グリーントランスフォーメーション(GX)とは?取り組む必要性やメリットを事例とともに紹介
本記事はユーザックシステムが提供する「DX GO 日本企業にデジトラを!」に掲載された「グリーントランスフォーメーション(GX)とは?取り組む必要性やメリットを事例とともに紹介」を再編集したものです。
グリーントランスフォーメーション(GX)という言葉を耳にする機会が増えました。GXは脱炭素と経済成長を同時に実現させるための取り組みで、ヨーロッパをはじめ世界各国で推進されています。
日本でも、2022年にGX実行会議が設置され、官民ともにさまざまな取り組みが始まっています。環境問題への対応は企業の社会的責任であり、積極的にGXに取り組む必要があります。また、それと同時にGXに取り組むことは、企業にとってもメリットもあります。
ここでは、GXの概要と日本の取り組み、企業がGXに取り組む必要性とメリットを事例を交えて紹介します。
グリーントランスフォーメーション(GX)とは
グリーントランスフォーメーションは、GX(Green Transformation)と略されます。企業の経済活動において、脱炭素と経済活性化を同時に実現するよう取り組み、経済や社会の仕組みを変革しながら持続可能な成長を目指すことをいいます。
GXの目的は、脱炭素やカーボンニュートラルを実現することにより、地球温暖化による環境問題を解決することです。具体的には、石油・石炭などの化石エネルギーへの依存を減らし、太陽光発電、風力発電などのクリーンエネルギーへの移行や、温室効果ガスの削減に取り組み、同時に経済成長や雇用・所得の拡大を実現します。
現在は、持続可能な未来の実現へ向けて、規模にかかわらず、あらゆる企業にGXの推進が求められています。
GX推進が求められる背景
GX推進が求められている背景には、次のような社会の動きがあります。
・温暖化の進行による環境問題、異常気象
世界各国で、地球温暖化が原因と考えられる洪水・干ばつ・竜巻・山火事といった異常気象や自然災害が多発しています。これを止めるため、温暖化を抑える必要があります。
・国際社会のカーボンニュートラルへの転換
温暖化を止めるためには、温室効果ガス、特に二酸化炭素の排出量を抑えなくてはなりません。そのためにはカーボンニュートラルの実現が必要で、ヨーロッパ諸国、中国、アメリカなど各国が行動を始めています。
・日本もカーボンニュートラルにシフトしつつある
政府はGXの推進を、「GX を加速させることは、エネルギーの安定供給につながるとともに、我が国経済を再び成長軌道へと戻す起爆剤としての可能性も秘めている」と位置づけています。
引用元:GX 実現に向けた基本方針 ~今後 10 年を見据えたロードマップ~|内閣官房
そのうえで、カーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言しました。GXは現在、政府の重点投資分野のひとつになっています。
・ESG投資の拡大
世界的にESG投資が拡大しています。ESG投資とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の3つの要素で企業を評価し、投資するかどうかを決めるという投資方法です。ESGのEと深く関係してくるGXにも関心が寄せられています。
GXとDXの関係
GXの実現には、DX(デジタルトランスフォーメーション)が深く関連しています。
DXにより、企業全体にデジタル技術の導入による業務効率化が進みます。具体的には、節電、ペーパーレス化、新設備の導入などが行われますが、これらは温室効果ガスの排出を抑える効果が期待できるものです。
したがって、DXの実現なくしてGXの実現はないともいえます。
なお、経済産業省が発行する「デジタルガバナンス・コード2.0」でも、GXを効果的に、迅速に推進していくためには、DXと一体的に取り組んでいくことが望ましいと言及しています。
「デジタルガバナンス・コード2.0」について詳しくは、「デジタルガバナンス・コードとは?2.0の改訂内容も紹介」をご覧ください。また、DXとは何かをあらためて確認したい方は、「【徹底解説】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?必要性から成功事例まで」をご覧ください。
日本政府のGXへの取り組み
政府は、GX推進のため次のような取り組みを行っています。
GX実行会議の設置
GXを実行するための会議で、政府が2022年に設置しました。具体的には、GXを実現するための施策の検討や、定期的な進捗状況の評価と見直しなどを行います。
GX実行会議は2023年2月に閣議決定を行い、「GX実現に向けた基本方針」を発表しました。基本方針では、主に次のような取り組みが提示されています。
・エネルギー安定供給の確保を大前提としたGXの取組
・徹底した省エネルギーの推進
・再生可能エネルギーの主力電源化
・原子力の活用
・その他の重要事項(水素・アンモニアの生産・カーボンニュートラルの実現に向けた電力・ガス市場の整備など)
・「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行
・GX経済移行債を活用した先行投資支援
・カーボンプライシングによる GX 投資先行インセンティブ
・新たな金融手法の活用
・国際戦略・公正な移行・中小企業等のGX
詳しい内容は、経済産業省の資料でご確認ください。
参考:「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定されました|経済産業省
GXリーグの設立
