3Dプリント義足ソリューション事業を展開するインスタリム、シリーズBラウンドでJICベンチャー・グロース・インベストメンツ、三菱UFJキャピタル等から総額9億円の資金調達を実施
インスタリム
インドで好調なライセンス事業をさらに加速する他、ウクライナ・インドネシアを含め、3年以内に10カ国以上への海外展開を加速
インスタリム株式会社, シリーズBラウンドで総額9億円の資金調達を実施
3Dプリンティングおよび機械学習(AI)技術を活用して、世界初(※1)となる3Dプリント義足製造ソリューション事業を日本・フィリピン・インドで展開するインスタリム株式会社(本社:東京都隅田区、代表取締役CEO:徳島 泰、以下「当社」)は、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ株式会社、三菱UFJキャピタル株式会社など、計8社を引受先とする第三者割当増資と、2社からの融資により、シリーズBラウンドとなる総額9億円の資金調達を完了いたしました。
今回の資金調達を通じて、海外展開をさらに加速し、2024年度にウクライナおよびインドネシアの展開を実施、続いて3年以内に10カ国以上を目標に事業展開を行います。
資金調達の背景
インスタリムは「必要とする全ての人が、質の高い義肢装具を手に入れることができる世界を実現する」というビジョンを達成するため、現在、日本・フィリピン・インドの3カ国を事業地として、
- 高品質・低価格な3Dプリント義足の製造・販売事業、
- 義足・義肢装具の設計・製造ソリューションのライセンス販売事業
の2本柱で事業を推進しています。
フィリピン・インドでは既に2,800本以上の3D義足の提供実績があり、フィリピンではシェアNo.1を獲得しているなど、アジアを中心に急速に事業を拡大しています。
当社はこの度、急拡大するフィリピン・インド事業の更なる加速と、2024年度に進出するウクライナとインドネシアにおける事業実施、および更なる海外展開を目的に、総額約9億円の資金調達(融資を含む)を行いました。
資金調達の概要
資金調達額
約9億円(融資含む)
第三者割当増資による調達先
JICベンチャー・グロース・インベストメンツ株式会社、三菱UFJキャピタル株式会社、株式会社アイティーファーム(IT-Farm)、第一生命保険株式会社、NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社、米ペガサス・テック・ベンチャーズ運用のアクアクララレモンガスホールディングス株式会社との共同出資CVCファンド、インクルージョンジャパン株式会社、株式会社リバネスキャピタル
融資による調達先
株式会社日本政策金融公庫、大和ブルーフィナンシャル株式会社
インスタリムについて
当社は、3Dプリント義足を世界で初めて実用化した(※1)、2018年創業の日本発のディープテック・スタートアップです。
この3Dプリント義足は従来品と同程度の品質を保ちながら、価格・納期・イニシャルコストを1/10以下に圧縮することができ、フィリピン・インドですでに2,800本以上の製造・販売実績があります。
(左から) 3Dプリント義足、義足用 3Dプリンタ、義足設計用 3DCAD
義足は一般に、一人一人の体に合わせて医学的に最適な形状を手作りでアナログに製作する必要があるため、義肢装具士の医学知識と技術力が必要です。よって、通常の品質のものでも1本あたり30~100万円と高価であり、また納期に通常1ヶ月程度を要します。
そのため、開発途上国を中心に義足を購入できない方が、未だ世界に4,000万人以上(※2)も存在しています。このような義足を購入できない人の殆どは仕事に就くことができず、貧困からの脱出が阻まれています。この深刻な社会課題は、これまで解決不可能として放置され続けてきました。
この社会課題を解決するために、当社は義足製造をアナログからデジタルにDXする、3D-デジタル製造ソリューションをゼロから開発し、「必要とする全ての人が、質の高い義肢装具を手に入れることができる世界を実現する」というビジョンを実現しようとしています。
インドにおける弊社の義足提供の様子(Instalimb Indiaにおけるプロモーションムービー)
急増する糖尿病患者と、急拡大する義足マーケットについて
