Amazon Musicは4月16日付けのブログで、AIプレイリスト作成機能「Maestro」について言及した。生成AIの仕組みを利用し、プロンプト(指示文)からプレイリストを作成する機能で、Amazonらしく入力には音声入力が可能のようだ。
この機能は、SpotifyのAIプレイリスト機能に似ている。プロンプトを用いた指示ということで、曖昧で感覚的な単語を使用できるためだ。さらにMaestroでは、絵文字まで使用できるという。
具体的なプロンプトの例としては「Myspace era hip-hop」(Myspace時代のヒップホップ)、「Let's test out the new subwoofers」(最近買ったサブウーファーを試そう)、「Make my baby a genius」(我が子を天才にして)、「Music my grandparents made out to」(祖父母が若かりし時代の音楽)、「I tracked my friends and they’re all hanging out without me」(友達をチェックしたらおれ抜きでぶらぶらしてた)などだ。「Myspace時代のヒップホップ」や「最近買ったサブウーファーを試そう」というのはかなり実用的な感じだが、曖昧でくだけた調子のプロンプトも入力できる。
「祖父母が若かりし時代の音楽」という日本語は実はかなり意訳をしていて、文中の”made out”は米国スラングでカップルがいちゃつくという意味だ。つまり直訳では「祖父母がよろしくやっていた頃の音楽」となる。こうしてスラングや口語表現が使えるというのは言語処理が優れていることの証ともなるだろう。
MaestroはAmazon Musicアプリを通じてのみ利用が可能で、ベータ版扱いの限定的な公開だ。米国の少数のユーザーから順次拡大していくという方式を取っている。もし使用可能になれば、ホーム画面にMaestroが現れたり、あるいはプラス記号をタップして新しいプレイリストを作成する際に利用できたりするようになるという。
SpotifyのAIプレイリスト機能が利用できるのは、Premiumユーザーにのみとなるが、Amazon MusicのMaestroはサブスクリクションのレベルに関わらず、すべてのAmazon Musicユーザーに提供される。ただしAmazon Music Unlimitedのユーザーは、作成したプレイリストをすぐに聴いて保存できるが、無課金のプランで聴いているユーザーは保存する前に30秒音楽を聴く必要があるのが制限だ。
Amazonは、Maestroの背景技術は新しいもので、常に正しいとは限らないと注意書きをしている。また、攻撃的な言葉や不適切なプロンプトをブロックする機能も実装しているとする。この点はSpotifyのAIプレイリスト機能と同じだ。こうした但し書きは生成AIを応用した機能では常に見ることになるだろう。
例えば絵文字の使用や「子供を天才にして」のような曖昧なプロンプトは解釈がいく通りもできるので正解がない。また、先にあげた「友達をチェックしたらおれ抜きでぶらぶらしてた」というプロンプトも意訳すると「無視されていたオレのための曲を聞かせて」のような意味だろう。これについても悲しいような曲を集めるのか、励ますような曲を集めるのかについて正解はない。前にも書いたように、生成AIは誤回答をする幻覚の問題があるので、実のところ正解のない曖昧な使い方のほうが生成AIの現状に向いているとも言えるだろう。
逆に「2010年代のトップ10ポップスを教えて」というプロンプトでは選択結果に正解があるので幻覚が出やすくなる。うがった見方をすればそういうありそうな例はあえて挙げていないとも言えるかもしれない。
このSpotifyやAmazonの提供する「感覚的なAIプレイリスト」という機能は、そういう意味では時流に乗ったAIを応用するにはリスクが少なく搭載できる機能と言えるのかもしれない。
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