新品のトランプをいつも使うのが筆者の仕事のルール
筆者の仕事はマジシャン。観客のすぐ近くで披露するマジックが専門です。そんなスタイルですから、観客の前で新品のトランプの封を切ってからマジックをスタートしています。
マジシャンも観客も直接トランプを手で触りますし、あらかじめ封が切られているトランプを使うと「何か細工をしたのでは……」と思われますから、新品を使うのです。
トランプの次によく使う道具は、マジック用のものではなく、キーボード。メールの執筆からイベントの企画書作りまで、トランプと同じくらい毎日使う仕事の道具です。もちろん、このコラムもキーボードを叩いて執筆しています。
ところが、トランプと同じくらい使うといっても、キーボードに関しては毎回新品を用意するわけにはいきません。そのかわり、できるだけキーボードをキレイに保つよう、こまめにメンテナンスをしています。
コーヒーなどを飲んだり、時にはスナック菓子などをPCの前でつまんだりしながら作業をするので、キーボードには意外なほど汚れが溜まります(もちろん、コーヒーをこぼすことはそうそうありませんが)。ゴミが内部に溜まると、キーを叩くごとに内部で発生した汚れやカビが拡散するだけでなく、キートップの汚れが指先に移ることもあります。
キーボードの清掃には、アルコール類はできるだけ使いたくない
最近は、除菌の需要もありますから、アルコールを含んだ洗浄剤が多く販売されています。しかし、プラスチック(樹脂)製品にアルコールを使うのはリスクもあります。
プラスチックにアルコールなどの溶剤系の薬品を使うと、「ソルベントクラック」とよばれる細かい亀裂を生じさせる恐れがあり、頻繁に使用するとプラスチック部品が壊れてしまう場合もあります。
国民生活センターによると、ドアノブを殺菌効果のあるスプレー(エタノール濃度約65%)で1日に5回程度拭いた場合、2ヵ月で破損したケースがあったことが報告されています。
キートップはメラミンスポンジで汚れを落とす
キーボードでもっとも汚れやすいのが、指が当たるキートップ。汚れが気になったときに筆者が使っているのがメラミンスポンジ(メラミンフォーム)です。
少量の水を付けて固く絞ったメラミンスポンジを、水分が内部に入らないよう軽く当てながら表面をこすります。ただ、メラミンスポンジを頻繁に使うと、表面のコーティングが取れたり、キートップの印字が消えたりしてしまう恐れも。
普段は超極細繊維などのクリーニングクロスを使い、汚れが気になったらメラミンスポンジを使うと良いでしょう。いずれの場合も、クリーニングをするときはPCからキーボードを外しておくこと。そうすれば、思わぬ誤入力やPCの不具合などが回避できます。
筆者は、夏季なら1ヵ月ごと、冬季なら3ヵ月ごとにメラミンスポンジを使った清掃を行っています。
内部の汚れ、手軽に掃除するならエアダスター
キーボードの内部のホコリが気になるなら、エアダスターを使った掃除がおすすめです。ただし、これはキーの間に空間のあるタイプのキーボードに限ります。いわゆるメカニカル方式やメンブレン方式と言われるタイプです。
ノートPCなどに使われる薄型のバタフライ方式、パンタグラフ(シザー)方式のキーボードでは、エアダスターを使うと、逆に内部にホコリを押し入れてしまうことがあるので注意が必要。
筆者が愛用している「HHKB Professional2」なら、キー面を下に向けてエアダスターのノズルを吹き付けることで、内部のホコリや髪の毛などをある程度は取り除けます。吹き付け時にはホコリが舞うため、浴室や屋外で実行すると良いかもしれません。
キートップを外して掃除するならキープラーが必須
しかし、キーホードは普段から使うものですから、エアダスターだけでは取り切れない汚れも付いてしまう場合も多いです。
そういった場合は、キートップを外して掃除します。キープラー(引き抜き工具)を使い、いくつかのキーを抜いて内部をのぞきます。
液体の乾いた跡やエアダスターで取りきれないサイズのゴミなどがあれば、すべてのキーを外して清掃となります。
なお、小型のマイナスドライバーなどでもキートップは引き抜けないわけではありませんが、破損の恐れもあるので、やはり専用の道具を用意するに越したことはありません。
キーを外す場合は、お使いのキーボードがキートップを外せるかどうか、取扱説明書を読んだりメーカーに確認したりしておくと良いでしょう。さらにキーの配列を間違えて取り付けないよう、キーボード全体の写真撮影をしておきたいところ。筆者は同じキーボードの買い置きがあるので、それを参考にしています。
なお、キートップを外せないパンタグラフ方式のキーホードなどの場合、本体をひっくり返してゴミを落としたり、小型の掃除機を利用してゴミとホコリを落としたりしてから、キートップをよく拭いておきましょう。
あると便利な筆と綿棒、汚れがひどければ薄めた中性洗剤を使う
キートップを外したら、まず絵筆などを使い、髪の毛や大きなゴミなどを取り除きます。キースイッチと本体のすき間などに入り込んでいる細かなゴミは、エアダスターで吹き飛ばしても良いでしょう。
次に、水、または水で薄めた中性洗剤を綿棒や布に湿らせて、汚れを軽く擦り落とします。ここでは水分が基盤に触れないように、水分を固く絞るなど、慎重さが求められます。
アルコール系洗剤を使いたくなりますが、プラスチックにアルコール製品を使う場合、すぐに揮発させるなど、できるだけプラスチックを傷めないよう注意が必要。清掃が終われば、十分に乾燥させ、キーを戻していけば掃除は終了です。
エアダスターだけの掃除vsキートップを外す掃除
メリットとデメリット
手軽なエアダスターを使用するだけの掃除と、キートップを外してからの掃除の違いは下の通りです。
エアダスターだけの掃除のメリット
○手軽に掃除できる
○キートップを外さないので故障や破損のリスクが少ない
エアダスターだけの掃除のデメリット
●エアダスターを用意しておく必要がある
●室温が低いと長く使えない
●完全にはキレイにならない
キートップを外す掃除のメリット
○しっかりと内部がキレイになる
○ていねいにやればキーボードが長持ちする
キートップを外す掃除のデメリット
●手間と時間がかかる
●キートップの紛失や故障のリスクがある
●キープラーなど専用道具が必要
買い換える派? それとも、長く付き合う派?
もっとも簡単なキーボードとの付き合い方として、普段はキートップを拭く程度にして、汚れが気になったら買い換える……という選択もあるかもしれません。
しかし、ある程度高価な製品でも、メンテナンスをしやすいキーボードを選び、こまめに掃除しながら使うという選択肢を筆者は選んでいます。同じキーボードに慣れると使いやすいですし、長い目で見れば、そのほうが快適で効率がいいと思っているからです。
使い終わったトランプは観客にプレゼント
蛇足かもしれませんが、新品のトランプの封を切ってマジックを披露すると、「使い終わったトランプはどうするの?」という質問をたまにもらいます。
筆者はマジックが終われば、観客の1人にプレゼントすることにしています。そうすれば、自分の名前がトランプに小さく印刷されていることもあり、マジシャンとしてのプロモーションにもなりますから……。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、チャールズ英国王もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。
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