京都大学、セント・メアリーズ大学などの国際共同研究チームは、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)」による観測で、宇宙年齢がわずか約10億歳の初期宇宙において、二つの「赤ちゃん銀河」同士が衝突合体、急成長している現場を発見した。
京都大学、セント・メアリーズ大学などの国際共同研究チームは、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)」による観測で、宇宙年齢がわずか約10億歳の初期宇宙において、二つの「赤ちゃん銀河」同士が衝突合体、急成長している現場を発見した。 研究チームは今回、JWSTによる国際観測プロジェクト「カヌークス(CANUCS:CAnadian NIRISS Unbiased Cluster Survey)」で観測された銀河団領域の背後において、赤方偏移5以上(宇宙年齢にしておよそ10億歳未満)にある形成初期の銀河の成長について調査を実施。赤方偏移5.1付近にある二つの超低質量銀河(いずれも天の川銀河の質量の1万分の1以下)が衝突している様子を発見した。 同チームはさらに、複数のカラーフィルタによる撮像観測を実施し、どちらも活発な星形成活動をしていることを明らかにした。この活発な星形成活動は銀河衝突に由来するものであり、この二つの銀河が合体して一つの銀河になるころには星質量にして元々の銀河の4倍以上大きさの銀河へと成長することが推測されるという。 宇宙初期において、銀河がどのように成長進化を遂げたのかは、いまだに分かっておらず、特に形成直後の「赤ちゃん銀河」の成長過程を観測的に解明することは、その暗さのために非常に困難とされている。今回対象とした二つの赤ちゃん銀河は、重力レンズ効果により本来の明るさより15倍程度明るく見えており、詳細な調査が可能となった。 研究論文は、「王立天文学会月報レターズ(Monthly Notices of the Royal Astronomical Society Letters)」に2023年5月9日付けで掲載された。(中條)