7社がそれぞれのプロジェクトとBacklog活用について語る
BacklogコミュニティJBUGで聞いたプロジェクト管理のつらみ、学び、ありがたみ
プロジェクト管理ツールBacklogのユーザーコミュニティであるJBUG(ジェイバグ:Japan Backlog User Group)東京は、第22回目となる勉強会を開催した。自社プロジェクト管理、顧客のGit環境の管理、グループ会社連携など、全部で7社がさまざまなBacklogの活用について説明。質疑応答も活発に行なわれ、充実したイベントとなった。
2/3が初参加というBacklogの活用イベント
JBUGは、ヌーラボのプロジェクト管理ツールBacklogのユーザーコミュニティ。2017年から各地で110回以上の勉強会を開催しており、Connpassの登録者も2700名以上に及んでいる。「プロジェクトを加速させるBacklog活用術」というタイトルを冠した今回のJBUG勉強会の会場は100人規模のイベントスペースを持つクラスメソッドオフィス。冒頭登壇したのはJBUG東京のJourneymanこと大泉建木さんとヌーラボの新コミュニティマネージャーのマコリーヌこと藤本眞子さんになる。
藤本さんは約70名の参加者のうち、2/3が初めての参加になることをアピール。Backlogの利用も2年以上が半分を占めており、使い始めたは良いが、浸透や定着に悩みを感じている様がうかがえた。藤本さんはJBUGの参加ををオススメしたい人として、「プロジェクト・タスク管理に悩んでいる方」「チームコミュニケーションを活性化させたい方」「他社の事例からBacklogの活用方法を学びたい方」などを挙げ、さっそく本編に進んだ。
今回は5分の登壇+3分の質疑応答からなるLTが5本、10分の登壇+5分の質疑応答からなるセッションが2本というプログラム。冒頭、データエンジニアリングを手がけるprimeNumber 中村裕太さんのLTは、カスタマーサクセスにBacklogを活用している事例を披露。業務フロー改善やデータ分析などを扱う「CS Ops」、外部公開コンテンツ作成や社内向けナレッジの集約などを扱う「CS Enablement」という2つのプロジェクトを設けてボードを運用したところ、改善タスクや遅延状況が見える化し、生産性が向上したという。
続いてクラウドインテグレーターのBeeXの半田大樹さんは、顧客のGitHubをBacklog Gitに移行した話を披露した。同社は、顧客のGit Hubを運用することが多かったが、こうするとソースコードが顧客から見えないため、ダウンロードしたモノを送付するという手順をとっていた。そこでGit HubをBacklog Gitに移行し、顧客からソースコードを見ながら、課題やタスクまで管理できるようにした。プライベートリポジトリなのでセキュアで、Backlogユーザーだと特に導入障壁は低いという。
Good Project Awardへの応募は「怒りと復讐」だった
続いて10分のセッションでは、昨年ヌーラボが主催した「Good Project Award 2023」で優勝したパシフィコ横浜の松原正和さんが登壇。華やかな凱旋公演かと思いきや、「登壇ピッチで表に出なかった話とその後の話」と題して、登壇を決意するまでのドロドロした舞台裏を語った。「愚痴というか、苦労話になってしまったけど、聞いてください」(松原さん)。
「ITを活用したお困りごと解決」と「無駄な仕事を終わらせること」が好きという松原さんは、イベント施設を運営するパシフィコ横浜に6年前に入社。最近では1/2500サイズのパシフィコ横浜のガチャも作ったという。Webサイトの運用コストを劇的に削減し、「コロナ禍において会社の公式サイトを大規模リニューアルした話」のGood Project Awardのピッチバトルでめでたく優勝した。
しかし、Good Project Awardに応募した背景は、「怒りと復讐」というドス黒い感情が渦巻いてからだという。松原氏の社会人人生の中でBacklogでタスクがきれいに回っていたのは過去の話で、今の会社ではツールによるタスク管理はまったくなじまず、チーム外からは「Backlogを使うのは二度手間」「いちいち共有する意味がわからない」「自分一人でできるなら、自分だけで仕事を終わらせればいい」「タスク管理ツール?うーん」といった声に囲まれていたという。
Backlogを使ってくれなければ、当然松原さんへの依頼はバラバラの手段でやってくる。SlackのDM、グループウェアのメッセージ依頼ならともかく、口頭や手書きメモなどもあった。こうしてタスク管理の工数が半端ない状態になった段階で、松原さんが考えたのは「圧倒的な結果をたたきつけて、現場が使わざるを得ない状況にしたるわ!」ということ。これがGood Project Award 2023への挑戦。「オレ、このアワードで最優秀賞をとったらみんなに『サイト依頼案件はすべてBacklogで』って言うんだ」という野望を秘め、会社にもダマで登壇したという。
