ヤマハは音声だけでなく映像や照明の制御信号など、さまざまな情報をWAV形式のオーディオデータに埋め込んで記録・再生できる世界初のシステム「GPAP」(ジーパップ、General Purpose Audio Protocol)を開発。銀座ヤマハスタジオで2月1日に、デモを交えたプレス発表会を開催した。
映像や音声だけでなく、照明の信号も同期、高い臨場感を
背景には、2020年にヤマハが開発した、ライブ演奏を擬似再現するライブビューイングシステム「Distance Viewing」がある。
これは、映像と音声のほかに照明も一括して記録して再現できる“ライブを真空パックする”システムだ。これは記録したデータをオフラインで遠隔地の会場で再現するためのもので、いわゆる配信システムではない。GPAPの主眼は生演奏をライブビューイングで疑似体験できる点にある。
ライブビューイングは、映画館やスタジオでライブを再現するイベントだ。コロナ禍を経て、会場とは離れた場所に住むファンが観たり、来日しにくい海外アーティストや解散したバンドのライブを観たりする需要も最近高まっているそうだ。
それでは、Distance Viewingシステムと従来のライブビューイングの違いはどこにあるのか。それはライブの雰囲気を再現する力だ。デモで比べてみると、従来のライブビューイングが単にDVDを映画館の大画面で観るようなものなのに対して、Distance Viewingでは映像に照明の効果が加わることで、よりライブ会場に近づいた表現になる。演奏の音圧もライブ会場に近く迫力があった。
参加者の評価も高く、ヤマハではさらに研究を重ねた。その過程で、記録フォーマットの異なる多様なデータを同期/再生する複雑な処理など様々な課題に直面したという。結果、開発されたのが「GPAPである。
GPAPでは、音声だけではなく照明や舞台装置の制御信号など、さまざまなデジタルデータをWAV形式に統一して保存・再生する。このため複雑な同期処理をせず、容易にシンクロ再生ができるということだ。
ちなみに現時点でWAVデータに埋め込まれるのは、照明信号などで映像を内部にエンベッドするわけではない。また、ファイルをそのまま再生するとジーというノイズが入るということなので可聴帯域内にエンコードしているようだ。
また、汎用ソフトの上で編集、保存ができる点もGPAPの強みだ。デモではCubase上でGPAPの編集を行いながら実際に照明やレーザーを連動させて動かして見せるデモも実施された。
また、この照明データは家庭用テレビでも活用することが可能だ。GPAPをデコードできる機能があれば、その照明データを家庭用テレビのイルミネーションで再現できる。テレビの下に設置された青色のライトが映像内のライブの照明と連動して明滅することができるというデモだ。
この連載の記事
-
第300回
AV
インド発の密閉型/静電式ヘッドホン? オーディオ勢力図の変化を感じた「INOX」 -
第299回
AV
夏のヘッドフォン祭 mini 2024レポート、突然のfinal新ヘッドホンに会場がわく! -
第298回
AV
ポタフェス2024冬の注目製品をチェック、佐々木喜洋 -
第297回
AV
なんか懐かしい気分、あなたのApple WatchをiPodにする「tinyPod」が登場 -
第296回
AV
逆相の音波で音漏れを防げる? 耳を塞がないヘッドホン「nwm ONE」──NTTソノリティ -
第295回
AV
NUARLのMEMS搭載完全ワイヤレス「Inovatör」(旧X878)の秘密とは? -
第294回
AV
AirPodsで使用者の動きからBPMを認識、それを何かに応用できる特許 -
第293回
AV
次世代AirPodsにはカメラが付くらしい、じゃあ何に使う?(ヒント:Vision Pro) -
第292回
AV
OTOTEN発、LinkPlayの多機能ネット再生機「WiiM」とSHANLINGの「EC Smart」を聴く -
第291回
AV
ビクターの新機軸、シルク配合振動板の魅力とは? HA-FX550Tを聴く -
第290回
AV
HDTracksがMQA技術を使ったストリーミング配信開始へ - この連載の一覧へ