業務を変えるkintoneユーザー事例 第211回
kintone AWARD 2023レポート後編 今年のグランプリ企業は!?
コロナ事務をkintoneで受け止めた北九州市役所 応病与薬で40万枚ペーパーレス化のモリビ
2023年12月19日 09時00分更新
現場リソースを削り、痛みに耐えて、kintoneによる“改善テント”で効率化を実現
最後のプレゼンは、関東・甲信越地区代表のモリビ 植田剛士氏が登壇。植田氏はモリビの経営企画室で業務改善に取り組むかたわら、長野県山形村にある浄土宗のお寺で副住職を務めている。kintone hiveと同様、僧侶の格好で登場した(関連記事:社内浸透には応病与薬 「とりあえずやってみる」で始めたモリビのkintone活用)。
モリビは再生をテーマに不動産管理やリフォーム、空き家活用などを手掛ける不動産会社だ。
「僕たちもご多分に漏れず課題だらけの会社でした。紙、FAX、ハンコにまみれておりまして、なんと情シスがいません。ITを作れる人はおろか、使える人もいない状態です。ミスを恐れてダブルチェック、トリプルチェック、クアドラブルチェックみたいな感じに、やらなくていいことを全力でやって疲れきっていました」(植田氏)
kintoneは、社長がアンケートを取りたいと「うっかり」導入したのが始まりだったという。植田氏はせっかくkintoneがあるならちょっとやってみようと、ペーパーレス化に着手。基本機能で、情報を誰でも見られるようにしただけだったが、すごく感動したそうだ。そのうち、楽しくなってきて、アプリを作りまくることになる。
「僕はあっちの部署へ行き、こっちの部署行き、業務改善行脚に回ってました。そんなことを続けていたら、会社の中で私は独裁者と呼ばれるようになっていました。ちょっと仕切り直さないとと、お釈迦様に相談をしました。そうしたら、応病与薬という言葉を忘れていないかと言ってくれました」(植田氏)
応病与薬は病に応じて薬を与えるという仏教の言葉で、その人に合うやり方をすることだという。こうして植田氏はリスタートを切った。
再度ペーパーレス化にチャレンジしたが、取引先の関係でFAXが必要なので富士フイルムの「DocuWorks」を導入。FAXはデータで受信し、kintoneの中に入れ、本社でも営業所でもいつでも誰でもチェックできるようにした。
すると、何と年間42万3840枚もの紙を利用していたことが判明。そして、そのうちの95%を削減し、浮いた経費はITツールやデュアルディスプレイなどの設備に投資した。
ポータルサイトはスマホからの使い勝手に全振りして構築している。営業担当が外出先から見る際に、アプリを開いてすぐ、必要な項目が全部見られないと使ってもらえないと考えたからだ。実際、スマホのkintoneアプリ画面が披露されたが、すっきりと整理されていて使いやすそうだった。
「受発注アプリにはkintoneとトヨクモの三種の神器(フォームブリッジ・プリントクリエイター・kViewer)を使っています。不動産屋さんがFAXじゃなくてもいいというので、システムに。取引先がフォームブリッジから案件の発注をすると、kintoneに登録され、僕たちはそれを見て仕事をして、その結果もkintoneに入れるようにしました」(植田氏)
これまで電話で進捗を管理していたが、今では必要に応じてkViewerを見て確認。報告書もkViewerを介し、プリントクリエイターからダウンロードできるようにしている。モリビ側も楽になったが、取引先からも、発注業務などが楽にったと言われたそう。kintoneによる改善が会社の枠を飛び出したのだ。
基本機能で作った「ご意見BOX」アプリでは、会社のシステムに対して要望や意見を書き込んでもらうのだが、これまで気づきもしなかったアイディアがヒントが寄せられるようになった。kintoneは1人より2人、関わる人はたくさんいた方が嬉しいと植田氏。
「僕は業務改善をマンモスの狩りに例えています。社員はチームを組んでで利益を取るためにマンモスの狩りに出ますが、これをいつまでやっててもいけません。マンモスは他のチームも狙いに来るからです。そこで、改善のテントを作り、武器を製造します。速く倒せて、綺麗に獲れる。効率が上がって、ミスが減り、たくさん倒せる。生産性があがるわけです。これがkintoneを使った業務改善だと思います」(植田氏)
この改善のテントをどこから出すかがポイントだと植田氏。一般的な企業では、潤沢な予算はなく、現場で回すしかない。そうすると、現場からは「マンモスの狩りをしないでテントにこもって何やってんだ」と言われかねない。しかし、武器ができて現場に持たせられれば、人数を増やさずにパワーアップできる。限りある中で耐え凌ぎ、痛みも伴うが、これが業務改善だと植田氏は語る。
「kintoneは作りながら考えられるっていうのがいいですね。1年考えてからスタートするよりも、5分考えてスタートして、トライアンドエラーを繰り返した方が、目指すゴールには断然早く辿り着きます。何がダメかなんてやってみなきゃわからないし、どこに問題があるかわからないんです。すごくない僕たちがすごくないアプリを1つ作ってみればいいんです。それがもしかしたらすごい効果を生むかもしれません」と植田氏は締めた。
以上が、kintone AWARD 2023のレポートとなる。すべてのプレゼン終了後に投票が行われ、審査結果が発表された。kintone AWARD 2023グランプリを獲得したのは……ラストに登壇したモリビの植田氏だった。
「僕は去年のkintone Awardを見て、ここ立ってみたいなって思ったら、今日こうなりました」と植田氏は語った。
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