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失われた30年から脱却するために――日本の起業家に熱い期待

「MOMENT 2023」レポート

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 2023年10月10日と11日、東京でベンチャー投資家、スタートアップが集うイベント「MOMENT 2023」が開催された。シリコンバレーと日本の架け橋となることを目指して2016年に初回が開催、今回が2回目となる。ここではシリコンバレーのベンチャーキャピタル(VC)であるWiL の伊佐山元氏、Andreessen HorowitzのBen Horowitz氏が登壇した初日のオープニングの模様をレポートする。

世界に向かって飛び出してほしい

 7年ぶり2回目の開催となったMOMENTは経済産業大臣(当時)の西村康稔氏のスピーチで幕を開けた。

 経済産業省は起業家育成・海外派遣プログラム「J-StarX」、社会課題解決などのインパクトスタートアップ支援プログラム「J-Startup Impact」などのベンチャー支援を進めている。この日、西村氏は、1)変化の兆し、2)勇気を持つ、3)世界へはばだく、の3つのメッセージを伝えた。

西村 康稔氏

 1)では、いくつかの変化を指摘した。その1つが、終身雇用一辺倒だった考え方が、新卒で大企業に入社する人の3割が3年以内に辞めて転職するなど、キャリアへの意識が変わりつつあるというトレンドだ。もちろん、起業家という選択肢を選ぶ人もいる。また、大企業も変化しつつあるというトレンドも挙げた。DXやGXへの投資が強まっており、スタートアップとの連携も増えているという。

 西村氏は、日本の良さとして治安、衛生面、生活水準などが高く、おもてなしの文化があり、勤勉性や伝統的な文化を重んじる姿勢を挙げ、安定性のある中で躍動感がある「躍動感のある安定成熟国という位置付けになる」と述べた。

 2)は、「既存の価値観、同調圧力的なものに流されず、起業する、挑戦する」だ。「最大限に自分の能力を信じて挑戦を、アニマルスピリッツを発揮していただきたい」と述べると同時に、「失敗してもそれを許容できる世界にしていかなければならない」とも語った。

 3)は、スポーツや芸術の分野において海外で活躍する人が増えているなど世界と互角に戦う人が出てきていることに触れ、「スタートアップの皆さんには、国内でのスモールサクセスに満足することなく、世界に向かって飛び出してほしい。若い時から海外に行き、他流試合を」と呼びかけた。そして「J-StarX」で2023年度は1000人近くを世界各地に送る計画があるなど、政府の支援にも触れた。

 最後に西村氏は、「日本にはAI、ロボット、5G、ライフサイエンス、核融合など素晴らしい技術とそれを支える先端半導体関連の技術がある。世界をリードしていく技術、イノベーションがある」と述べ、政府としてこうした取り組みを応援しつつセーフティネットを設けながら、「イノベイティブでインクルーシブな経済、社会にしていきたい」と結んだ。

大きな変化の中で傍観者で終わるか、変化の当事者になるか

 続いてのオープニングスピーチに登壇したのは、WiL共同創業者兼ゼネラルパートナーの伊佐山元氏だ。

伊佐山 元氏

 伊佐山氏はここ数年の社会・経済環境を振り返り、「大変な時こそ、新しい技術が生まれる」と述べる。2020年のコロナ危機、2021年のメンタルヘルスや大退職時代などの社会危機、2022年のロシア・ウクライナ戦争(ウクライナ危機)、2023年のシリコンバレー銀行破綻が引き起こしたインフレ危機など、毎年のように危機が襲ってくるが、2020年はDX、2021年はデジタルヘルステック、2022年はエネルギ・アグリテック、2023年はフィンテックにつながった。

 2023年は、ChatGPTがもたらす生成AIブームだ。「この技術がすごいのは、たった2カ月で1億人のユーザーを獲得したこと」と伊佐山氏。「今の技術はあっという間に拡散して世界の人に使われる、世界中の人の人生を変える可能性もある」と続けた。

 その一方で、日本は「失われた30年」と言われるように、世界経済における存在感が薄くなっている。個人の給料は上がらず、インフレもない。そのような中、このカンファレンスで一緒に考えたいこととして、「これだけ多くの危機が襲っており、社会が変わっている。特に、本質的にライフスタイルを変えるかもしれないAIという技術が普及している中で、どうするか」と伊佐山氏。

 そして、「大きな変化がきている中で、傍観者で終わるのか、変化の当事者になるのか。当事者として、変化を促したり、スタートアップを起こしたりして、日本の歪んだところを直そうという前向きな気持ちで危機を生かす、そんなタイミングにあるのではないか」と述べた。

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