東京大学の研究チームは、すばる望遠鏡で発見された1万個を超える120億年以上昔の銀河に対してそのX線画像を解析。その時代の宇宙の大多数を占める一般的な銀河の中心に存在する超大質量ブラックホールの質量増加率が、従来の予想よりずっと低いことを明らかにした。
東京大学の研究チームは、すばる望遠鏡で発見された1万個を超える120億年以上昔の銀河に対してそのX線画像を解析。その時代の宇宙の大多数を占める一般的な銀河の中心に存在する超大質量ブラックホールの質量増加率が、従来の予想よりずっと低いことを明らかにした。 研究チームは今回、銀河の位置のX線画像を多数重ね合わせることで信号雑音比を上げる「X線スタッキング」技術を用いて、約122億~130億年前という大昔の一般的な銀河の中心に存在する超大質量ブラックホール質量増加率を推定した。現在の宇宙では銀河の質量とブラックホールの質量には、ほぼ正比例の関係がある。だが、推定の結果、当時のブラックホールの質量増加率の上限値は、銀河の質量増加と足並みをそろえていると想定した場合よりも1桁以上低いことがわかった。 これは、銀河自身は盛んに星を作って成長しているのにブラックホールは休眠に近い状態にあることを意味する。すなわち、大昔のブラックホールがクェーサーのような短期間に急激に質量を増加させる段階を経ない限り、現在の宇宙で見られるような質量には到底届かないことになり、ブラックホールの成長を理解する手がかりとなるとともに、銀河とブラックホールの進化モデルに修正を迫る結果であるという。 本研究成果は、英国王立天文学会誌(Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)のオンライン版に2024年3月8日付けで掲載された。(中條)