Wi-Fi Allianceは1月8日、次世代規格Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)を正式に発表した。 発表で目を引いたのは、Wi-Fi 7が可能とする新しい分野としてゲーミングが明記されていることだ。例えば、Wi-Fi 7公式の発表動画にも左上にゲームのアイコンが示されている。Wi-Fiはもちろん用途の広い通信プロトコルだが、Wi-Fi 6から注力しはじめたゲーミング分野への適用がWi-Fi 7ではさらに推し進められているように見える。
そうした意味で、Wi-Fi 7で特に注目したいのは、さらなる高速化のみならず「低遅延」を前面に打ち出している点である。Wi-Fi 7における低遅延特性のポイントは、レイテンシーを一定にする「Deterministic Latency」という考え方が取り入れられていることだ。Deterministic Latencyとは「確定的遅延」とでも訳したらいいだろうか、どのような条件下でも低遅延を担保するという意味合いのようだ。
低遅延特性はゲーミングだけではなく、VRにおいても不快感を減らすために必要とされている。具体的には、Wi-Fi 7ではマルチリンク・オペレーション(MLO)という技術で2.4GHz帯、5GHz帯と6GHz帯のいくつかにまたがる帯域でセッションを張って通信できる。このために空いている帯域を選んで最適なリンクを確立できる。
もちろん高速化も推し進められている。Wi-Fi 6での伝送速度の理論値は約9.6Gbpsだが、Wi-Fi 7では約46Gbpsに拡大されている。これは4K-QAMや320MHzの帯域幅などの技術が取り入れられている。興味深いのはこれからのWi-Fiがどのように進化していこうとしているかが推測できる点だ。Deterministic Latencyの意義は、単に低遅延化するということではなく、劣悪な通信環境でも一定のレイテンシーを担保することだが、家の中で使うならば、そこまで劣悪な通信環境を想定する必要性は薄いだろう。つまり、Wi-Fi 7の屋外使用を念頭に置いているのではないだろうか。
すぐに連想できるのは、クアルコムのXPANである。もちろんそれだけではないかもしれないが、スマートフォンなどのデバイスを外で使用する時にまず思い浮かぶのは完全ワイヤレスイヤホンとの関連性だ。そしてそれはBluetoothを脅かす存在ともなりうる。
これまでWi-FiとBluetoothは別の領域を担う技術と考えられてきたが、もしかしたら近いうちに進化したWi-Fiが、進化したBluetoothと交わってしのぎを削る時が来るのかもしれない。
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