下肢を切断する原因の8割以上が糖尿病性壊疽などの血管系疾患が由来です(※3)。よって、義足マーケットとはすなわち、糖尿病のターミナルケアのマーケットであると言えます。
糖尿病は無症状で進行するため、特に定期的な健康診断がない開発途上国においては、「気がついたら脚が壊疽している」というパターンでの下肢切断が多発しています。
ゆえに糖尿病は開発途上国では「貧困病」とも言われ、患者数は増加の一途であり、2045年には7.8億人に達すると見込まれます(そして、その9割程度以上が、新興国・開発途上国の患者だと言われています)。
その一方で、インスリン等の治療薬は世界的に不足し続けているのもあり、この糖尿病の激増にかかる社会問題の根本的な解決策は、未だ見つかっていません。
(左から) 義足利用者における糖尿病の割合(※3)、糖尿病患者の増加予測(※4)
このような世界的な事情により急拡大する義足マーケットは、世界市場規模としては2兆円規模(※5)であるとされており、当社が事業展開するインドの義足市場は総計約750億円(※6)、フィリピンの義足市場は総計約98億円(※7)と試算されます。
このような背景のもと、当社は2019年よりフィリピンにて、また2022年よりインドにて現地事業を開始し、順調に売上を伸ばし続けています。
フィリピンでは2022年11月に単月黒字化(※8)した後も、年次成長率120%程度で伸び続けおり、またインドにおいてはまだ販売開始から1年と少しですが、月次成長率130%のペースで、鋭角的な立ち上がりを見せています。
インドにおける月次売上の推移(義足販売本数ベース)
ライセンス事業について
このような義足マーケットの需要急増に対し、より迅速に対応しスケールを加速させるために、フィリピン・インドでの自社製造にて実績を積み上げた当社の3D-デジタル義足製造ソリューションを、世界各国の義足・義肢装具製作所に使っていただくためにパッケージ化し、ライセンス提供する事業を、2023年度より開始しています。
すでに、インド・フィリピン現地の複数の大手の義足製作組織に、当社の3Dプリンタの納入が完了しており、当社ソリューションをそれぞれの現場での義足製造にお役立ていただいております。
世界最大の義足提供NGO「ジャイプールフット」との弊社ソリューションのライセンス導入にかかる契約調印の様子
またこのライセンス事業にかかり、昨今の戦禍により義足需要が急増するウクライナに向けては、国連工業機関(UNIDO)から3D義足製作の技術移転プロジェクトのご採択をいただいた他、この国連プロジェクト後の継続的な復興支援と現地でのビジネス展開を前提とした、ウクライナ現地企業との、ライセンス事業開始のための覚書(LOI)の締結が完了しており、先月2月19日の「日・ウクライナ経済復興推進会議」において発表が行われました。
日・ウクライナ経済復興推進会議での覚書(LOI)発表の様子(左から、ウクライナ現地企業代表、デニス・シュミハリ・ウクライナ首相、岸田首相、当社代表の徳島)(提供:経団連)
参考リンク
- テレビ東京、WBS:https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/wbs/newsl/post_291001
- TBS、ニュース23:https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1011706?display=1
当社は今回のシリーズBラウンドの資金調達を通じて、このような海外展開をさらに加速し、2024年度に計画されているウクライナおよびインドネシアの展開を実施する他、続いてIPOまでの3年以内に10カ国以上への事業展開を行ってまいります。
会社概要
東京本社
- 会社名: インスタリム株式会社
代表者: 代表取締役CEO 徳島 泰
事業内容: 3Dプリント義肢装具および製造装置の開発・製造・販売
URL: https://www.instalimb.com/
所在地:東京都墨田区横川1-16-3
フィリピンオフィス
- 所在地:Unit 2512, Centuria Medical Makati, Kalayaan Avenue, Brgy. Poblacion, Makati City, Metro Manila, Philippines.
