アールスリーインスティテュートの「キミノマホロ」は、業務改善のフェーズごとに発生する作業を、明確なメニューとして提示したkintoneを使った業務改善サービス。10年以上のkintone開発で培ってきた実績から生まれたサービスの概要と狙いについて同社の浅賀功次氏に話を聞いた。
内製化のニーズに応えてSIサービスをリブランディング
「キミノマホロ」はkintoneのカスタマイズツール「gusuku Customine(グスク カスタマイン、以降「カスタマイン」と表す)」を提供するアールスリーインスティテュートの業務改善サービス。アールスリーインスティテュートの浅賀氏は、「もともと『ハイスピードSI』という名前でkintoneを用いたシステム開発を10年近くやってきましたが、その中で見えてきたいろいろな課題を解決すべく、リブランディングしたものです」と語る。
2014年にサイボウズのパートナーになり、ハイスピードSIとしてお客さまとの対面開発を中心に手がけてきたが、2018年にカスタマインがリリースされて以降、状況が変わってきた。「自社ツールであるカスタマインを用いて、kintoneの開発を手がけるのですが、弊社が開発をすべて手がけるのではなく、途中からシステムを引き渡し、お客さま自身が内製化を進めるというパターンが増えてきました」(浅賀氏)。単にできたシステムを引き渡すだけではなく、カスタマインによるカスタマイズまでお客さまに提供できるようになったのが大きな変換点だったわけだ。
キミノマホロというちょっとユニークなネーミングにも当然意図が込められている。「キミは当然お客さま。マホロは『まほろば』の方が通りがいいのですが、『素晴らしい場所』という意味です。業務改善に際して素晴らしい場所を提供するという意味を込めました」と浅賀氏は説明する。同社のツールであるgusukuシリーズとも異なるブランドとして展開し、イメージも日本神話を彷彿させる見栄えにしているという。
ITわからない人にも「なにをやってくれるのか」がわかりやすい
キミノマホロの最大の特徴は、作業範囲とコストがメニュー化されているところだ。これはkintoneを用いた「内製化の危うさ」、ひいては長らく課題となっていた「日本のシステム開発自体の危うさ」に対するアールスリーとしての回答と言える。「SI(システム開発)という言葉のあいまいさ、つかみどころのなさがお客さまだけでなく、ベンダーも不幸に導いています。作業範囲も、コストもあいまい。ベンダーがやってくれると思ったら、別途見積もりが必要だったり、本来やらなければならない作業までサービスでやることになっています」と浅賀氏は指摘する。
その点、キミノマホロではメニューごとの作業範囲、金額、成果物までが明確に定義されており、その範囲を超える作業はやらない。もちろん料金も明確になっており、お客さまにとっても、ベンダーにとってもフェアなサービスとなっている。「ITわからない方にも、なにを提供し、どれくらいの価格なのがわかりやすいというメリットがあります。ここまで成果物や価格感を出している業務改善サービスはないのではないか」と浅賀氏は語る。
もう1つは業務改善の進め方を「業務改善の始まり」「業務改善に必要なkintoneアプリ作成」「業務改善の実行サポート」の3つに分割し、それぞれにメニューを配しているところ。つまり、アプリ作成だけではなく、業務改善の前段階、運用や継続的な改善サイクルまでカバーしているわけだ。過去のハイスピードSIにおいても、こうした作業はやってきたが、「ただ、ここまでメニュー化することで、お客さまにも業務改善全体の流れを意識してもらえる」(浅賀氏)という。しかも、kintoneでのアプリ開発の勘所をまとめたサイボウズの「kintone SIGNPOST」とひも付いているので、kintoneユーザーにもピンと来るはずだ。
特に重視したのは、アプリ作成以前の「業務改善の始まり」のフェーズ。「業務改善の目的の設定」「現状の業務整理」「作るもの・作らないものの検討」をメニュー化しており、スムーズにアプリ作成に移行できるという。「kintone hiveなどでの事例を見ると、目的を決めずに、なんとなく作ってしまったことで、手戻りが発生したとか、作ったけど使われなかったということも多い。確かにkintoneの画面を見ると、まずアプリを作りたくなってしまいますが、社内に浸透するアプリを作ろうとすると、どうしてもこのフェーズは外せません」(浅賀氏)。
キミノマホロのメニューに込められたメッセージ
キミノマホロのメニューは、用語という観点でも、kintoneユーザーの中心である業務の現場ユーザー(いわゆるLOB(Line Of Business))にやさしいものになっている。たとえば、システム開発で当たり前に使われる「要件定義」は「作るもの・作らないもの検討」だし、「保守」は「システムの維持管理」だ。システム開発用語ではなく、誰でもわかる表現として配慮されている。実際に問い合わせを受けているお客さまからは、こうした業務改善のフローはわかりやすいと評価を受けているという。
気になる料金に関しても明示されている。たとえば、「業務改善の目的設定」は50万円~、「業務改善で使えるkintoneアプリの作成」は100万円~、「現場への浸透支援」は30万円~など。これを高いと感じるか、安いと感じるかは、人によって異なるが、「kintoneってアプリが簡単に作れる分だけ、外注しても安いと思われがちです。でも、アールスリーインスティテュートとしては提示する相場はこれです」と浅賀氏は語る。
10年近いkintone SIの経験を持ったアールスリーインスティテュートは、サイボウズのパートナー評価であるCyPN Reportでも、3年連続でインテグレーション部門における最高評価の三つ星を獲得している。「キミノマホロもkintoneの認定資格を取得したメンバーが対応するため、安心してご依頼いただけます」と浅賀氏は語る。
対象となるユーザーは、カスタマインを利用しているユーザーのみならず、kintoneによる業務改善を考える全ユーザー。業務改善の立案、開発の外注、内製化、定着など、あらゆるニーズに応えられるメニュー構成になっている。アールスリーが作ったアプリを引き継いで内製化に繋げたい場合であれば、「kintoneを使った実現イメージ検討」「業務改善で使えるkintoneアプリ作成」で作ったアプリを「自走化に向けた引き継ぎ」で引き継ぎし、「継続的な業務改善アシスト」でアールスリーのアドバイスを受けながら内製化を進めるメニューに進めばよい。学びたいだけであれば「Cloud University」という教育プログラムを利用することになる。利用の流れも、メニューも明確なので、とにかくユーザーは必要なサービスを選べばいいわけだ。
キミノマホロはサービスでありながら、アールスリーとして顧客の業務改善に長く、深くコミットしていきたいというメッセージでもある。浅賀氏は、「これからkintoneを使いたいという方はもちろん、使っているけどうまく使えていないという方のお悩みにも、対応できるはず。結局、業務改善って、われわれとお客さまのスタンスが合ってないとうまくいかないし、長く使ってもらえない。スタンスと合うお客さまと長くつながりたいと思っています」と語る。