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A10 Connect 2023 ― 自治体DX座談会レポート

規模もネットワーク環境も異なる4つの自治体が挑むDX ― 三層分離でのクラウドサービス活用の現状

2024年01月16日 09時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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舞鶴市 ― データ活用や住民のやり取り活発化に向けBIやコミュニケーションツールなどを活用

 続いて登壇したのは、舞鶴市の総務部デジタル推進室 室長である吉崎豊氏。

 舞鶴市は、オープンに住民と行政がともに考えてまちづくりをすること、職員が伸び伸びと仕事ができること、住民と接する時間を増やすことを目指し、DXに取り組んでいる。加えて、同市のありたい姿として「常にかわりゆく社会に“そこそこ”ついていく」ことを挙げ、取り残されないよう民間同様に変革する重要さと、先頭を走り他の自治体のベストプラクティスになることの大変さを語った。

舞鶴市 総務部デジタル推進室 室長 吉崎豊氏

 舞鶴市は今回登壇した自治体の中で唯一、全庁的にはMicrosoft 365を導入していない。目指すあり方に合わせたクラウドサービスの活用を進めており、データに基づいた施策が展開できるようBIツールを導入したり、外部も巻き込んでまちづくりを考えていくためにSlackを含めたコミュニケーションツールを活用したり、楽しみながら変革ができるよう内製化ツールのトライアルを開始したりしている。

 ネットワーク構成はα'モデルをとり、LGWAN接続系の端末からBIツールやコミュニケーションツール、内製化ツールの通信をA10により直接つなげている。通信を振り分けるだけではなくセキュリティ強化にも取り組み、例えば内製化ツールにおいては、住民に開放しない、添付ファイルを禁止するといった一定のルールを設けるなど運用面からも対策しているという。

舞鶴市のネットワーク構成図

由利本荘市 ― クラウドで技術ではなく人がボトルネックになり、本当のDXが始まる

 最後に登壇したのは、由利本荘市の企画振興部 情報政策課 主査である今野薫氏。

 今野氏は「『平成の大合併』から既存ベンダーと随意契約を繰り返すようなシステムのあり方だったが、2013年にCIO体制を確立して以来、デジタル分野を少しずつ改善してきた」と振り返る。

 以降、随意契約の見直しや調達単位の整理などデジタル調達を改革し、電子申請やコンビニ交付・収納、キャッシュレス・オンライン決済、RPA、AI-OCRなど各種システムの導入を進めてきた。一方で「道具は揃ってきたが、人口は増えず、市役所の流れや空気が良くなることはなかった。デジタル技術ではなくて、DXのトランスフォーメーションの部分が大事だと実感した」と今野氏。

由利本荘市 企画振興部 情報政策課 主査 今野薫氏

 それでもデジタルをテコにするしかないということで働き方改革の中核ツールとしてMicrosoft 365を導入した。

 Microsoft 365の導入の狙いは、新型コロナウイルス対応やカルチャー変革に加えて、主役をモノから人に取り戻すことにあったという。「これまでは職場が中心で人が活躍できなかったが、クラウド技術により庁舎や紙から、市や人材が中心になるよう変えていく。クラウドで変化に即応でき、システムではなく組織や人がボトルネックになり、ここから本当のDXが始まる」と今野氏は語った。

 システム的にはワークスタイル変革に対応するゼロトラストアーキテクチャを視野に入れ、三層分離の前提の中で段階的にゼロトラストを実現できるよう、現在はα'モデルでクラウドサービスの通信をA10でローカルブレイクアウトする構成をとっている。

 パブリッククラウドに繋ぐことにより発生する脅威に対してもさまざまなセキュリティ対策を講じており、「セキュリティをアセスメントしてそこに対策をあてる、という基本を守ることが大事で、何かのモデルに思考停止して依拠してはいけない」と今野氏はプレゼンを締めた。

由利本荘市のネットワーク構成

各自治体のDX推進においてぶつかった障壁

 セッションの最後には、「DX推進において、ぶつかった障壁は何か」という質問が投げかけられた。

 岐阜市役所の速水氏は「古い考え方をする人と、デジタルネイティブの若い人の両方がいること。今までの仕事を変えたくない人や、なんでこんな仕事をやっているんだろうという人はやっぱりいる。それをうまく融合させて変えていくことが大事」と回答。

 世田谷区の内田氏は「世田谷区の8000人の職員全員から良くなったねとは言ってもらえない。各課がシステムを持っており、さまざまな調整事項が発生する。基盤構築はベンダーと進んでいくが、調整をやりきれるかが一番重要で、一番大きな障壁になる」と回答。

 

 舞鶴市の吉崎氏は「主役も人だが壁も人。その時分かってもらえなくても何年か経ったらいいじゃん、となることは実際ある。粘り強くやるしかない」と回答。

 由利本荘市の今野氏は「予算の壁は大きく、先立つものがないとどうしようもない。定量的な効果を示すが、どこかで定性的な判断が必要になる。そのために意思決定者とどこまで握れるか。地道な根回しが大事」と回答した。

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