Salesforce全国活用大会「SFUG CUP 2024」の優勝事例レポート
全会議で資料を廃止しSalesforce CRMに統一、三菱地所リアルの定着化施策の数々
2024年06月24日 08時00分更新
技術面の施策:商談成約率の予測スコアリングでデータドリブンな営業モデルへ
最後は技術面における課題、データをどう活かせるのかを営業に理解してもらうための施策だ。
同社のシステム構成は、Sales Cloudを中心に据え、取引先・商談・活動だけではなく、API連携で他の基幹システムの情報も集約している。データが重複しないよう法人データベースの「uSonar(ユーソナー)」を用いてクレンジングし、集約されたデータはGoogleのBigQueryを通してTableauで可視化できる仕組みだ。
このように、データを可視化できるようにはしたものの、営業からは「結果はわかったけど、で、どうしたらいいの」「これじゃ動けない」「管理側が見たいだけでしょ」といった意見が多発。現場の営業活動でどう活かせるかを改めて示すために、SFAを徹底的に見直した。
行き着いたのは、営業の日々の問いに仮説が立てられる機能、接触履歴の可視化、商談のスコアリング、商談の掘り起こしのダッシュボードといったものの実装だ。
仮説が立てられる機能は、例えば、商談の見極めから、次のステップが明確になっているか、キーマンを抑えられているか、競合先はどこなのかなど、商談状況を把握して、営業活動が停滞した時に道筋を示してくれるものだ。
接触履歴の可視化は、各取引先のページから、インサイドセールスからフィードセールス、GoogleアナリティクスのデータやAccount Engagementなど、すべての接触機会を確認できるようにしている。「キーとする顧客が何に関心を持っているのか、一目で把握できるようにした」(打田氏)。
商談のスコアリングや掘り起こしは、過去の商談の“変数”となる取引先や業種、情報ルート、手数料サイズ、物件といった情報を、すべて商談と紐づけることで実現した。これらの変数を統計解析して、商談データを揃えた段階で成約率のスコアを算出することができた。「AIとの違いは、成約率の根拠を示せるので、営業マンが納得して動けること」と打田氏。
セールスフォースの定着化に伴い過去最高益を達成
同社がセールスフォース製品を導入したのは2014年。CRMの利活用の高度化と合わせてビジネスも成長を続け、2022年までの成長率は6.1%を記録。創業50周年となる2022年度は過去最高益を達成した。
目標としていた定着化に関しても、現在は98%が毎日セールスフォース製品にログインし、ダッシュボードを見ることが習慣となった。営業への利用実態のアンケートでは、80%以上が商談のフェーズ管理や予実管理、セールフォース製品での会議が出来ていると回答しており、定着化は着実に進んでいるという。
定着化に伴ってデータも蓄積され、登録された名刺の数は現在93万枚に。取引先も、Salesforce導入時の約6万社から約15万社と倍増している。商談についても、年間約1万2000件が作成されているそうだ。
今後は、これらの蓄積したデータをAI活用にも活かしていく予定だ。ChatGPTの活用をメインに据え、汎用性の高い領域から専門性を伴う領域まで、AIをどう使っていくかを整理している。ChatGPTと蓄積された商談データを組み合わせて、注力すべき商談であったり、各商談における課題や対応策を提示してもらうといった取り組みにチャレンジしているという。
何より大きかったのは社長の強いメッセージ
6名の審査員と決勝大会の視聴者の投票の結果、三菱地所リアルエステートサービスの取り組みは見事優勝に輝いた。2024年6月11日と12日に開催された「Salesforce World Tour Tokyo 2024」で、その表彰が行われた。
打田氏は「商談の管理や会議の資料などを、すべてSalesforceでやっていこうと大きく舵を切ったのが今の結果につながった。営業とはかなりぶつかったが、たくさんコミュニケーションをとって、何よりも社長や幹部から『絶対やるんだ』という強いメッセージを出してもらえたことが大きかった」とコメントしている。