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Windows Info 第412回

さらばWindows MRにVBScript 2023年に廃止が決まったWindowsの機能

2023年12月31日 10時00分更新

文● 塩田紳二 編集● ASCII

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 Windows 10から、Windowsの機能についてライフサイクルが明確化された。これに合わせて、Microsoftは削除を予定している機能に関して、開発が停止した段階で機能を「非推奨」として公開している。

 今年2023年に非推奨とされた主な機能には、以下の表のようなものがある。

2023年に廃止が決まったWindowsの機能

 実際にはこのほかにもあるのだが、有償サービス、もしくはわざわざ取り上げるほどでもないものがあり、それらについては表に記載していない。過去に公表されたものを含め完全なリストは、以下のページにある。

●Windows クライアントの非推奨の機能
 https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/whats-new/deprecated-features

ハードウェアまで出したのに……
「Windows Mixed Reality」がついに終了

 12月後半になって発表されたのが「Windows Mixed Reality」。「Windows MR」と略されてきたものだ。これは、Microsoft仕様のHMD(Head Mount Display)を使った仮想現実システムで、Windows 10のときに正式導入された。Windows 10には、Mixed Realityポータルなどのソフトウェアが付属していた。

2023年に廃止が決まったWindowsの機能

Windows Mixed Realityポータル。Windows MRのセットアップをして、VR内でのラウンチャーとなるアプリ。現在は、Microsoftストアからダウンロードできる

 Windows MRは、HMDに付いているカメラを使って頭部の位置や向きを測定、また、両手にコントローラーを持つことで手の動きを検出、同時にコントローラーのボタンでソフトウェアの操作をする。基本的には、MR対応アプリケーションを使うが、既存のWindowsアプリのウィンドウを視野内に表示することもできる。

 そもそもMRとは、仮想現実(Virtual Reality)と、強化現実(Augmented Reality)の「複合」(Mixed)ということだったが、Windows仕様のMR用HMDは外の風景を見ることができるシースルーではなく、コンピュータの出力画像のみを表示するものだった。このため扱えたのはVRのみ。簡単に言えば、全周ディスプレイモニターのようなもの。ARに関しては、HoloLensという別ハードウェアが企業向けに提供されている。Windows MRとHoloLensの開発基盤は同一だが機能は異なる。廃止の件は、クライアント版Windows 10/11の話である。

 廃止の原因は、開発者が集まらず、エコシステムとしては盛り上がらなかったことだろうか。HMDが重くて、ケーブルがわずらわしいという問題もあるかもしれない。Microsoftとしては、同社でMRの開発を続けてもWindowsの普及やビジネスによい影響を出せないという判断なのだと思われる。俗に言う「傷口が広がらないうちに」だろう。

レガシーコンソールやVBScriptも非推奨に

 続いて、「MDAG」(Microsoft Defender Application Guard)は、仮想マシンの中でプログラムを動かすことで、高いセキュリティを実現するもの。Edge用とOffice用があったが、これも廃止された。仮想マシンの中なので、万が一、ウイルスなどに感染してもホスト側には影響がないが、リソース消費が大きく、起動が遅くなるという問題などがあり、あまり普及しなかった。基本的には企業向けの技術。なお、代用技術があり、MDAGが廃止されても問題はなさそうだ。

 「レガシーコンソール」とは、Windowsの標準コンソールのこと。シフトJIS時代まではよかったが、その後Unicodeが普及するに従い、さまざまな関連機能への対応が困難になった。たとえばカラー絵文字の表示などである。Windows 11にはWindows Terminalが付属しており、通常の使い方では問題ないと考えられる。

 もっともレガシーコンソールとWindows Terminalの互換性は100%ではなく、レガシーコンソールでは正しく動作するが、Windows Terminalでは正しく動かないというアプリケーションもないわけではない。開発が活発なアプリケーションならば、Windows Terminalに対応されるはずだが、開発が終了している場合は、レガシーコンソールに頼らざるを得ないことがある。とはいえ非搭載というわけではないので、当面は問題はないはずだ。

 「ステップレコーダー」は標準付属のアプリだが、使ったことがないユーザーは多いだろう。このステップレコーダーとは、Windows標準の画面記録ツールで、主にサポートなどで利用されていた。単なる画面録画ツールと異なるのは、操作対象のウィンドウタイトルやクリック操作などをテキストベースで記録し、そこにデスクトップ全体のスクリーンショットを付けるという点。

 できあがるのは、画像とテキストからなるウェブページなので、ソフトウェアの操作説明なんかを作るときにも使えるのだが、出力されるZIPファイルに入っているのはmht(Mime HTML)形式ファイルで、簡単に言えば、画像添付ファイルがついたHTMLメールメッセージと同じ形式。そして、EdgeのIEモードでないと開くことができない。おそらく、このために廃止となるのであろう。

 「VBScript」は、スクリプト用言語の1つで、Windows Scripting Host(WSH)や旧ASPで使われていた。VB.NETになる前のVisual BASICを簡略化して作られたもので、Windowsでは、BATCH言語に代わる標準スクリプト言語として導入された。

