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グループ各社が開発/提供するGXソリューションの共通ブランド

「GX分野で変革を起こす」NTTグループが「NTT G×Inno」ブランド立ち上げ

2023年12月22日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 NTTグループは2023年12月20日、GX(グリーントランスフォーメーション)ソリューションの共通ブランドとして「NTT G×Inno(エヌティティ ジーノ)」を立ち上げると発表した。同ブランドのもとで、NTTグループのアセットを活用し、コンサルティングや可視化、省エネ、再エネ、CO2吸収、行動変容といったGXソリューションを、発電事業者やアグリゲーター、小売電気事業者、法人、自治体、個人に対して提供していく。

 今後、NTTグループ内でGXソリューションに関連するコンサルタントやSE、SI人材を拡充するとともに、多様なGXパートナーとの連携も推進する。すでにNTTアノードエナジーではエネルギー関連事業で約6000億円の売上高があり、NTTデータやNTTコムウェアにおけるGXソリューション事業の販売などを加えて、2030年度には1兆円超の事業規模を目指す。

GXソリューションの共通ブランド「NTT G×Inno(エヌティティ ジーノ)」全体像

同日には記者発表会を開催した

「GX×Innovation」を意味するブランド名、社会のCN化と経済成長を両立

 G×Innoというブランド名は「GX×Innovation」を意味する。「産業の活動も、地域の生活も、自然環境と共に発展できる世界へ」というブランドビジョンを打ち出し、NTTグループとパートナーの技術/ソリューションを通じて、社会のカーボンニュートラル(CN)化と経済成長の両立を実現することをミッションとしている。

 具体的なバリューとしては、「多様な事業活動や地域社会の持続的な成長と発展への貢献」「NTTグループ自身のカーボンニュートラルへの挑戦」「顧客やパートナーとのGXイノベーションの協創」「エネルギーの地産地消実現による安心安全な社会インフラの構築」「社会全体の行動変容の実現」の5点を挙げている。

 NTTグループでは、2023年5月発表の新中期経営戦略において「循環型社会の実現」を目標に、GXソリューションの実現、循環型ビジネスの創造、ネットゼロに向けた取り組みを掲げている。NTT 技術企画部門 統括部長の大許賢一氏は「政府が打ち出した2050年のカーボンニュートラル宣言の実現に貢献するため、エネルギーを起点としたソリューションを強化し、社会へのソリューション提供を通じて、GX分野で変革を起こしていく」と述べた。

グリーン発電事業者向けの統合プラットフォームを外販

 今回、NTT G×Innoブランドの立ち上げに伴って、現時点でNTTグループ10社が提供するGXソリューション46製品がNTT G×Inno専用サイトに掲載された。今後も対象製品を増やしていく方針で、対象製品にはグループ会社の製品ブランドとともにNTT G×Innoブランドが併記されることになる。

 再生可能エネルギー(再エネ)発電事業を手がけるNTTアノードエナジーでは、多様な設備や業務管理を進めることで、NTTグループ自らのGXを支援している。NTTコムウェアと協創したグリーン発電事業統合プラットフォーム「Smart Data Fusion」を2023年4月から導入しており、太陽光や風力発電のデータを統合的に管理、AIを活用した分析も進めてきた。

 今回はこのSmart Data Fusionを、NTTコムウェアから国内の再エネ発電事業者等に対して販売/提供開始している。2025年度までに、NTTグループ内外を含む5社への導入を目指している。

 「NTTアノードエナジーが持つ発電所の運営ノウハウをもとにダッシュボードを開発するとともに、保有しているデータを活用したモデルを実装。再生可能エネルギーの発電事業に関して、データドリブン型の意思決定が可能な環境を実現している。発電データに加えて、財務データも統合管理が可能になっている」(NTTコムウェア エンタープライズソリューション事業部 部門長の田中利亨氏)

グリーン発電事業統合プラットフォーム「Smart Data Fusion」の提供イメージと特徴

 Smart Data Fusionの活用によって、発電運営管理におけるチェック業務の作業量を70%程度削減できる(試算)ほか、高精度な発電量予測などの推定モデルを活用することで早期に設備の異常検知が可能になり、発電ロスを防ぎ収益性向上に寄与できるとしている。

