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SAPジャパンが「SAP Business AI」の最新機能とロードマップを説明

AIデジタルアシスタント「Joule」がSAPのUIを変える

2024年05月01日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 ハイパースケーラー、SaaSベンダーなどが、それぞれのアプローチで生成AI戦略を進めている。ERP大手のSAPが掲げるAI戦略は「SAP Business AI」。「関連性(Relevant)」「信頼性(Reliable)」「責任を負う(Responsible)」という、ビジネス活用に適した“3R”の特徴をもつAIを提供する。2024年4月23日、SAPジャパンがセミナーを開催し、SAP Business AIや、自然言語を用いた生成AIコパイロット「Joule(ジュール)」の最新動向とロードマップを紹介した。

SAP Business AIの全体像

SAPジャパン ビジネステクノロジープラットフォーム事業部 事業部長の岩渕 聖氏、同社 カスタマーアドバイザリ統括本部 SAP Business AI Leadの本名 進氏

着実に拡大するSAP Business AIとJouleの対応

 SAPがSAP Business AIビジョンを打ち出したのは、2023年5月に開催した年次イベント「SAP Sapphire」でのことだった。発表当時は、Microsoftとの提携を通じてOpenAIの技術のみを採用していたが、その後提携を拡大し、現在はAnthropic、Aleph Alpha、Cohere、そのほかのハイパースケーラーなども連携パートナーとしている。

 さらに2023年9月には、生成AIを用いたデジタルアシスタントのJouleを発表。11月には、PaaSである「SAP Business Technology Platform(SAP BTP)」上に「AI Foundation」を構築した。AI Foundationによって、顧客企業は自社のERPなどに蓄積されたデータを取り込みながら、独自のAIエンジンを構築できるようになった。もちろんSAP自身でも、提供する各種SaaSにAIを組み込んで利用している。

 SAPジャパンの岩渕 聖氏によると、SAP Business AIのシナリオ数は2024年4月現在で80個以上、またJouleのリリース以降(2023年第4四半期以降)にリリースされた生成AIのシナリオ数は14個に達したという。

SAP Business AIの現状

 さらに最新の動向として、NVIDIAとの提携、インタフェース側のJoule対応の拡張、技術基盤のアップデートが紹介された。

 NVIDIAとの提携は3月に発表したもので、2社が共同開発したRAG(拡張検索生成)機能のJouleでの提供、機械学習ワークロード処理の高速化、「SAP Datasphere」を介した連合型機械学習(FedML)のアクセスの高速化など、4つの領域で機能が強化される。

 Jouleについては、HRクラウド「SAP SuccessFactors」、SAPソリューションの入り口となる「SAP Start」、ローコード/ノーコード開発基盤の「SAP Build Code」で使えるようになったほか、主力製品であるの「SAP S/4 HANA Cloud パブリックエディション」においてもEarly Adopter Care(EAC)プログラムとして提供が始まった。

 「半年でここまで(Joule対応が)広がった。今後もJoule対応するアプリケーションが増える」(岩渕氏)

 またSAP BTPにおけるAI関連新機能として、岩渕氏は3つを紹介した。1つ目は、BIの「SAP Analytics Cloud」に生成AIを組み込むことにより、自然言語を使って求めるデータを抽出できる「Just Ask」機能だ。

 たとえば、Analytics Cloudの検索ボックスに「XXXX年のY地域におけるZ製品の売り上げを知りたい」などと自然言語で入力すると、Jouleがその指示を理解して該当するデータを探してくれる。将来的にはS/4 HANA内のモデルにも直接アクセスできるようになる予定だという。

 2つ目は「SAP HANA Cloud Vector Engine」だ。2023年11月の「SAP TechEd」で発表された機能で、顧客が自社のデータをSAP HANAに取り込んでベクトル化ができる。汎用LLMを活用しながら、汎用LLMが学習していない自社のデータを活用することができ、生成AIの回答の質や信頼度の向上につながる。

