それでは、隠された舞台裏へ!
関係者のみが通行できる秘密のゲートを通り抜けると、地下の長いトンネルが現れる。通過すると、鈴鹿サーキットのバックヤードに到着する。F1の選手、スタッフに日本人は多くない。さまざまな国から訪れた関係者が往来する、選手村のような雰囲気にも思える。
アストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラワンチームのエントランスは、チームカラーである金属調の光沢を持つブルーグリーンに彩られている。
そこにはもちろん、デジタル技術でチームに参加するコグニザントのロゴも。マイク・クラック氏は、チーム内におけるアストンマーティンとコグニザントの関係性を、次のように話してくれた。
「私たちは志を同じくする2つの組織として、非常に調和のとれた共存を楽しんでおり、うまく連携しています。コグニザントが、私たちの初のタイトルパートナーであることは重要な意味を持っていますし、私たちは、5年におよぶ長期的なパートナーシップを結んでもいます」
私たちが次に目指すのは、それぞれの専門性の有効活用です。コグニザントの専門知識のどの分野をより深く、より集中的な方法で活用できるか。また、ひとつのチームとしてコグニザントのビジネスにとって適切な技術的ショーケースになるために、どのように働くことができるか。これらを考えていくのが次のステージだと考えています」
「その内容に関して、具体的なところをもう少し教えていただけないでしょうか!」という姿勢で質問を重ねたが、それは叶わなかった。しかし、マイク・クラック氏のコメントから、チームにおける車体をつかさどるアストンマーティンと、デジタル技術をつかさどるコグニザントの、良好な関係が読み取れる。
チームのタイヤに関する責任者である松崎淳氏は、このテーマについてどう話すか?
「F1におけるタイヤは、非常にパラメーターの多い部分で、そのひとつひとつが、タイムに密接に関係しているんです。ひとつのパラメーターのわずかな差が、勝敗をわける。そして、その大量のパラメーターを、ドライバーからのフィードバック、技術者の経験、蓄積されたノウハウなどを交えつつ、総合的に調整するというのが、私たちのしてきたことです。
そして、それは、人に任せた作業になるので、どうしても時間がかかってしまいます。したがって、タイヤの部分に関しするコグニザントとの取り組みは『経験則が担っていた部分を、データを用いてどのように代替し、効率化していけるか』という意識で見ています。あまり詳細に関するお話は言えませんが、同時に、データの他の活用方法についても、検討していきたいと考えています」
両者のコメントを踏まえると、それぞれの専門分野を、5年計画で、深いレベルで一体化させるというのが、チームにおけるひとつの目標であると思える。そしてその工程は、まだ半ばであるらしい。1950年代に始まったF1と、21世紀に急速に発展したデジタルの世界が結びつきはじめていて、その深度が徐々に深まっているのが、現代のF1事情と言えるだろう。