最大10年間セキュリティパッチが提供される「Ubuntu Pro for Devices」の組み込みPC販売、ライセンス再販
アイ・オー・データが「Ubuntu」のCanonicalと提携、新事業スタート
2024年06月20日 07時00分更新
アイ・オー・データ機器は2024年6月19日、英Canonical Group(カノニカル)とLinux OS「Ubuntu」のライセンス契約について合意したことを発表した。Canonicalが今年4月に発表したIoT/組み込み機器向けのライセンスプログラム「Ubuntu Pro for Devices」に基づき、Ubuntuプリインストールデバイスの提供や、同ライセンスのリセールビジネスを展開する。
Ubuntu Pro for Devicesは、組み込み機器へのインストール専用に用意されたUbuntuの商用ライセンスだ。通常の商用ライセンスである「Ubuntu Pro」と同じく、ソフトウェアパッケージのセキュリティアップデートが最大10年間提供されるほか、強化されたセキュリティ、リアルタイムカーネル、カーネルライブパッチ機能(カーネルの無停止アップデート)などが利用できる。
ただし、Ubuntu Proが年額制のサブスクリプションであるのに対して、Ubuntu Pro for Devicesは買い切り型(ワンタイムライセンス)となっており、組み込み製品の販売価格に含めることができる。
アイ・オー・データ 会長の細野昭雄氏によると、Canonicalとはこれまで1年ほど協議を重ねてきた。その中で、組み込み機器向けに特化したUbuntu Pro for Devicesという新メニューが用意されたという。今年4月には、Canonicalがこのライセンスをグローバルに展開していくことを発表している。
アイ・オー・データがLinuxを自社製品に組み込むのは、これが初めてではない。ただしこれまでは、同社の側で決めた用途や機能を実現するための“組み込みOS”としてLinuxを活用してきた。一方で、今回のUbuntu Pro for Devicesは、パートナー(ISVやSIer)やエンドユーザーがこのOS上で自由にアプリケーションを開発/インストールできる、汎用的なクライアントOS/サーバーOSという位置付けだ。
アイ・オー・データでは、このUbuntu Pro for Devicesを用いて「Ubuntuをプリイントールしたデバイスの開発や販売」「ライセンスのリセール(再販)」という2つのビジネスを展開していく。
前者のUbuntuデバイスについては、現時点では2つのベーシックなモデルのリリースを決定している。事前検証済みのハードウェアにプリインストールしたかたちで提供するため、ユーザー側での手間が省け、ユーザー層の拡大にも寄与すると考えているという。
さらに今後は、パートナーとの協業も含めて、NPUを搭載したエッジAI向けモデル、より小型でライトなモデル、ノートPCモデルなど、Ubuntuデバイスの選択肢を増やし、ビジネス拡大を図っていく方針だとしている。
後者のライセンスリセールは、Ubuntu組み込みデバイスやアプライアンスを開発、販売したいパートナー向けのビジネスとなる。もちろんここではアイ・オー・データ以外のメーカー製PCへの組み込みも可能だ。
アイ・オー・データでは、これら2つのビジネスモデルを通じた初年度の売上目標を8億円としている。
なお発表会ではゲストとして、医療機関のレセコン(レセプトコンピューター)ソフトウェアを開発する日本医師会ORCA管理機構(ORCAMO)、CanonicalのパートナーとしてUbuntuの日本語サポートサービスを提供するSRAも登壇した。