グローバル進出を目指す日本企業に、標準化された現地サービスを戦略価格で
Colt、LumenのEMEA事業買収につづき、東南アジア6か国へ事業拡大
2024年06月06日 07時00分更新
法人向けネットワークサービスを展開するColtテクノロジーサービス(Colt)は、2024年6月5日、東南アジアにおける事業拡大の説明会を開催した。2024年内に、東南アジア6か国でパートナーと共に包括的なサービスを提供開始する計画で、日本企業およびグローバル企業の同地域への進出を支援する。
英Coltテクノロジーサービスのアジア太平洋地域社長である水谷安孝氏は、「Lumen EMEAの買収による欧州・中東・アフリカ、Lumenとの戦略的パートナーシップによる北米に加え、包括的に東南アジアのサービスを提供することで、より日本企業がグローバル展開しやすくなる」と説明する。
早期のグローバル進出を目指す企業に、標準化された現地サービスを戦略価格で
グローバルでネットワークサービスを提供する中で、Coltが重視しているのが、各国のネットワークやマーケットに対する理解だ。それぞれの国の商習慣や言語などをすべて理解した上で、それをユーザー企業に届けることを目指しており、グローバル企業の新市場開拓を支援する。
今回、新たな企業と戦略的パートナーシップを締結し、同企業を通じて、フィリピン、台湾、ベトナム、タイ、マレーシアおよびインドネシアにおいて包括的なサービスを提供していくとした。
パートナーシップを結んだ企業は明かされなかったが、非独占的な締結であり、今後複数の企業との連携も視野に入れているという。サービス提供のプロセスにおいては、パートナー企業による対応が完全にColtのサポート体制に組み込まれ、「パートナー企業がColtの一部として機能する」と水谷氏。ユーザー企業との契約や窓口、サポートなどはColtに集約される。
サービスの特徴は3つある。ひとつ目は「包括的なグローバル対応」だ。Coltのネットワークとパートナー企業のネットワークを統合し、複数の地域をまたぎ、各国の文化や商習慣などに最適化されたサービスが展開される。
2つ目は「サービスレベルの標準化」だ。通常、国ごとに事業者のサービスレベルは異なるが、Coltが可能な限り標準化し、グローバルネットワークの管理をシンプルにする。
3つ目は「戦略的な価格設定」だ。「例えば1社で、ひとつの国へ展開しようとすると、購入するネットワークの数や帯域の幅も狭くなってしまい、価格競争力も低くなる」と水谷氏。Coltが、ニーズをまとめて、“規模の経済”を活かして価格を下げ、ユーザー企業に還元していく。
グローバル展開する日本企業が国際的なネットワークを構築する場合、ときには100社以上とやりとりしなければならないケースもあるという。「それぞれの国で、異なる言語を用いてネットワークを調達し、グローバル展開をしていくのは、スピード面でも価格面でも、実際の作業数でも負担がかかってしまう」と水谷氏。そこをColtが統合することで、契約や問い合わせ窓口がひとつになり、サービスレベルも標準化され、コストも抑えられる。
東南アジアを選択した理由とは?
Coltでは、東南アジアへの事業拡大に際して、実際にどれくらいの市場が見込まれるかをAIで分析している。本社機能が欧州、米国、日本にある企業、既にグローバル展開する企業という4つのカテゴリに分類し、その上でColtと同様にシンガポール、香港をアジア拠点とする企業を絞り込んだ。
該当する3750社が利用するColtのネットワーク費用は、約22億ユーロ(約4000億円)であり、これを東南アジアで獲得可能なマーケット規模と位置付ける。
さらにColtは、これらの企業がどのようなサービスに興味を持っているかも分析している。同社では、グローバルでもこうした需要分析やマクロ経済指標、高帯域需要、収益性、ビジネス需要などの観点でAI分析を進めており、その結果「東南アジアはこれから確実に伸びていく拠点」と確信、今回の事業拡大の決定に至ったという。
グロバール・デジタル・インフラ企業へ着々と
東南アジアの事業拡大は、グローバル戦略の一環であり、かつてから進める「通信事業者からグロバール・デジタル・インフラ企業への変革」のひとつとなる。
2023年には米Lumen TechnologiesのEMEA(欧州/中東/アフリカ)事業を買収。LumenがEMEA主要都市で保有していたネットワーク資産や海底ケーブルが、Coltのネットワークに加わった。また、買収の一環で、Lumenとの戦略的パートナーシップを締結、世界中から北米での接続が可能になった。
そして、Lumen EMEAの買収完了にあわせて、水谷氏を日本およびアジアの事業展開を統括するアジア太平洋地域社長に据え、今回の事業拡大に乗り出した。水谷氏は、2007年にColtの前身であるKVHに入社。KVH買収後、アジア全域のマーケティング統括を経て、英本社のCMO(最高マーケティング責任者)を務めていた。
英ColtテクノロジーサービスのCOO(最高事業責任者)であるアネット・マーフィー(Annette Murphy)氏は、グローバルに事業展開する企業に対して、 「Coltは、現地の顧客と同じレベルのサービス、同じ高品質のサービスを提供する」と強調している。