AIや動画編集等の用途でも違いは出るか?
ではクリエイティブ系アプリでの検証を行う。RTX 4080 SUPERはRTX 4080に対しどういうシチュエーションで強みを発揮できるのだろうか?
まずはCGレンダラー「V-Ray」をベースにした「V-Ray Benchmark」の最新版(v6)を使用する。これはCUDAあるいはRTX(OptiX)を使用するためGeForce勢のみで比較する。
このテストではRTX 4080の約8%上にRTX 4080 SUPERがいる。3DMarkではせいぜい5%だった事を考えると、このベンチマークでは差がよりハッキリと出たと言うべきだろう。ただ、RTX 4090の結果が異次元すぎて、RTX 4080 SUPERのスゴさが完全に陰ってしまっているのがなんとも不憫である。
続いては動画エンコード系だ。まずは「UL Procyon」を利用し「Premiere Pro」に処理をさせる“Video Editing Benchmark”を試してみよう。総合スコアーのほかに、そのスコア算出の根拠となったテスト結果(エンコード時間)も比較する。スコアーは4本の動画のエンコード時間から算出されるが、CPUパワーがカギになるタイムラインと、GPUパワーがカギになるタイムラインでグラフを分けている(単純に見辛いため)。
特にスコアーが悪いのはGeForceでもRadeonでもメモリーバス幅128bitかつPCI Express x8接続のRTX 4060やRX 7600といったエントリークラスのGPU。GPUの“格”が上がればスコアーが上がるが、GPU性能への依存度が高い処理はGPUの格に敏感に反応する。
特にRTX 4070より上のGeForceは結果のまとまり方がメモリーバス幅で決まってくるのがよく分かる。ただ、RTX 4090の384bit幅まで行くとハードの優位性を引き出しきれないといったところだろう。そして注目のRTX 4080 SUPERだが、RTX 4080に対し誤差程度の差しか付けられていない。
続く「DaVinci Resolve Studio」では、再生時間約2分の8K動画(ProRes 422HQ)を編集し、それを1本の8K AV1動画(CBR、80Mbps、High Quality)にエンコードする時間を計測した。エンコードに使用するパラメーターのうち、Presetに関してはVery SlowからVery Fastまで7段階あるうちの“Medium”および“Faster”(真ん中と速い方から2番目)の設定を選んだ。
Radeon勢のPresetは段階が4つしかなかったため“Prefer Speed”“Prefer Quality”としている。VMAF等で画質を調べつつ同等の設定に詰める時間がなかったので、GeForce vs Radeonエンコード時間比較というよりも、GeForceの中での優劣とRadeonの中での優劣を見るためのグラフと考えて頂きたい。
Presetを重く設定すれば処理時間が長くなるのは道理だが、Presetを重くすると特にGeForceの場合はデュアルNVEncのメリットが失われることが再確認できただろう。Fasterに設定すれば、デュアルNVEncを搭載するRTX 4070 Ti以上では劇的な処理時間短縮が期待できる。これに対しRadeon勢はどのモデルでもGeForce勢ほどの差はでない。強いて言えばRX 7600やRX 7600 XTが遅めといった程度だ。
DaVinci Resolve Studioではもうひとつ、Magic Maskの処理時間を比較してみたい。ここでは再生時間約16秒の4K動画に写っている被写体にマスクをかける処理の速さを比較するが、この処理はGPU(AI)を利用して処理される。最初のフレームで人物にマスクをかけ、そこから動画の最後まで被写体をトラッキングしつつ連続でマスク処理をする時間を計測した。
RTX 4090を筆頭に、見事な階段状のグラフができあがった。Radeon勢最速のRX 7900 XTXの処理時間が、RTX 4060より遅いという点には驚きしかない。そしてRTX 4080 SUPERはRTX 4080より速いものの、とても体感できるような差はなかった。RTX 4080 SUPERの実売価格がRTX 4080より上回っているなら、まずはRTX 4080を狙う方がよいだろう。
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