米国本社直轄で、日本市場の展開を強化
3つめの転換点は、日本への投資が、より積極化するという点だ。
それを裏づけるように日本法人は米国本社の直轄組織となり、ポジションを高めることになった。
PTCのバルアCEOは、「日本市場は、PTCにとって重要な市場であり、これからも投資を続けていくことになる」と宣言する。
日本での投資を積極化する背景には、100年に1度の変革期を迎えている自動車産業をはじめ、日本の基幹産業である製造業におけるデジタル化が急速に進展しており、そこにPTCが貢献できると考えているからだ。
バルアCEOは、「日本の企業は、DXの取り組みを進めざるを得ない状況にある。とくに、自動車産業では、EVの分野において、米国や中国に先行されてえり、切迫感がある。また、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)に対する関心が高まっており、経営判断や開発、製造におけるスピードへの危機感もある。PTCが支援できる部分が大きい」と語る。
PTCジャパンの神谷社長も、「PTC社内では、日本市場の重要性が改めて認識され、日本の市場への投資を積極化する姿勢が示されている」としながら、「製造業は日本の経済をリードする業種であるが、それは見方を変えれば、労働力不足などの日本が抱える課題の影響を最も大きく受ける業種であるともいえる。しかも、日本の製造業のDXは遅れているという課題もある。日本の製造業が、データをより活用し、デジタルツインを実現し、DXを推進する支援ができるのがPTCである。PTCジャパンでは、SLMやIoT、ALMへの投資を加速し、人材にも投資をしていく。日本の製造業のDXを支援する中心的な存在になりたい」と語る。
今後は、ハードウェアの開発者に対して、ソフトウェア開発の重要性やポイントを説くことができる人材とともに、市場動向を理解し、業界の規制にも精通していること、海外の先行事例を日本の企業に適切にフィードバックできる人材の確保を進めていくという。
「日本の製造業の成長とともに、PTCジャパンも成長していく。製造業におけるDXのリーダーを目指し、日本の製造業を元気にすることで、日本全体を元気にしたい」と、神谷社長は意気込む。
新たな体制となり、新たな製品群を揃え、投資が積極化するPTCジャパンが、日本の製造業を元気にする役割を担うことなるか。神谷社長の舵取りが注目される。
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