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生成AIによるピアワーカーの出現、デジタルツインエンタープライズの実現など、将来像を説明

現在はまだ“生成AIの始まり”にすぎない ― アクセンチュア

2023年11月06日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 アクセンチュアは2023年11月2日、生成AIの将来像に関する記者向けの勉強会を開催した。アクセンチュア 執行役員 ビジネスコンサルティング本部AIグループ日本統括 AIセンター長の保科学世氏らが出席し、グローバル調査に基づく企業の生成AI活用や投資の動向、同社自身での社内活用ユースケース、将来的に実現が見込まれる「AIピアワーカー」「デジタルツインエンタープライズ」などを紹介した。

アクセンチュアでは、企業における生成AI活用の加速によって「デジタルツインエンタープライズ」が実現すると考えている

アクセンチュア 執行役員 ビジネスコンサルティング本部AIグループ日本統括 AIセンター長の保科学世氏、同社 ビジネス コンサルティング本部AIグループマネジング・ディレクターの堺勝信氏

生成AIのインパクトはまだ「始まり」にすぎない

 保科氏はまず「ChatGPTが登場してから、ちょうど1年が経過した。だが、このタイミングは“生成AIの始まり”にすぎない」と強調する。「(アクセンチュアのグローバル調査の)結果からも、生成AIへの投資はこれからが本番であることがわかる」(保科氏)。

 アクセンチュアが9月に行ったグローバル調査「Accenture Pulse of Change」によると、AIを「投資の最優先事項」だと回答した経営幹部は、グローバルで75%に及ぶ(日本は77%)。「各国の経営幹部のほぼ全員が、『生成AIは自社と業界に変革をもたらす』 と回答している」(保科氏)。現在、AIに多額の投資を開始している企業は31%(日本は33%)にとどまるが、今後2年間で「AIへの投資をより拡大する予定」とする経営者は99%に達する。また、94%の経営者(日本は95%)が「生成AIを自社システムに組み入れることで、市場シェアを拡大できる」と考えている。

 「生成AIがさまざまな業務システムに組み込まれたり、これまでとは次元が異なる形で人を支えるパートナーとしての役割を果たしたりといったことが起きている。そして、企業活動をデジタル上で再現する『デジタルツインエンタープライズ』が、生成AIの登場によって実現されようとしている」(保科氏)

アクセンチュアによる最新調査の結果。ほぼすえての経営者が自社ビジネスに対する生成AIの影響は大きいと考えており、多くがデータやAIに対するIT投資を加速させる方針

社員を支援するAIピアワーカー、会議で「人を超えるアイデア出し」も

 アクセンチュアは、2023年11月から一般提供が開始された「Microsoft 365 Copilot」を、世界で最初にアクセスできる企業の1社として先行試験導入した。その具体的なユースケースについても紹介した。

 Microsoft 365 Copilotは、たとえば参加できなかったTeams会議のサマリを確認したり、英語の長いメールを日本語に翻訳したうえで要約したものを読んだりといった使い方がなされている。さらに、プレゼンテーション資料の作成、Excelでの簡単なデータ分析などに活用の幅が広がっているという。

 また同社では、社員の仕事を生成AIのパートナーがサポートする「ピアワーカープラットフォーム」を独自に構築している。その日の予定の確認から議事録やレポートの作成、社内システムへのデータ登録まで、幅広い業務をサポートしてくれるという。

 「プロンプトエンジニアリングチームによって用意された効果的なプロンプトを共有することができ、業務効率化やコミュニケーションおよびクリエイティブの強化、プログラミングの生成など、やりたいことを選択するだけで、作業が行える」(アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部AIグループマネジング・ディレクターの堺勝信氏)

生成AIのピアワーカーが社員の幅広い業務をサポートする仕組みが構築されている

 このピアワーカープラットフォームでは、アクセンチュアの知見を学習したAI(ブレインバディ)が、会議で意見を述べることも始まっているという。出席した生成AIが議論の内容をまとめながら、それを補足するようなかたちでアイデア出しを行うというものだ。

 「アクセンチュアの過去の事例を引用したり、業界動向を理解したうえでの提案を行ったりするため、最近では人を超えるアイデアも出し始めている。生成AIの提案に対して、人が知恵を加えて内容を発展させている。さらに、この内容をふたたび生成AIが学習してより進化させるようなサイクルも生まれている。技術の可能性を感じる事例のひとつだ」(保科氏)

 同社では生成AI活用に適した業種、業務についての調査も行っており、なかでもバックオフィスやセールスでは利用の効果があると検証済みだという。生成AIが顧客の役割を演じ、セールス担当者がロールプレイングを行って学習するような使い方もできる。

「保険業界における業務効率化の課題」に関する議論にAIが参加、アイデア出しを行う

生成AIにより実現する「デジタルツインエンタープライズ」とは

 前出の保科氏の発言にもあったとおり、生成AIによって「デジタルツインエンタープライズ」も実現する。従来は部分的なデジタルツインに限られていたが、生成AIが経営者と業務システム、株主や顧客の声を柔軟につなぐことで、経営者自身による確認や指示を可能にするという。

 アクセンチュアでは、経営者が直接見て、対話できる「AI Poweredマネジメントコックピット」や、IR部門を支援する仕組みとして、株主総会における想定問答をAIが生成し、回答の根拠となった参照データも表示するツールを提供している。

 「生成AIがさまざまなステイクホルダーになりきり、それぞれの立場の視点で判断することができる。またさまざまな業務システムをつなぎ、そこで生まれる課題をデジタルの世界で改変し、影響をシミュレーションすることができる。そして、生成AIが経営者と対話をしながら、経営を支援する仕組みが構築されつつある段階にきている」(保科氏)

生成AIによって「デジタルツインエンタープライズ」も実現すると語る

アクセンチュアではすでに複数のツールを提供

 また、ここではアクセンチュアが2018年から提案してきた、多数のAIエンジンを統合管理する「AI HUBプラットフォーム」も効果を発揮するという。

 「AI HUBプラットフォームでは、経営者の指示に基づいていくつかのシナリオをシミュレーションし、得られた結果から最善のものを既存システムと直接連携させることで、経営者の意思を現場にダイレクトに反映できる。複数のAIエンジンから最適なものを組み合わせ、人との協調を可能にすることができる点も特徴だ」(保科氏)

経営者の指示からいくつかのシナリオをシミュレーションし、最善のものをシステムに直接連携する

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