インドオフィス
所在地:No. 87-B, Udyog Vihar, Phase 5, Gurugram, Haryana, India
※1:当社調べ(WEB記事、ニュース記事、論文等より)。単なる試供品の提供ではなく、カスタム量産体制が構築された3Dプリンタ・CAD義足事業として。なお、カスタム量産体制(マス・カスタマイゼーション)とは、ユーザー個人のニーズに応じたカスタマイズと、大量生産並みの低コストな供給を両立する生産システム。義足の提供には患者一人一人の断端(切断部)の形状に応じてカスタム/パーソナライズされた形状での一品生産が不可欠である。よって義足の世界的な普及には、低コストな大量生産とパーソナライズされた受注生産を兼ね備えた、新しいソリューションでの製造が不可欠となる。
※2:世界の四肢切断者が全世界で6,500万人(以下論文より引用:McDonald CL, Westcott-McCoy S, Weaver MR, Haagsma J, Kartin, D. Global prevalence of traumatic non-fatal major limb amputation. Prosthet Orthot Int. Submitted 2020 March.)に、スタンフォード大学のMaurice LeBlanc氏の2011年講義資料(https://web.stanford.edu/class/engr110/2011/lecture03a.html)の”義足=約70%”をかけた数字である4,550万人に、さらに、国連レポート(UnitedNations (http://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/assistive-technology))の”現在(義足など)アシスティブ・デバイスにアクセスできるのは10人に1人”より、90%をかけた4095万人を、「脚の一部を無くしたにもかかわらず義足を購入できない方」とした。
※3:当社(フランチャイズ会社“Instalimb Solutions Philippines”)患者データベースより算出。
※4:Diabetes around the world in 2021 「https://diabetesatlas.org/」より抽出し、グラフ化した。
※5:当社の義足(下腿義足4万円、大腿義足8万円とする)を、世界の義肢切断者である全世界の6500万人のうち中低所得国の64%(うち、下腿義足70%、大腿義足30%)が購入できたとした場合の試算値(参照:McDonald CL, Westcott-McCoy S, Weaver MR, Haagsma J, Kartin, D. Global prevalence of traumatic non-fatal major limb amputation. Prosthet Orthot Int. Submitted 2020 March.)
※6:インドの糖尿病由来の足潰瘍の患者数=8,019,000人(IDF(International Diabetes Federations) Clinical Practice Recommendations on the Diabetic Foot 2017)と、その他交通事故・疾病・その他による切断患者数=36,219人(Wraight P, Lawrence S, Campbell D, Colman P. Retrospective data for diabetic foot complications: only the tip of the iceberg?. Intern Med J. 2006;36(3):197-199.)を足した数を、AK(膝上切断=38%)とBK(膝下切断=62%)に分けて(AK:BKの比率は、糖尿病診療ガイドライン2019(日本糖尿病学会)より)、それぞれに以下の弊社製品価格を乗算して試算
・高所得者(1.2%):AK=347,400円、BK=173,700円
・中所得者(54.8%):AK=108,000円、BK=54,000円
・低所得者(44.0%):AK=80,000円、BK=40,000円
※7:フィリピンの糖尿病患者のうち足潰瘍の患者=1,081,170人(全人口の1%:JICA「2015年度中小企業海外展開支援事業~フィリピン国3Dプリント義足製作ソリューション事業基礎調査~を」参照)と、その他交通事故・疾病・その他による切断患者数=268,637人(Wraight P, Lawrence S, Campbell D, Colman P. Retrospective data for diabetic foot complications: only the tip of the iceberg?. Intern Med J. 2006;36(3):197-199.)を足した数を、AK(膝上切断=38%)とBK(膝下切断=62%)に分けて(AK:BKの比率は、糖尿病診療ガイドライン2019(日本糖尿病学会)より)、それぞれに以下の弊社製品価格を乗算して試算
・高所得者(5%):AK=250,000円、BK=125,000円
・中高(アッパーミドル)所得者(21.5%):AK=100,000円、BK=60,000円
・中低(ローアーミドル)所得者(44.5%)AK=50,000円、BK=25,000円
・低所得者(29.0%):AK=87,500円、BK=25,000円(=比国政府保険PhilHealth価格)
※8:当社(フランチャイズ会社“Instalimb Solutions Philippines”)における、弊社の管理会計における単月度の黒字。