◆スマートグラスの「XREAL」が透過率を3段階に変えられる新製品
AR(拡張現実)グラスを手掛けるXREALがスマートグラス「XREAL Air 2 Pro」を発表しました。アジア最大級のIT・エレクトロニクス展示会「CEATEC 2023」(10月17~20日開催)に体験ブースを出展。初日に説明会を開催したのでレポートします。
価格は6万1980円。先行予約開始日は10月27日、発売は11月17日を予定します。販路はXREAL公式サイト、Amazon.co.jp、ビックカメラ、ヨドバシカメラです。
XREALの製品はスマートフォンやPCを接続し、その画面をミラーリングすることで、より大きなスクリーンで楽しめるのが特徴です。XREAL Air 2シリーズには「XREAL Air 2」(発表済み)と上位モデル「XREAL Air 2 Pro」の2製品が用意されています。
今回発表されたXREAL Air 2 Proは、電気的にディスプレーの透過率を変更できる「電気クロミック制御」機能を搭載します。透過率は0%、35%、100%の3段階で変更できます。透過率を0%にすれば周囲がほぼ見えなくなり、グラス内に表示されるコンテンツに集中できます。
外からXREAL Air 2 Proを見ると、0%と35%の差はほぼ分かりませんが、100%では内部がやや透けて見えるのがわかります。
ディスプレーはソニー製の0.55型micro-OLEDを搭載します。新光学エンジンの採用などにより高画質を実現したといいます。Airユーザーから見ても文字や動画が鮮明に表示されるため、これまでよりも見やすくなったと実感できます。
ディスプレーの最大輝度は500ニトとXREAL Airから明るさがが25%向上しました。リフレッシュレートは120Hz、解像度は1920×1080ドットとなっています。
軽さもアピールされています。79gのXREAL Airでも十分な軽さを実現できていましたが、XREAL Air 2 ProはXREAL Airから約6%の軽量化に成功し、ノーズパッドを除く重量は75gとなりました。また、ボディー前後の重量配分を工夫したことで、安定的な装着が可能といいます。
テンプル(つる)には調光変更ボタンのほかにも、明るさと音量を調整するボタン、音漏れを極力防ぐスピーカーを搭載します。指向性などの工夫により装着者にしか音が聞こえず、音漏れしづらいとのことですが、静かな環境ではやや聴こえていました。
スマートフォンやPCとUSB Type-Cでの接続が可能なため、アダプターが不要かつケーブル1本だけで済む点もアピールされています。XREALによると、すでにiPhone 15 シリーズでも動作することを確認したとのことです。
◆なぜディスプレーの透過率を変更可能にしたのか
なぜ、XREAL Air 2 Proは電気的にディスプレーの透過率を変更できるのでしょうか?
日本Xreal General Managerのケン・ファン(Ken Huang)氏は、ユーザーから寄せられたフィードバックを活かしたと説明します。XREAL AirとXREAL Air 2は視界を遮るカバーを付けることで、周囲が見えづらくなり、コンテンツ視聴に集中できますが、そうでない場合はカバーを取り外す手間があります。透過率の変更はそうしたユーザーの声を聞いて取り入れられた機能だそうです。
気になるのが3段階調整としたXREALの意図です。XREALはこの手の製品をARグラスと呼称しますが、ケン・ファン氏は「100%仮想空間のVR、仮想空間と現実との融合となるMR、現実ベースで仮想空間も楽しめるAR」の3つをスマートグラス1つで体感できるようにすべく、XREAL Air 2 Proでは3段階調整を可能にしたと説明します。
ボタンを押すだけで簡単に透過率を変更できるため、片手がふさがっていても、もう片方の手で簡単に切り替え操作が可能な点も評価できます。筆者はよく動画レシピを見ながら調理する際などにXREAL Airを活用したいと考えていたので、もしXREAL Air 2 Proを入手したら透過率変更の機能を試して、ながら作業に向くのか検証してみようと思います。
◆認知度が上がらないスマートグラスの課題は?
XREAL製品(XREAL Air)の販売台数は「世界で20万台を突破し、業界でナンバー1のポジションにつくことができた」(ケン・ファン氏)そうですが、XREALが日本で1万人を対象に行なった調査において、「AR、VR製品を知っているかどうか、あるいは購入した経験があるか否かを聞いたところ、95%の人が「聞いたことがない」と回答。「聞いたことがある」と答えたのは4.5%、「購入したことがある」と答えたのはたったの0.5%だったそうです。
ケン・ファン氏は「日本でAR製品の普及をどう進めるのかが課題と捉えている」と話し、これらを実現するためにもユーザーへの理解を深めることが大事だとの考えを示します。調査では「現在のARデバイスのユーザーが幅広い趣味を持っていること(つまりあらゆる電子機器を複数台所有していること)」も分かったといいます。
XREALの調査でも示されているように、現在、ARデバイスが日本で普及しているとは言いがたい状況です。「コンテンツが少ない」点や、「ARデバイスが実生活にどう役立つのがが示されていない」点などが普及に届かない理由だと筆者は考えます。
XREALの製品、ひいてはスマートグラスが何に役立つのかと問われれば、スマートフォンやPCの画面を出力することぐらいでしょう。スマートグラスだけで楽しめるコンテンツは現在のところほとんどありません。OSも電源もスマートフォンやPC任せだからです。ただ、スマートグラスの利用シーンの広がりが見られれば、手を出す人も増えるのではないでしょうか。