京都大学の研究チームは、高い酸化還元性能を示す新規光触媒「N-BAP」を開発。N-BAPが従来の光触媒ではできなかった有機化合物(エステル)の多電子還元反応を促進することを明らかにした。
京都大学の研究チームは、高い酸化還元性能を示す新規光触媒「N-BAP」を開発。N-BAPが従来の光触媒ではできなかった有機化合物(エステル)の多電子還元反応を促進することを明らかにした。 エステルは天然物・医薬・農薬・有機材料などに幅広く存在し、還元することでアルコールへと変換できる。この還元反応は重要な分子変換反応のひとつとして広く利用されているが、エステル還元には、反応性が高く、取り扱いが難しい高価な金属還元剤を当量以上使用する必要がある。 研究チームは今回、二つの窒素を有する4環性(4つの環状構造を持つ)のカチオン(陽イオン)性分子である「ジアザベンゾアセナフテニウム触媒(N-BAP)」を新たに設計・合成。N-BAPが可視光を吸収する光触媒として高い酸化還元性能を持ち、エステル還元反応を促進することを示した。 光触媒反応は環境調和性に優れるが、多電子を必要とする還元反応は困難とされてきたため、4電子を必要とするエステルのアルコールへの光触媒還元は未開拓であったという。N-BAPの光触媒作用のもと、天然に広く存在するシュウ酸塩と水によってエステルを還元できるため、持続可能な社会への貢献が期待される。 研究論文は、米国化学会誌(Journal of the American Chemical Society)に、2024年6月14日付けでオンライン掲載された。(中條)