東京大学を含む国際共同研究チームは、宇宙望遠鏡と地上望遠鏡の連携した観測により、太陽系から約100光年離れた恒星「HD 110067」の周りで6つのトランジット惑星を発見した。研究チームによると、この6つの惑星は、全ての隣り合う惑星の公転周期が2:3や3:4という簡単な整数比(「尽数関係」と呼ぶ)となっており、惑星が原始惑星系円盤の中でどのように形成し、移動してきたかを考えるうえで貴重な手がかりになるとしている。
東京大学を含む国際共同研究チームは、宇宙望遠鏡と地上望遠鏡の連携した観測により、太陽系から約100光年離れた恒星「HD 110067」の周りで6つのトランジット惑星を発見した。研究チームによると、この6つの惑星は、全ての隣り合う惑星の公転周期が2:3や3:4という簡単な整数比(「尽数関係」と呼ぶ)となっており、惑星が原始惑星系円盤の中でどのように形成し、移動してきたかを考えるうえで貴重な手がかりになるとしている。 今回の発見は、米国航空宇宙局(NASA)のトランジット惑星探索衛星「TESS」、欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡「CHEOPS」、東京大学などの「MuSCATチーム」が開発した多色同時撮像カメラ(MuSCAT2、MuSCAT3)を含めた複数の地上望遠鏡が連携した観測によって実現した。トランジット惑星とは、系外惑星がその主星の手前を通過する時、主星の明るさが見かけ上わずかに暗くなる「トランジット」現象を起こす軌道を持つ惑星のことである。 太陽の約8割の質量と半径を持つ恒星「HD 110067」は、かみのけ座の方向、約100光年の距離にある。同恒星に対し、TESSが2020年3~4月と2022年2~3月に約27日ずつ明るさの変化をモニタリングしたところ、トランジットらしき減光をいくつも発見した。そこで研究チームは、考察に基づく仮説と、ほかの機器などによる観測に基づいて、この恒星の周りにいくつのトランジット惑星があるのか、それぞれの惑星の周期は何日なのかを検証。HD 110067には全ての隣り合う公転周期が尽数関係を持つ6つのトランジット惑星が存在していると結論付けた。 2023年までに5000個を超える系外惑星が発見されているが、HD 110067のように3つ以上の惑星が尽数関係を持つ惑星系は両手で数えられるほどしか発見されていない。明るい恒星であるHD 110067を公転するトランジット惑星は大気の観測に適しており、尽数関係にある惑星が原始惑星系円盤の中でどのように大気を獲得したか、恒星からの光が惑星大気の散逸や化学進化にどのような影響を与えたかなどの研究の進展に寄与することが期待される。 研究論文は、英国科学誌ネイチャー(Nature)に、2023年11月29日付けで掲載された。(中條)