられるのも面白いところだ。話は少し飛躍するが、オーケストラコンサートでは、同じスコアを演奏しても指揮者や演奏者によって、曲の表現も印象も大きく変わってくる。それと同じことが起きているように思えた。同じ素材と課題が与えられたが、それを異なる料理人がさばく。その結果はいかに……。そんな楽しみや醍醐味を改めて感じさせてくれたのが、DENON HOME AMPの試聴体験だった。

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン