さらに調教してみる
ここまでで基本は完成だが、ここからさらに細かく自分好みに調教(カスタマイズ)してみることにする。
My GPTs画面に戻ると先ほど作成した「冴子先生」が表示されているので「Edit」をクリック。
左側のGPT Builder画面の上部にあるセレクターを「Create」から「Configure」に変えると、対話形式ではなく直接設定を書き込むことで細かく変更できるようになっている。
まずは「Description(説明)」を英語から日本語に変更しよう。
すると、最初の説明文が日本語で表示されるようになった。
次に「Instruction(指示)」の部分。
「英単語や英熟語を、例文も含めて日本語で詳しく説明しながら教える専門家の冴子先生です。英単語や英熟語のニュアンスや正しい使い方を理解していただくことが私の目標です。日本語で丁寧に説明し、わかりやすく理解できるようにします。また、ご不明な点があれば、その都度お伺いし、的確で親切な対応を心がけています。フレンドリーで忍耐強く、楽しく学べることを目指します」
と、書いてある。最初に入力したプロンプト「英単語やフレーズを入力すると、詳しい解説を日本語で例文と共に教えてくれる英語学習を手伝ってくれる先生を作りたいです」から、勝手に類推してこの指示文が作られたようだ。す、すごい。
ここでは下記の文章を追加してみた。英語と日本語が混在して大丈夫かわからなかったが、まあ大丈夫でしょう。
語尾は「〜だわ。」、「〜よ。」のような女性言葉を心がけます
画面右上から今度は「Save」ではなく「Update」をクリックして「Confirm」
おお、ばっちり日本語で女教師っぽい口調でしゃべっている!!これだよ、欲しかったのは!!
想定質問を日本語に変えて調教はひとまず終了。
今回は利用しなかったが「Knowledge」では、テキストファイルなどをアップロードしてGPTに追加知識を与えることができる。著名人の伝記や語録をアップロードすればその人を模したGPTを、マニュアルをアップロードすればその製品に詳しいGPTを作れるということだ。他にも工夫すればいろいろ楽しいことができそうだ。
「Capabilities」では、「Web Browsing」「DALL-E」「Code Interpreter」にチェックを入れることでそれぞれの機能をGPTに持たせることができる。
「Actions」では、外部APIやデータベースなどを扱うことができるようだ。この部分はさすがにコーディングが必要になってくるが、そのぶん自由度も飛躍的に上がりそうだ。
一般公開してみる。もうすぐ収益化も可能に
まだまだ調教を進めたいところだが、GPTsは一般公開して他の人に使ってもらうことができるのがいいところ。「Update」ボタンを押し、公開先を「Only me」から「Only People with link」か「Public」に変更して「Confirm」をクリックする。
すると「Published!」と表示され、人に伝えるためのURLが表示される。
https://chat.openai.com/g/g-2ua6Ed2ER-hu-zi-xian-shengこれが冴子先生のURLだ。
なお、公開先をPublicにすると、「This GPT may appear in the GPT Store(coming soon)」という気になる文字が表示される。
これは、将来的に自分が作ったカスタムGPTが「GPT Store」と呼ばれる検証済みのカスタムGPTを集めた場所に掲載される可能性があるということだ。
GPT Storeのオープンは11月末、ストアに掲載されたGPTは検索可能になる。さらに今後数ヵ月のうちに利用した人数に応じて収入を得ることができるようになることも予告されている。
つまり、自分が作成したカスタムGPTが収益化できるのだ。これはかなり革命的なことではないだろうか。
GPTの作成および収益化は法人・個人どちらも可能だ。実際、GPTsが発表されてから1週間で数えきれないほどのカスタムGPTが発表されている。
今はまだXやブログなどに分散しているが、GPT Storeがオープンすれば、誰もが好みのGPTを探してすぐに利用できるようになり、ヒット作の作者はかなりの収入を得られるようになるだろう。
懸念点も残るが(近い)将来に期待
ChatGPTを巡る新たなエコシステムになっていきそうなGPTsおよびGPT Storeだが、懸念点もある。
まずは名称の問題だ。英語圏では「単数/複数」を常に強く意識するため、「GPT」の複数形である「GPTs」という名称が「複数のGPTたち」を意味していることを比較的容易にイメージできる。
だが、日本では単数/複数をそれほど意識しないので、「GPT」と「GPTs」を明確に区別することが難しい。
実際多くの記事やブログでは「カスタムGPT」「オリジナルGPT」「マイGPT」といった、公式には使われていない名称を用いている。
次にプライバシーの問題だ。先ほど説明したようにGPT BuilderではGPTにテキストファイルやPDFファイルなどをアップロードして、その知識を吸収させることができるが、現状第三者に権利があるデータをアップロードすることも可能になっている。個人で使うだけなら問題ないが、収益化されるとなると話しは変わってくるだろう。
また、今はまだベータなのでいずれ修正されるだろうが、現状カスタムGPTsのキモである「Instructions」の内容を聞き出して類似のGPTsを作成する「インジェクション」と呼ばれる手法が(対策方法も出回っているようだが)可能であるという致命的な弱点もある。
また、GPTsやAll Toolsの影響で、これまでChatGPTに機能を追加する主要な方法であったプラグインの存在価値が大きく揺らいでいる。実際、外部サイト閲覧、PDF分析、データアナリシスに関するプラグインは現在すべて必要なくなっていると言える。
おそらく近い将来プラグインは廃止され、GPT Storeに統合されるだろうが、プラグインを開発した(している)会社にとっては寝耳に水だろう。
11月15日には、マイクロソフトがGPTsとコンセプトを同じくする「Copilot Studio」を発表し、オリジナルのCopilotを作れるようになった。両社は強い協力関係にあるため、両製品が競合してしまうことはないだろうが、ユーザーとしては将来的にどのような形に落ち着くのか、まだ見えてこない。
とはいえ、これまで必死になって効果的なプロンプトを探していたChatGPTが、適切なGPTを選ぶことによって革命的に使いやすくなることは間違いない。
今はまだPlusユーザーしかその恩恵を得ることはできないが、GPTsが無料ユーザーにも使えるようになったときが真の革命のスタートかもしれない。それがGPTになるかCopilotになるかもまだ不鮮明ではあるのだが……。
田口和裕(たぐちかずひろ)
1969年生まれ。ウェブサイト制作会社から2003年に独立。雑誌、書籍、ウェブサイト等を中心に、ソーシャルメディア、クラウドサービス、スマートフォンなどのコンシューマー向け記事や、企業向けアプリケーションの導入事例といったエンタープライズ系記事など、IT全般を対象に幅広く執筆。2019年にはタイのチェンマイに本格移住。
新刊:7月19日発売「ChatGPT快速仕事術」、好評発売中:https://amzn.to/3r6ASOv
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