10月15~20日までアラブ首長国連邦、ドバイで開催された「GITEX 2023」は中東で最大のIT関連イベントだ。ビジネス向けの展示会ということもあり、大手スマートフォンメーカーの出展はファーウェイのみだった。しかし、日本ではなかなか見られないスマートフォンもいくつか見つけることができた。その中から面白そうな製品をいくつか紹介しよう。
◆ロシア新興メーカー「Black Fox」の最新スマートフォン
Black Foxというロシアのメーカーのスマートフォンの代理店がGITEXに出展していた。価格を抑えた製品を得意としており、新興市場への展開を図ろうと初出展したとのことだ。ブースには詳細な製品スペックが掲載されたカタログはなく、ウェブサイト(https://blackfox-rus.com/)を参照するように言われた。ところが展示されていた製品はこれから発売になる最新モデルであり、スペックの多くは不明であった。
「B12 Fox」は性能を抑えることで低価格を実現したスマートフォンだ。通信方式は4Gのみ対応、チップセットはUNISOCの「SC9863」、メモリー4GBにストレージ64GBという構成。ディスプレーは6.8型(1640×720ドット)でフロントカメラはパンチホール式。
背面はヴィーガンレザー仕上げでカメラ周りのデザインは最近の中華系スマートフォンによく似たデザインだ。カメラは1300万画素+500万画素(おそらくマクロ)を搭載。バッテリーは6000mAhだ。
「B11 Fox Pro」はB12 Fox Proと同じ6.8型(1640×720ドット)。両者フロント側の性能はほぼ同一のようだ。ただしフロントカメラは1600万画素と画質を高めている。チップセットはUNISOC T606、メモリー8GB+ストレージ256GBと性能を高めている。
背面はこちらもヴィーガンレザー仕上げだ。デザインはvivoのカメラフォン「Xシリーズ」にソックリである。背面エッジ部分のカーブが大きく見えることからわかるように、本体の厚みは一般的なスマートフォンよりサイズアップしている。これは10000mAhの超大型バッテリーを内蔵したためだ。カメラは4800万画素+200万画素(マクロ)+8万画素(恐らく深度測定)。
さて、オマケのように展示されていたケータイはGSM(2G)対応の通話とSMS用途モデル。このデザインは2008年にモトローラが海外で発売したベゼルカバー回転式の「AURA」をインスパイアしたものと思われる。
これといった機能はないが、円形ディスプレーに投影されるアナログ時計がレトロ感を出している。このモデルもまだ未発売のため詳細スペックは不明だ。
◆パキスタンから世界を狙う「Sparx」のスマートフォン
Sparxも2021年スタートという新しいスマートフォンメーカーだ(https://sparx.pk/)。中国やインドではなくパキスタンのメーカーというのはちょっと珍しいだろうか。Black Fox同様にやはり価格勝負の製品が多く、ライバルはシャオミのRedmiやOPPO系列のrealmeなどになる。
フラッグシップモデルだという「neo7 Ultra」はチップセットにUNISOCの「T616」を採用、ディスプレーは6.52型で1612×720ドット、パンチホール型フロントカメラは1300万画素を搭載する。価格は約3万6000パキスタンルピー、日本円で2万円ほどだ。
背面はカメラ周りに余計なデザインのないスッキリした仕上げだが、これも最近の一部の中国メーカー製品に見られるデザインだ。メインカメラは5000万画素、200万画素のサブカメラも搭載(マクロまたは深度測定)、バッテリーは5000mAhとなっている。
◆手首に装着できる「腕スマホ」、実用的な産業向け製品が展示
中華系の海外通販で、腕にまきつけるベルトに3型程度のディスプレーを搭載したAndroidスマートフォンを取り付け「腕時計スマホ」として売られている製品をたまに見かけることがあるだろう。しかし、製品クオリティーは高くはなく、ネタとして買うレベルの製品が大半だ。ところが産業向けにはしっかりとした品質で手首に装着できるスマートフォンが販売されている。それがUrovoの「U2」だ(https://en.urovo.com/)。
ディスプレーは4型(800×480ドット)、チップセットはメーカー不明のオクタコア、メモリー2GBにストレージ16GBを搭載する。バッテリーは2500mAhで10時間の連続使用が可能。2021年の製品なので、当時の格安スマートフォンのスペック相当といったところだろう。
実はこの手の産業用小型端末はいくつか製品があるようだが、そのほとんどがWi-FiモデルでU2のように単体通信できる製品は多くない。この手の製品は一般的に産業用コンピューターという名称で販売されている。
U2の本来の用途は倉庫、製造、物流、輸送といったハードな環境での在庫管理などで、IP65の防水防塵に対応、1.2mからの落下試験にも合格している。タフネススマートフォンを小型にして、腕にまきつけて使えるようにしているわけだ。
コンシューマー向け製品ではないものの、作りはかなりしっかりしており、スマートウォッチの代わりとして使いたいと考える人もいるのではないだろうか?
◆POS端末でおなじみの「SUNMI」からスクエアな形状の小型スマートフォン
Androidスマートフォンにハンディープリンターを取り付けた支払い端末やPOS端末を展開しているシャオミ系列のメーカー、SUNMIから小型スマートフォン好きな人に向いている「P2 LITE SE」が販売されている(https://www.sunmi.com/)。
ディスプレーは5型で解像度はHDまたHD+のバリエーションがある。チップセットはUNISOCの「T6810」、バッテリーは3800mAhを搭載する。モバイル通信は4G対応だ。
正面から見ると小型スマートフォンのように見えるが、本体にはICカードリーダーやハンディースキャナーなどを内蔵しており、厚みはそれなりにある。とはいえ、これはこれで持つことが楽しいと思える形状かもしれない。小売店向けの製品ではあるが個人で使ってもよさそうだ。
SUNMIのプリンター付きハンディー端末を趣味で使っているマニアも多いと聞く。このP2 LITE SEを個人用途として、変わった使い方を考えるのも楽しいだろう。
◆飛行機を作っているエアバスのスマホがあった
GITEX 2023はB2B向けの様々なソリューションの展示も多い。航空機メーカーとして有名なエアバスもスタジアム管理の緊急無線システムを実際に展開している。その中で使う無線端末としてAndroidベースのスマートフォン型デバイスがエアバスブランドで提供されている。
この手のシステムには無線通信だけではなくトランシーバー型ですぐに通話できるPTT(プッシュ・トゥー・トーク)が必要とされる。エアバスが提供するスマートフォンも4G通信に加えてTETRA方式のPTTに対応、PTT用に長いアンテナを搭載している。
2つのネットワークの同時使用も可能で、たとえば緊急時には4G回線を使って周りの状況をビデオでコントロールセンターへ通信、同時にPTTで指示の通話をし合う、といったことができるそうだ。
この製品も一般人向けではなく、用途が用途だけに仮に端末だけを買うことができてもかなり高い価格になるだろう。とはいえ航空機マニアの方にはちょっと気になる製品かもしれない。海外のビジネス向けの展示会ではこのように、思いもよらぬメーカーの製品に出会えることもよくあるのだ。