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最新パーツ性能チェック 第440回

インテルCPUを安全に使える設定?「Intel Baseline Profile」のパフォーマンスを検証【暫定版】

2024年05月15日 17時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集● ジサトラユージ/ASCII

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クロックや温度推移を観察する

 では、このHandbrakeのエンコード時にどの程度の電力が消費されたかを「Powenetics v2」を利用して計測してみよう。計測タイミングはエンコード開始直後から終了直後までとし、高負荷時の平均値/99パーセンタイル値/最大値を求めた。さらに、アイドル状態で3分間放置した際の平均値を“アイドル時”としている。システム全体の消費電力のほか、CPUのみ(EPS12Vの電力等から算出)の消費電力も集計した。

アイドル時およびエンコード時におけるシステム全体の消費電力

アイドル時およびエンコード時におけるCPUの消費電力

 まず、Core i9-14900KとCore i7-14700Kに関しては、MTP無制限運用時よりもIBPを適用することにより消費電力が大幅に抑制された。その一方で、Intel Baseline Profileを適用したCore i7-14700Kの消費電力が同じくIntel Baseline Profileを適用したCore i9-14900Kの消費電力を上回る、さらにはCore i5-14600KではIntel Baseline Profileを適用すると消費電力が大きくなるというデータも観測できた。

 では、このエンコード処理中にCPUのクロックやCPUパッケージ温度、CPU Package Powerがどう推移していくかも見ていこう。データの取得にはHWiNFO Proを利用している。

 まずはCPUクロックから。Pコア/Eコアすべての平均値のみをプロットしている。

Core i9-14900K:エンコード処理中のCPUクロック

Core i7-14700K:エンコード処理中のCPUクロック

Core i5-14600K:エンコード処理中のCPUクロック

 まずクロック推移だが、Core i7-14700KはCore i9-14900Kよりもやや高いクロックだが、特にIntel Baseline Profile適用時のクロックは明らかにCore i9-14900Kよりも高い。

 Intel Baseline Profileを適用する・しないに関係なくPL1は253Wで頭打ちになったが故に、コア数が少なく電力的な余裕が大きいCore i7-14700Kのほうが高クロックになったと推察される。そしてCore i5-14600KはMTP無制限時ではクロックはほとんど変動しない安定したクロック推移となっている一方、Intel Baseline Profileを適用すると微妙に上下する。

 これは無制限時ではPL1/ PL2ともに4095W設定であるのに対し、Intel Baseline Profileを適用すると双方が181Wに大幅に下がるためだ。

 そして、どのCPUにおいてもIntel Baseline ProfileにPL1=125W/PL2=188W(181W)を適用するとさらにクロックが下がる。この条件下ではCINEBENCH 2024のスコアーが大幅に低下したが、クロックの下がり具合を考えればこれも当然だ。処理開始直後の安定期からやや時間が経過するとさらにもう1段クロックが下がるが、このクロック遷移のタイミングはTauのタイムアウト(Intel Base Profile適用後は56秒)のタイミングとほぼ一致している。

Core i9-14900K:エンコード処理中のCPUパッケージ温度

Core i7-14700K:エンコード処理中のCPUパッケージ温度

Core i5-14600K:エンコード処理中のCPUパッケージ温度

 次にCPUパッケージ温度だが、コア数の多いCore i9-14900KはIntel Baseline Profileを適用することで劇的な温度低下が観測できた。MTP無制限運用下では瞬く間に100℃まで到達していたのが80℃台に踏みとどまるようになることで、高温かつ高クロック状態に長時間CPUが曝露されることが回避できている。

 その一方で、Core i7-14700Kに関してはEコアが少ない分の余裕が高クロックに転じたためか、Intel Baseline Profile適用時に温度低下は観測できたが、こちらはそれほど低くはならなかった。

 さらにCore i5-14600Kに至っては、Intel Baseline Profileを適用することでPL1/PL2が絞られるにも関わらずCPUパッケージ温度が下がるどころか、むしろ無制限運用時のほうが微妙に低いという直感に反する結果が出ている。

 Core i5-14600KにIntel Baseline Profileを適用するとCINEBENCH 2024のスコアーやHandbrakeのフレームレートは下がるのに消費電力は微増しているのは、Intel Baseline Profileを適用することでCore i5-14600Kの最適なパラメーターが何かしら失われることを示唆している。

 インテルがどのような緩和策を最終的に提示するかは不明だが、このCore i5-14600Kの奇妙な振る舞いは、その緩和策に関わる調整がそう簡単にはいかないことを暗示しているといってよい。

Core i9-14900K:エンコード処理中のCPU Package Power

Core i7-14700K:エンコード処理中のCPU Package Power

Core i5-14600K:エンコード処理中のCPU Package Power

 最後にCPU Package Powerだが、これはクロックやCPUパッケージ温度推移のデータと似た感じとなる。最も劇的な効果が見られたのはCore i9-14900Kであり、計測期間中の平均値で見るとMTP無制限時274Wに対しIntel Baseline Profile適用時は211Wまで減少させた。しかし下位モデルに行くほど差は縮まり、Core i5-14600Kではほとんど変化がない。

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