 WSHは、COMコンポーネントに対応し、BATCH言語に比べると高度な機能があった。VBScriptには、メッセージボックスを表示する機能があったので、BATCHファイルから呼び出すなどの手法が使われたことがある。

 とはいえ、WSH自体にはスクリプトファイルを実行する機能しかなく、cmd.exeから呼び出して使うという形式だったので使い勝手がイマイチだった。ほぼ同じ文法のExcelやWordのVBA(Visual BASIC for Applications)を使ったほうが、開発環境やデバッグなどの支援も得られる。このため、VBAほどの人気が出なかった。そのうち、ActiveXがセキュリティ問題などを引き起こしたアオリをくらって、途中から失速、.NETの登場で「置いてけ堀」をくった感じだ。現在では、Windows PowerShell/PowerShellでほぼ代用が可能。唯一の利用方法は、ファイルショートカットの作成ぐらいである。

 「ワードパッド」は、Windows 95でMicrosoft Writeの後継として登場した。簡易化されたMicrosoft Wordだったが、Writeの機能を引き継ぎ、WindowsのRTF(Rich Text Format)を扱う標準アプリケーションだった。いまでもクリップボードは、Windows TerminalなどからRTF形式で書式付きのテキストをコピーする機能があるが、標準では、このワードパッドしかRTF形式の貼り付け先がない(Microsoft Wordにも貼り付けできる)。

 Windows 95の時代、自分でプログラムを書くことができなければ、バイナリプログラムがないと何もできなかった。こうした時代にワードパッドは簡易な書式付き文書作成の手段として使われていた。いまでは、Webアプリケーションで書式付きの文書作成などは簡単に行える。その意味では、こうしたアプリケーションをWindowsに付属させる必要性が低くなったと判断されたのであろう。

 「Windows音声認識」は、Windows音声アクセスで置き換えられることになった。この2つの区別に関しては、過去記事(「Windowsにおける音声認識など、ボイス機能を整理」)を参照のこと。すぐに搭載中止になるわけではないので、大きな問題はないと思われるが、早く音声アクセスを日本語対応させてほしい。いまだに音声アクセスは一部の言語にしか対応していない。

 「Cortana」はWindows 8の時代に華々しく登場した「音声アシスタント」だが、もう引退である。Xboxのゲームに由来する名前で、Microsoftにしてはいいネーミングだった。Copilotなんて名前にしないで、Cortanaを襲名させた方がよかったのでは?。

 「AllJoyn」(オールジョイン)は、Qualcommが開発したIoT用のP2Pネットワーク仕様であり、Windows 10のときにWindowsに搭載された。GitHubで公開されているソースコードを見るに、6~7年ぐらい前に開発が止まっている感じである。IoT向けの類似の仕様は複数あり、対応機器などの話を聞かないので、普及しなかったのではないかと思われる。いわゆる「ほとぼりが冷めた」ので、廃止ということか。

 「MailSlots」は、Windowsのプロセス間通信の一方式で、MS-DOSの時代からあるもの。それほど大規模に使われているとは思えない機能を、よくここまで“引っ張った”と思うが、おそらく、Windowsが内部的に利用しており、ようやく排除が完了したのであろう。

 「WebDAV」は、Windows Vistaの頃マイクロソフトがファイル共有用として注目していたプロトコルだったが、Webサービスが下火になるにつれて、注目度も下がり、今ではAPIだけが残った感じである。

 これに対して「TLS 1.0/1.1」の廃止は、セキュリティ上の問題、すでに2018年頃にRTFなどで利用が禁止されたプロトコル。代替プロトコルであるTLS 1.2が2008年に定義され、IEなどが最近まで残っていた関係もあり、Windowsでは残されたままだったようだ。

 「ARM32bitコードのUWP」だが、まずARM版Windowsは現状Qualcommのプロセッサしか対応しておらず、該当機種はすべてARMの64bitコードに対応したWindowsが利用可能になった。そもそもARM 32bitコードは、Windows Mobile用に作られたバイナリ仕様でARM 32bitアーキテクチャのThumb命令セットしか利用できなかった。ARMの32bit命令と64bit命令の間には直接の互換性がなく、命令セットが完全に異なる。また、すでにARM版のVisual Studio 2022では、ARM 64bitコードの生成しかできない。

 ARM 32bitコードで作られたバイナリを残しておくと、将来のARM版Windowsでサポートしなければならなくなる。このため、早期に廃止しておき、ARM版Windowsの開発コストを低減したい、ということなのだろう。

 最近、Windowsに追加された機能であっても、事情が変われば廃止されることになる。Windows MRやCortanaは、今年導入されたCopilotのように華々しく登場したが、意外に寿命が短かった。

 反面、2007年頃に始まったOneDrive(旧SkyDrive)のように中身を変えながらも長い寿命を保つ機能、サービスもある。

 そういうわけで、いまMicrosoftが強力に「推し」ているからといって、サービスの寿命が長いとは限らない。さて、来年は何が廃止になるのだろう。

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