A10 Connect 2023 ― 自治体DX座談会レポート
規模もネットワーク環境も異なる4つの自治体が挑むDX ― 三層分離でのクラウドサービス活用の現状
2024年01月16日 09時00分更新
岐阜市 ― Microsoft 365を閉域網で繋げ安全性と可用性を担保
続いて各自治体のDXの取り組みが紹介された。
まずは、岐阜市役所の行政部 デジタル戦略参与である速水清孝氏が登壇。同市では、2022年に、従来から取り組む岐阜市ICT活用推進計画を発展させた「岐阜市DX推進計画」を策定、現在199ものDX事業を推進している。
具体的には、新庁舎の開庁と並行して、AI会議録やペーパーレス化、無線LAN化、AIチャットボット、キャッシュレス、オンライン申請など、業務効率化や働き方改革、市民サービスの向上を主軸としたさまざまな取り組みを推進している。
そして、働き方改革を支える中核のツールとして導入したのがMicrosoft 365だ。
まずは、Microsoft 365によりテレワークやメール・スケージュールへのモバイルアクセスを実現。さらに、チャットによる問い合わせチャネルを設け、電話対応や問い合わせ件数を減らした。ウェブ会議による業務効率化や会議スペースの削減、業務の見える化によるマネジメント力や職員間のコミュニケーションの向上、チームメンバーでのリアルタイムな共同作業も実現した。
ネットワーク構成はα'モデルをとり、A10のクラウドアクセスプロキシを利用してMicrosoft 365の通信を振り分けている。
「岐阜市が特徴的なのはMicrosoft Azure Peering Serviceにより、Microsoft 365と直結するルートを閉域網で繋げていること」と速水氏。LGWANを通らない通信の安全性と可用性を高め、クラウドHUBとよぶ通信事業者の接続サービスを経由しているため、今後の他クラウドサービスの利用拡大にも対応できるようにしている。
世田谷区 ― 約8000人の職員の効率化のためβモデルに移行
続いて登壇したのは、世田谷区のDX推進担当部DX推進担当課 DX推進担当係長である内田翼氏。
世田谷区では、“Re-Design SETAGAYA”を掲げつつ、行政サービス、参加と協働、区役所の3つの観点でのデジタル技術による再構築を進めている。
世田谷区がDXに舵を切ったきっかけとして「新型コロナウイルスのインパクトは大きかった」と内田氏。コロナ禍を踏まえて、役所の働き方の変革に取り組んだ。
DX推進を支える次期情報化基盤を構築する中で、重視したことが職員の生産性向上だ。そのために、セキュリティの強度を担保しながら、素早いインターネット接続の実現や新事務用端末(モバイルPC)の導入を進めた。特にインターネット接続に関しては、同区は職員が約8000人いるため、従来のαモデルでそれぞれVDIを立ち上げると多くの時間が消費されてしまう。そこでαモデルからβモデルへと移行した。
その他、次期情報化基盤では、ペーパーレス化を促進する事務用無線LANの構築やMicrosoft 365のTeamsを中心としたコミュニケーション・コラボレーションの促進などにも取り組んだ。
ネットワーク構成としては、インターネット接続系の端末からA10のクラウドアクセスプロキシで通信を振り分け、インターネットへの通信は自治体セキュリティクラウドに、TeamsやYouTubeのような通信量の多いものは直接つなげている。
庁外でのリモートワーク時には、端末にグループポリシーをあて、庁内システムにはVPNでセキュアにつなげる。ブラウジングに関しては通信がボトルネックにならないよう、「A10 Cloud Access Controller(CAC)」を経由し、インターネットへの通信は庁内と同様にセキュリティクラウドに、クラウドサービスへの通信はCACから直接つなげている。
「テレワークを推進する際に、職員数が多いため通信量のボトルネックが課題になる。テレワークに伴いウェブ会議も増えるため、庁内を経由させずに直接ローカルブレイクアウトさせている」(内田氏)