結果オーライで無事Good Project Awardで優勝すると、松原さんの名前とともにパシフィコ横浜の名前もメディアに出ることになった。こうして外堀を埋めた松原さんは、満を持してWebサイトへの掲載や変更依頼をすべてBacklogに統一することを社内に通知した。もちろんドス黒い感情は表面に出さず、説明は懇切丁寧・低姿勢を旨とした。とにかく「タスクを書き出す」「誰がやるのかを決める」「期限日を決める」だけやってもらえるよう、お願いしたところ、Backlogを経由した依頼が増えたとのこと。めでたし、めでたしということで、会場からも拍手が起こる。
「今のところ依頼を投げるツールなんですが、これをきっかけにタスク管理も拡がっている」(松原さん)とのことで少しずつ味方も増えてきたので、Good Project Awardの特典で作ってもらったイケてるビデオを社内でも公開する予定。最後、松原さんは「今までの会社で一番根付かせるのに時間がかかりましたが、下積みは必要。強制的な切り替えも重要だが、メリットを明確にしましょう。可視化できますよ、タスクを飛びこぼしませんというくらい言ってよい」とまとめた。
自社プロジェクト管理、ベトナムでの活用、グループ会社連携まで事例満載
後半はリスティング広告を中心に運用型広告を手がけるキーワードマーケティングの川手 遼一さんのLTからスタートした。オウンドメディア「キーマケLab」をほぼ一人立ち上げることになった川手さんは、リソース不足、広報との連携不足、監督者が現状把握できないという3つの問題をBacklogで解決。進捗や自分の状態を外部把握できるようになったことで、ミーティングや確認が減り、結果としてコンテンツ制作に集中できるようになったという。
Web制作や出版サービス、自社ゲーム開発などを手がけるビーワークスの櫻井 美貴さんは、自社プロジェクトだからこそ行き詰まってしまったWebサイトのリニューアルプロジェクトをBacklogで管理した事例を披露。進行ブロック単位で親課題、ページやタスク単位で子課題を立て、期限日を切ってガントチャートで管理し、定例会で確認するというオーソドックスな使い方でオープンまで間に合わせた。自社プロジェクトを担当したことで、日頃クライアントワークで提供している「当たり前」の価値、クライアント側の大変さもわかったという。
ヌーラボの渡邉祐一さんは、オフショア開発でホットなベトナムでのBacklogの活用法を披露した。品質の高いソフトウェア開発を求めて2000年頃からベトナムに進出した日本企業は、現地企業と長期的な関係を築いており、プロジェクト管理にBacklogが用いられていることも多いという。いくつかの会社の事例が披露されたが、やはりソフトウェア開発ということで、Git機能が重宝されており、CI/CD機能は共通のニーズだった。異なるカルチャーや開発プロセスをBacklogがサポートすることで、ベトナムと日本の架け橋となれると渡邉さんは指摘した。
最後のセッションは会場を提供するクラスメソッドの深澤 豪さん。同社のBacklog利用は2012年にまでさかのぼるので、かなり昔から。それ以前はExcelのやりとりで進捗を確認していたので、最新版が付くような長いファイル名のExcelファイルからは解放されることになったという。
現在は顧客との課題のやりとり、ソフトウェア開発のプロジェクトのタスク管理、ドキュメント管理、法務など社内業務のやりとり、イベントのタスク管理など幅広い用途でクラスメソッドのバックオフィスを支えているとのこと。また、人材育成のプロパゲート、SaaS販売を行なうネクストモード、小売・マーケティングのプリズマティクス、バックオフィスのアノテーション、海外現地法人などクラスメソッドグループの各社との連携でも、Backlogが用いられているという。
JBUGは初めての参加だったが、2/3が初参加なのにも関わらず、質疑応答が非常に活発に行なわれている点に驚かされた。正直LTはさすがに時間が短いと思ったが、質疑応答時間が確保されているので、参加者のかなり満足度が高かったに違いない。また、テクノロジーやBacklogの機能的な話よりも、プロジェクト管理の大変さや学びに関わるトピックがメインだったので、非エンジニア職やプロジェクトに関わる現場の担当者にとってはかなり参加の敷居が低いコミュニティだと思った。イベントの資料が見たい方は、興味がある方は、ConnpassのJBUGページを参照するとよいだろう。
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