東京大学の研究チームは、あらゆる生物の細胞に共通して存在する構造体である「中心小体」の基本骨格である「三連微小管」の形成促進機構を解明した。中心小体は、細胞分裂やシグナル受容、精子運動など多岐にわたる生命現象を制御し、中心小体の構造破綻はがんや繊毛病、男性不妊などの原因となる。だがこれまで、中心小体の基本骨格である三連微小管が形成されるメカニズムや、制御分子の実体はわかっていなかった。
東京大学の研究チームは、あらゆる生物の細胞に共通して存在する構造体である「中心小体」の基本骨格である「三連微小管」の形成促進機構を解明した。中心小体は、細胞分裂やシグナル受容、精子運動など多岐にわたる生命現象を制御し、中心小体の構造破綻はがんや繊毛病、男性不妊などの原因となる。だがこれまで、中心小体の基本骨格である三連微小管が形成されるメカニズムや、制御分子の実体はわかっていなかった。 研究チームは今回、データベース上に登録された1000以上のスクリーニング結果に基づく情報学的解析により、三連微小管の形成を促進する制御分子「HYLS1」を同定。さらに、HYLS1の機能を抑制した細胞では、中心小体の三連微小管の構造が著しく破綻し、中心小体をもとに形成される中心体や繊毛についても形成異常が起こることを確認した。 さらに、ディープマインド(DeepMind)の人工知能(AI)プログラム「アルファフォールド・マルティマー(AlphaFold-Multimer)」を用いたタンパク質複合体の立体構造予測と生物学的な検証実験を組み合わせることで、HYLS1が三連微小管特有の連結形成を促進する作用メカニズムを解明。細胞に過剰量のHYLS1を供給することで、中心小体の三連微小管によく似た性質をもつ微小管高次構造を人工的に形成させることにも成功した。 今回の研究成果は、中心小体形成を司る分子基盤の全容解明や、繊毛病(繊毛・べん毛に関係する遺伝子の異常により引き起こされる疾患)発症メカニズムの理解につながること期待される。研究論文はネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に2024年3月22日付けで掲載された。(中條)