GXリーグは、2022年に経済産業省が設立しました。GXリーグ公式Webサイトでは、GXリーグのことを「2050年カーボンニュートラル実現と社会変革を見据えて、GXヘの挑戦を行い、現在および未来社会における持続的な成長実現を目指す企業が同様の取組を行う企業群を官・学と共に協働する場」としています。
GX実現に向け、企業が政府や大学、研究機関などと連携するGXリーグでは、参画企業に主に次のような場が提供されています。
・自主的な排出量取引の場
・市場ルール形成の場
・ビジネス機会の創造・共有の場
・参画企業間の交流の場
また、参画企業には次のような取り組みが求められています。
・自社の排出量を削減するための取り組み
・サプライチェーン全体での排出量削減に向けた取り組み
・製品・サービスを通じ、消費市場のグリーン化に向けた取り組み
企業がGXに取り組むメリット
GXに取り組む企業にはある程度の負担がかかります。しかし、取り組むことによって次のようなメリットも得られます。
企業イメージの向上
GXを推進することで「環境問題に配慮している企業」という良いイメージが定着します。これによって、企業を新しい角度からブランディングすることが可能です。その結果、企業イメージが向上して競争力を強化できます。
人材の確保
企業イメージの向上により、若い世代からも評価が上がり、人材確保につながることが期待できます。また、環境問題に対する専門知識やスキルを持つ人材が企業に興味を持ち、応募につながるかもしれません。
コスト削減
GXの推進により、化石エネルギーの節約と再生可能エネルギーの活用などに取り組むことになるでしょう。これはエネルギーコストの削減につながります。
予算増加が期待できる
政府もGXを積極的に推進していることから、GXの推進にかかわる補助金や助成金も充実してきました。GXを推進することで、これらの補助金や助成金の交付が期待でき、予算増加につながります。
企業のGX取り組み事例
実際の企業の取り組み事例を紹介します。
トヨタ自動車
トヨタ自動車は、2015年に「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表しています。そのなかで「ライフサイクルCO2ゼロチャレンジ」「工場CO2ゼロチャレンジ」などのさまざまな取り組みを提示しており、全社で二酸化炭素排出量の削減を目指しています。
参考:トヨタ自動車、「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表 | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト
NTT
NTTは、2020年に策定した「環境エネルギービジョン」にて、2030年までに再生可能エネルギーの利用率を30%以上に引き上げることを宣言しました。さらに、2021年に制定した「NTT Green Innovation toward 2040」では、2030年度に向けた目標として、グループ全体で温室効果ガス排出量80%削減(2013年度比)を掲げています。
参考:環境エネルギービジョン | 環境マネジメント | NTTグループの環境活動 | NTT
参考:新たな環境エネルギービジョン「NTT Green Innovation toward 2040」 | ニュースリリース | NTT
テスラ
テスラは、EV(電気自動車)の開発と販売に特化した自動車メーカーです。クリーンエネルギーの普及を理念に、電気自動車のみならず、太陽光発電による余剰電力から蓄電する家庭用蓄電池や、総合的な再生可能エネルギー ソリューションの提供などを行っています。
参考:テスラ – 電気自動車、ソーラー、クリーンエネルギー | テスラ ジャパン
Apple
Appleは、世界各地にある同社で使用する電力のすべてを再生可能エネルギーで調達したとしています。2030年までには、サプライチェーンも含めて二酸化炭素排出量を実質ゼロにすると掲げており、サプライヤーへも協力要請を継続中です。
参考:Apple、2030年までの脱炭素達成へ前進 クリーン電力を9ギガワット増やし、 サプライヤーの取り組みを2倍に | Apple (日本)
Amazon
Amazonは2019年に、他社と合同で気候変動イニシアチブ「The Climate Pledge(気候変動対策に関する誓約)」設立に調印しました。
また、2025年までには自社の使用する電力をすべて再生可能エネルギー由来にし、2040年までには温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指しています。
参考:The Climate Pledge(気候変動対策に関する誓約)| About Amazon Japan
DXをスモールスタートさせそのままGXも推進していこう
地球温暖化への対策は、すべての企業に求められるものです。あらゆる企業が社会的責任として取り組むべきものですが、GX推進を通じて自社のブランドイメージの向上やコスト削減などのメリットにもつながります。
DXへの取り組みも思うようにできていないのに、さらにGXといわれても難しいと考える企業もあるかもしれません。
しかし、紹介したようにGXとDXには深い関係があり、DXを推進することが、GXにもつながります。大がかりな計画の前に、DX をスモールスタートすることは有効です。「社内DXとは?推進が必要な理由や成功させるポイントを紹介」を参考に、業務のペーパーレス化や効率化などから始めてみてはいかがでしょうか。できるところからDXを推進していけば、それがGX実現への取り組みにもなっていきます。