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2000年に世界初の観客向けダイヤルアップ接続を提供、球団CIOにファン体験進化の取り組みを聞いた

MLB サンフランシスコ・ジャイアンツが「球場のネットワーク」にこだわる理由

2024年07月08日 17時15分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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Wi-Fi 6Eへの対応、球場全体に900台弱のExtremeアクセスポイントを導入

 こうして2004年に導入されたCiscoのWi-Fi機器が保守期限を迎えることから、同球場では2023年、Wi-Fi環境のアップグレードに取り組むことになった。この19年のうちにWi-Fi市場はすっかり様変わりしており、「ExtremeとHPE Arubaがツートップ、Cisco Merakiなどがそれに続く」(シュロフ氏)のが現状だという。同球場ではExtreme Networksを選択した。

 Extremeを選択した理由として、シュロフ氏が最初に挙げたのが「確実な納品」だ。2023年当時はまだ、世界のサプライチェーンがコロナ禍による影響を大きく受けており、納品ができない/大きく遅延するベンダーも多かった。そんななかで「Extremeは確実に納品できると信じられた」とシュロフ氏は説明する。

 さらに、Extremeはスタジアムや大規模施設での豊富な導入実績もあった。Oracle Parkでは最新のWi-Fi 6Eを導入することを決めていたが、実績があるExtremeならばきちんと展開できるだろうと考えたという。

 テクノロジー面では、Extremeが提供する分析プラットフォームも高く評価したという。単にWi-Fi接続サービスを提供できるだけでなく、観客の物理的な移動などの「行動」を分析し、そのデータを活用できることにも魅力を感じた。

 「Extremeの営業アプローチもとても良かった。まだ(同球場が)顧客になる前から時間をかけて関係を構築してきたため、いざシステムを導入することになった段階で、すでにこちらの状況を理解しており、われわれも信頼してプロジェクトを進められた」(シュロフ氏)

 Oracle Parkでは今回、屋内/屋外の両方でExtremeのWi-Fi 6Eアクセスポイントを合計879台導入している。単に「インターネットにつながる」だけでなく、動画のストリーミングやアップロードもストレスなくできるレベルの通信スピードが実現している。アクセスポイント間を接続する有線ネットワークもBrocadeからExtremeに乗り換え、10GbE回線を2本敷いていると説明した。

屋内の天井に設置されたWi-Fi 6E対応「AP5010」

屋外向け「AP5050U」は観客席の足元に設置。これならば強力な電波が届く

トイレや売店があるように、Wi-Fiでつながるのも「当たり前」の時代

 シュロフ氏は、2024年現在の球場サービスとして“つながる”は「もう当たり前のもの」だと考えているという。

 「球場にトイレがあり、フードやドリンクの売店があるのと同じように、Wi-Fiがあるのは当たり前。もはや目新しいものではないが、ネット接続の悪い球場にファンは来ない」(シュロフ氏)

 公衆Wi-Fiでは、利用前にメールアドレスや電話番号を使った認証を求めるものが一般的であり、その方式をとる球場も多いという。しかし、Oracle ParkのWi-Fiはそのステップを省いており、SSIDをタップすればすぐに使える。

 「顧客データを取得しようと追加のステップを設けるチームもあるが、われわれはそうはしない。多くの人々は『Wi-Fiは無料のサービス』と考えており、われわれはWi-Fiアクセスをマネタイズするよりも、多くの人に使ってもらうほうが良いと考えている」(シュロフ氏)

スタジアム内でWi-FiのSSIDを知らせ、利用を促している

試合中、ジャイアンツが1点を取った直後にWi-Fiのスピードテストを実行してみた。この通信スピードが出ていれば、興奮する客席の様子も動画でストリーミングできる(?)

 ネーミングライツ契約は終了したものの、現在でも通信事業者のAT&Tとの関係は良好であり、AT&TはOracle Parkを5G通信のテストサイトとして使っているという。シュロフ氏は「この規模で5Gネットワークを展開した最初の球場になった」と胸を張る。

 球場内のネットワークは、観客がスマートフォンを接続して楽しむだけではない。映像が流れる巨大なスクリーン、今年アップグレードした最新の照明や音響設備の制御、バックオフィスでももちろん使われている。ネットワークはまさに球場運営の屋台骨を支えているのだ。

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