富士フイルムの初代「X100」の誕生から13年。その間、誰が見ても「X100シリーズ」だと一目でわかるボディや使い勝手を受け継ぎつつ、中身は進化し続けてきた。
ずっと、高級カメラっぽい四角いボディに光学ファインダー(EVFと切り替え式なのが斬新だった)、レンズは23mm(35mm判換算で35mm相当)のF2.0、絞りもシャッタースピードも露出補正も専用ダイヤルでカチカチとセットするメカニカルな操作感という基本は変わらず、独自の世界をずっと貫いてきたコンパクトデジカメだ。
その最新モデルが「X100VI」。6代目のX100である。
発売前にちょっとお借りできたので、早速、猫撮影をしに「保護猫シェルター QUEUE」におじゃましたのだった。
実は、このどこからどう見てもクラシカルなX100VIなのだけど、何げなく中身は最新のデジカメなのである。何しろ被写体検出AF……つまり猫瞳AFがついたのだ。ボディや操作感は伝統的なのだけど、撮ってみると最新のデジタル技術が詰まっており、でも、仕上がりは富士フイルムならではの風合いを楽しめるというカメラなのである。
猫を撮るときはシャッタースピードと絞りを自分の手でセットするのが便利で、特に室内のようにあまり明るくない場所だと、じっとしてるからシャッタースピードは遅めでOK。動き出したらブレないようにぐっと上げよう、って操作を感覚的にできるのがいい。
ダイヤルをぱぱっと回してセットして、左手で猫の鼻先に指を伸ばして、ファインダーを覗いて、あとは猫瞳AFさんよろしく、と撮ったのが冒頭写真。白くふわっと撮りたかったのでプラスの露出補正をかけてある。
で、このあと、嫌がられました。とほほ。
35mm相当で撮るときは距離感が大事。ぐぐっと近寄りすぎると広角っぽい写りになるし、少し離れると標準レンズっぽい感じになる。ズーミングできないぶん、自分でカメラを持って動くのであるが、猫と遊ぶときは手を伸ばしたら届くくらいの距離感がいいかな。このくらい。
X100VIってデザイン的にファインダーを覗いて撮りたくなるカメラではあるのだけど、背面モニタはチルト式なので、ちょっと腕を伸ばして近づけて撮ったり、ローアングルやハイアングルで撮ったりするのにも便利だ。
まずは、ローアングル。
這いつくばってじっとタイミングを計ってたら、ふわーっと大あくびをしてくれたので、すかさず。
次は、ハイアングル。
ここは保護猫シェルターがメインなので、里親さんが見つかると(トライアルもあり)卒業していくわけで、この日はちょうど賑やかだった子猫たちが不在の日。ベテランさんたちはまったりと思い思いの場所で寝たりくつろいだりしてるし、保護されたばかりの新しい猫はまだ慣れてなくてケージの中で緊張してたりするんだけど、1匹だけ部屋の片隅に隠れてる子がいた。
積み上がった段ボール(中身は猫用のあれこれ)とケージの隙間に、キジトラのハチワレがいたのだ。ここによく隠れてるらしい。ほかの猫や人にじゃまされないところでゆっくりしてたい、という気持ちはわかる。でも撮る。すまんな。
猫を上から撮るときは目線が欲しいので、ちょっとだけ声をかけて目線をもらう。
撮影してることがばれたくないときは、こっそりと。丸カゴへの収まり方が完璧だったので、これは真上から撮りたくなるでしょう。
最後はモノクロで。富士フイルムの「フィルムシミュレーション」は年々数が増えているのだけれども、モノクロフィルターの「ACROS」が実にいい。
屋根が丸くてその下が猫ハウスになってるキャットタワーの上に飛び乗ったキジトラと目が合ったとき、これは背景を白く飛ばして白黒で撮るべしと思ったので、ACROSで。
X100VIは写りもいいし、画作りのコントロールもしやすいので、自分なりに写真を楽しむのにいい。
私はカメラを、実用のカメラ・趣味のカメラ・道楽のカメラの3種類に分類するんだけど、これはもう確実に「趣味のカメラ」ですな。
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筆者紹介─荻窪 圭
老舗のデジタル系フリーライター兼猫カメラマン。今はカメラやスマホ関連が中心で毎月何かしらのデジカメをレビューするかたわら、趣味が高じて自転車の記事や古地図を使った街歩きのガイド、歴史散歩本の執筆も手がける。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『古地図と地形図で楽しむ東京の神社』(光文社 知恵の森文庫)、『東京「多叉路」散歩』(淡交社)、『古地図と地形図で発見! 鎌倉街道伝承を歩く』(山川出版社)など多数。Instagramのアカウントは ogikubokeiで、主にiPhoneで撮った猫写真を上げている。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/
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