 「日本では、再エネ発電所の展開に適した土地が少ない。そのため、電源種別が多く、中小規模の発電所が分散して設置され、設備が異なったり、気象条件が異なったりといった状況が生まれており、これを統合管理することが必要だ。NTTコムウェアのグリーン発電事業統合プラットフォームでは、さまざまな条件を持つ発電所のデータを集約、統合でき、発電所ごとの条件にあわせたAIによる分析も可能である。経営、運営管理、保守・メンテナンスといった目的に応じてデータを活用できる」(NTTコムウェア 田中氏)

再エネアグリゲーション事業のための流通プラットフォームを構築

 NTTアノードエナジーではさらに、アグリゲーション事業の推進に向けて「再生可能エネルギーアグリゲーション」「調整力アグリゲーション」「需要アグリゲーション」に取り組むとともに、それらを支える高度な制御を担う基盤「エネルギー流通プラットフォーム」の構築を開始する。

 NTTアノードエナジー スマートエネルギー本部 部長の小野健太郎氏は、再エネ電源には「発電量の変動、不安定さ」や「発電所が小規模で、地理分散していること」といった課題があり、「出力を高精度で予測し、蓄電池や火力発電と組み合わせて需要/供給のギャップを調整することが重要」だと説明する。今回のエネルギー流通プラットフォームを通じて、そうした課題の解消を目指す。

 「エネルギー流通プラットフォームでは、普及拡大が見込まれる蓄電池と需要家側のエネルギーリソースを統合的に制御し、調整力となることを目指している。発電、送配電、小売の領域をシームレスに取り組むアグリゲーション事業を推進する」(NTTアノードエナジー 小野氏)

 アグリゲーション事業では、非FITの再エネ発電所を対象に発電量の予測を行うとともに、複数の発電所をまとめることで出力を安定化させる。NTTアノードエナジーが、アグリゲーションコーディネーターの立場で電力取引を行うことになる。発電量の予測に関しては、AIを活用した予測エンジンの開発に着手していることも明らかにした。また、系統蓄電池を活用した電力の調整をタイムリーに実現したり、EVや家庭用蓄電池などの稼働状況を見ながら、充電や放電の制御も行ったりする。今後、幅広いパートナーとの連携を図る考えで、システムを外販する可能性も示唆した。

アグリゲーション事業推進に向けてエネルギー流通プラットフォームの構築を開始した

NTTグループ、サプライヤーへのGHG排出量可視化プラットフォーム導入を推進

 NTTデータは、同社が開発した温室効果ガス(GHG)排出量可視化プラットフォーム「C-Turtle(シータートル)」を、総排出量配分方式を採用しているNTTグループ各社に導入することを発表した。2024年2月から導入を開始する。

 C-Turtleの導入により、サプライヤーにおけるGHG削減努力(Scope3)までを反映したGHG排出量の算定が実現する。さらに、GHG削減活動に取り組むサプライヤーを段階的に増やし、1000社のサプライヤーを対象にC-Turtleの導入を目指す。

温室効果ガス(GHG)排出量可視化プラットフォーム「C-Turtle」の概要。サプライチェーン全体のGHG排出量算定を可能にする

C-TurtleをNTTグループ各社に導入していくほか、サプライヤーにも拡大してScope3のGHG排出量削減を目指す

 NTTデータ 法人C&M事業本部の松栄純子部長は、総排出量配分方式のメリットを次のように説明した。

 「GHGプロトコルのScope3では、自社以外(のサプライヤー)で排出される温室効果ガスを算定しなくてはならない。だが、データベースの排出原単位を用いた可視化では、活動量を減らさない限り排出量を削減することができないという課題がある。それに対して総排出量配分方式は、何を購入したかではなく『誰から購入したか』を評価するものであり、社会全体に脱炭素の取り組みを波及させていく計算方式だと言える。排出量を削減すると、削減努力が取引額を通じて下流企業へ取り込まれるため、自社だけでなく、社会全体へと波及し、社会全体としての脱炭素につながる」(NTTデータ 松栄氏)

 総排出量配分方式に対応したC-Turtleは、環境省が推奨する排出原単位の一次データを利用することで、削減できるScope3の算定を実現している。サプライヤー別排出原単位の信頼性を担保するためにCDPのグローバルデータも利用でき、「社会全体の脱炭素への行動変容を生み出すためのプラットフォームを目指している」とした。なお、CDPデータの使用許諾契約を持つのは、日本国内ではNTTデータだけだという。

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