プロセスを微細化してもSRAM容量が増えない
Gaudi 3がインテルによる買収直後くらいに開発をスタートしたと考えるもう1つの理由は、オンダイSRAM容量が変わらないことである。これまで連載で何度か説明したが、7nmあたりを境にプロセスを微細化してもSRAM容量が増えなくなりつつある。
理由はSRAM密度はトランジスタの寸法よりも配線の寸法に依存しつつある(以前はトランジスタの寸法が支配的だったが、トランジスタが小型化したことで今は配線寸法が支配的になっている)ことで、5nmだろうが7nmだろうが同一容量のSRAMのエリアサイズはほとんど変わらず、一方5nmにすることでエリアサイズあたりのコストは1.5倍くらいになっている。要するに、大容量のSRAMを搭載するのはコスト的に割に合わなくなっているということだ。
回避策はあって、SRAMは7~6nmあたりで製造し、これを2Dあるいは3D的にチップレットで接続するというものだ。インテルで言えばPonte Vecchioがこれに相当する。Ponte Vecchioは、コンピュートタイルはTSMC N5で製造されるが、Rambo CacheはIntel 7での製造で、大容量キャッシュを相対的に低価格で利用可能にしている。
Raja Koduri氏が2017年11月にインテルに入社、そこからPonte Vecchioの開発をスタートしたことを考えると、Gaudi 3がもしインテルによる買収後に企画がスタートしたとすれば、当然2次キャッシュはチップレットの形を想定すると思われる。それをしていないあたり、企画そのものはやはりインテルの買収前だったのだろう。
Gaudi 3は3種類の構成で提供
性能の話をする前に、システム構成について補足する。Gaudi 3はOAMモジュールとそれを8枚まとめたシステム、それとPCIeのアドオンカードの3種類の構成で提供される。
このHLB-325の内部結線がその下の画像だ。まずイーサネットであるが、各OAMから24本の200GbEが出てくる。これを3本づつ束ね、7対はHLB-325上でのOAM同士の相互接続に利用、残り1対を外部の相互接続に使う形になっている。
ちなみにPCIeカードタイプのHL-338に関しては、21本の200G PHYを搭載しており、うち18本を6本づつ束ねてHL-338同士の相互接続に利用。残りの6本を外部接続に回すという形になる。
このイーサネットであるが、今回インテルはUEC(Ultra Ethernet Consortium)への対応を改めて表明した。UECは昨年7月に設立された業界団体で、そもそも創設メンバーにインテルも入っているから対応しない策はないのだが、UECは既存のイーサネットの物理層の上に独自プロトコルを実装し、クラスター・インターコネクトを構築することを目的としている。
ほかにもいろいろあるが、当初から目的の1つにAI/ML optimized APIを提供することが掲げられているので、とりあえずイーサネットベースのAI/MLアクセラレーター用の相互接続に使えることは間違いない。
ただもちろんまだ団体ができただけでスペックも出ていないわけだが、インテルは「将来のAI Networking」でUECを利用することを表明した。ただ、少なくともGelsinger CEOの説明からすると、UECが実装されるのはGaudi 3の次以降ということになりそうで、Gaudi 3は独自プロトコルのまま終わりそうである。
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