最新パーツ性能チェック 第432回
Core i9-14900/Core i7-14700/Core i5-14400/Core i3-14100/Intel 300をまとめてレビュー
第14世代にもKなしが登場!Core i9-14900からIntel 300まで5製品を一気に斬る
2024年01月11日 08時00分更新
Kなしモデルの消費電力が多いのは本当か?
ゲーム中の消費電力に関する観測結果は、第14世代のKなしモデル、特にCore i7-14700に関してはCore i7-14700Kよりも大きいと確信してよいだろう。ブーストクロックはCore i7-14700Kよりわずかに低いものの、惜しくもKつきになれなかった個体をKなしとして出荷された個体と考えれば、限界領域を攻めるにはより多くの電力を必要とする、と考えられる。
そこで、改めて状態ごとの消費電力を計測してみることとする。ここでは前掲のHandbrakeによるエンコード(Super HQ 1080p30 Surround)時にCPUが消費した実消費電力をPowenetics v2を利用して計測した。また、アイドル時の消費電力は3分間放置した際の平均値を採用している。
以上の結果から明らかなように、第14世代のKなしモデルの消費電力は、対応するKつきモデルの消費電力を上回った。最大値は瞬間最大風速でもあるので除外しても、99パーセンタイル点や平均値の両方においてもCore i7-14700>14700Kであることは確実だ。一方のCore i9-14900に関しては、平均値はCore i9-14900Kより高い一方で、99パーセンタイル点は14900Kとほぼ同じという点から、電力や熱の制限などで頭打ちになっていると考えられる。
また、Core i5-14400以下のモデルに関しては、第13世代の同格品と比べ差が小さいように見えるが、Core i3-14100だけは13100に対し平均で14W増えている。
KなしモデルはPBPが低くて扱いやすいというのは幻想である、と今回の検証は示している。ただし、KなしモデルがKつきからの選別落ちという仮説が正しいなら、個体差もそれなりに大きいと考えられるため、今回テストに使ったCore i7-14700やCore i9-14900が“たまたま”電力的な特性がよろしくないものだった、というオチは十分に考えられる。
さらに言えば今回の検証は“最大限頑張らせた場合、Kつきに対しどれだけのパフォーマンスで迫れるか”という側面もあるため、Z790ではなく安めのHまたはB系マザーで空冷クーラー向けの電力制限を付けた場合の消費電力については検証しきれていない。カリカリに回した時のパフォーマンスはこうだった、という観点で理解していただければ幸いだ。
消費電力が多いなら制限すれば良いのでは?
Core i7-14700はパフォーマンスは良いが、消費電力的な素性があまりよろしくない。しかしKなしを全力で回しているからそうなのであって、電力制限をかければ違うのではないだろうか?
そこでここでは、Core i7-14700にのみ限定し、電力制限なしの状態(これまでの観測データ)と、電力制限をした状態でどのように処理性能や消費電力等に差が出るかを見る。電力制限に関しては、今回使用したマザーボードのBIOSにある「ASUS Multicore Enhancement」で「Disabled - Enforce All Limits」を選択した状態とした。ハイエンドマザーなので中庸な設定がない(一応CPU温度90℃制限という設定はあるが)ため、一番厳しい制限と制限なしの比較となる。
ここではHandbrakeによるエンコード(Super HQ 1080p30 Surround)のみを使用する。エンコードの裏でPowenetics v2を利用して消費電力を追跡し、さらに「HWiNFO Pro」でクロックや温度を追跡した。ただし、Powenetics v2とHWiNFO Proの計測ごとにエンコード処理は分けている。
まず、パワー制限をするとエンコードに2倍近い時間を要するようになる。その理由は消費電力に表れており、最も厳しいパワー制限をかけると最大でも317W(無制限なら434W)だが、99パーセンタイル点と平均が93〜94Wと非常に近いことから、CPUの消費電力が95W以下に収まるように強制的に性能を絞られているからだ。
まずクロック推移を観察すると、Core i7-14700Kは5.5GHzの状態が長く続くのに対し、Core i7-14700は処理開始早々にクロックがブレる。一見全力で回っているように見えても、KなしのCore i7-14700はクロックが相応に下がっている。Core i7-14700をパワー制限下で動かした場合は、5GHz台で動くのはほんの数秒しかなく、大半の時間は2.9GHz前後で動作する。エンコード時間が長くなるのも当然だ。
一方CPU温度(CPUパッケージ温度)はもっと衝撃的だ。クロックが低いのだから温度も低い、というのは誤りで、Core i7-14700Kよりも温度の上がり方が急峻である。これはCore i7-14700Kよりも14700のほうが消費電力が大きいことの裏付けになっている。
クロックを引き上げるために電力を使い、それが熱として反映されているのだ。早い段階からクロックが上下にブレているのも、CPU温度上昇にともなうサーマルスロットリングの結果といえるだろう。PBPが65Wになって扱いやすいというのは誤りで、しっかり絞って使わないとむしろ効率が悪くなるようだ。
出せたことに意味がある?
まず1つ言えることは、第12世代ないし第13世代のKなしから第14世代のKなしモデルへの乗り換えは、コア数が増えるパターン以外はメリットがない。Core i5-12400→14400、Core i3-12100→14100のように、中身がまったく変わっていないパターンがあるからだ。
ただ、Core i3やi5のKなしからCore i7-14700やCore i9-14900といった乗り換え、あるいはCore i3からCore i5-14500のように、コア数の増えるパスは選択するメリットがある。第14世代の消費電力大幅増は残念だが、空冷クーラー前提のパワー設定でユルく使うのであれば特に気にすることはない。マザーボードによってはCPUクーラーに合わせてパワーを絞ってくれる(数万円出したCPUなのにパワーを絞った運用になるというのも悔しい話だが)。そのあたりを上手く使いたい。
今回のKなしモデルはコア数の増えた1モデルを除くと、総じて既視感の強いモデルチェンジといえる。Core i5-14400以下のモデルに関してはアーキテクチャーのアップグレードもなく、刻印と仕様をちょっとを変えただけ、というのはいただけない。
とはいえ、LGA1700の最後を飾るシリーズなので、LGA1700の初期に導入したユーザーのアップグレードパス、あるいはそれ以前のCPUからの完全乗り換え先としては十分に意味のあるチョイスだろう。第13世代のKなしや値ごろ感の出てきたKつきも選択肢に含めつつ、賢く買い物をすれば良いだけの話だ。
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