 3つ目は「Build Code」でのAI活用だ。先述のJouleに加えて、裏のコード生成でもAIを活用するものとなり、開発したい要件を伝えるとSAPのJavaScript拡張フレームワーク「CAP」のコードを自動で生成する。

Jouleのアーキテクチャ概要。強みは(2)の「Jouleコンテキスト」だという。岩渕氏は「SAPしか持っていない業務のコンテキスト、データやシステムの中身の情報をJouleと連携させることで、業務処理やエラーチェックなどにも発展できるのではないか」と述べ、「SAPが持つアプリケーションのノウハウがJouleを動かしている」と強調した

 今後のJoule、SAP Business AIのロードマップにも触れた。まずJouleは、2024年第2四半期(4~6月期)以降、さらに多くの製品に対応していく計画だ。

 一方でSAP Business AIでは、組み込みAIの機能としてさらに49のシナリオが年内にリリースされる予定だという。ロードマップを見ると、「SAP Concur」「SAP Ariba」などの調達、サプライチェーン、ファイナンスなど多岐にわたる。またIT/開発側でも、「SAP Datasphere」で、ナレッジグラフとしてSAP Datasphereに取り込んだデータからオントロジー(データ間の関係を示す)を自動生成する機能、業務の自動化として、Jouleに自動化の要件などを入力するとワークフローやRPAの定義済みコンテンツから適切なものを探す「Joule for SAP Build Process Automation」などが予定されている。Analytics Cloudでは、先述したJust Askとは別にJoule for SAP Analytics Cloudを開発しており、検索に加えてレポートの自動作成まで機能を拡大していく予定だという。

Jouleサポートロードマップと、SAP Business AIのロードマップ

業績を見てネクストアクションの提案も行うJouleのライブデモ

 説明会では、Jouleのデモも披露された。その1つが「まだ業務に慣れていないプロジェクト管理の担当者をJouleが支援する」というデモだ。

 ユーザーがプロジェクトのビジネスダッシュボードからJouleにアクセスし、「レポートにある情報を要約して」と指示すると、Jouleが目標の利益率に到達していないプロジェクトなどをサマリとして回答する。概要はわかったもののどうすればよいのかわからない担当者が、「次のアクションを提案して」というボタンをクリックすると、次のアクションプランをいくつか提案してくれる、という流れだ。利益率の低い順に3つ、プロジェクトのレポートを生成させて、類似のプロジェクトとの比較するなどを行って、最終的に状況のサマリーを作成して同僚に共有する、という手順を見せた。

ライブデモの画面。右端のウィンドウでJouleに指示を与え、質問をすることで、数字の意味やネクストアクションを理解することができる

 デモを行ったSAPジャパンの本名進氏は、「SAPのUIは古くて使いにくいというのは有名な話だが」と苦笑しながらも、Jouleによって「SAPのUIが『マウスクリック』から『自然言語の問い合わせと指示』に変わる」と語る。現在、SAPのUIはWebベースの「Fiori」で統一されており、バックエンドシステムが異なるかたちになっているが、Jouleが組み込まれることで「システムを横断しても問い合わせのコンテキストを維持してくれる」ため、さらにシステムを意識することがなくなると説明した。

 SAPジャパンでは今後、パートナー向け、顧客向けの展開を進めていく。特にパートナー向けの取り組みとしては、「SAPが提供する製品に組み込んだAIを導入する部分にフォーカス」(本名氏)しており、SAPではユースケース作りやイベントなどのかたちで支援していく。支援策のひとつとして、毎年開催している「SAP BTP Hackathon」において、今年は新たに「Business AI賞」を用意した。このハッカソンには、43社のパートナー企業から合計320人以上が参加する予定だという。

 また、AIはパートナーにとっても新しい領域であるため、パートナー向けのラーニングを提供する機会に注力していくことも明らかにした。

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