2023年8月8日から8月9日にかけて、Salesforceユーザーグループ(SFUG)による年次最大のイベント「Salesforce全国活用チャンピオン大会(SFUG CUP 2023)」の決勝が開催された。11回目を数える本大会は、Salesforceの導入によりビジネスの成果をあげたユーザー企業が、アイディアやヒントを披露する場となる。
本記事では、大企業部門で見事優勝に輝いたタカラスタンダード 営業法部の新實小百合氏によるプレゼンテーション「根性ドリブンからデータドリブンへ~カンと経験の営業スタイルからの脱却」のレポートをお届けする。
Salesforceによる最大効果はコロナ禍での過去最高売上の達成!
タカラスタンダードは、大阪府に本社を置き、システムキッチンやシステムバスなどを製造販売する住宅設備メーカー。創業は1912年と長い歴史を誇り、業界最多となる157ヵ所の支店・事務所、163ヵ所のショールームを抱える。一方で、Salesforceを利用する上では、その拠点数の多さに頭を悩ませたと新實氏。
タカラスタンダードは、Salesforceを全社的な業務プロセスのプラットフォームとして一元導入しており、営業や施工、修理、アフターといったさまざまな部門で活用。その中でも営業部門では、「Sales Cloud」と「Marketing Cloud」を、1500ライセンス以上で利用しているという。
新實氏は冒頭、Salesforce導入の効果として、コロナ禍中の2022年度に売上過去最高を達成したことを挙げた。Salesforce導入プロジェクトが開始したのが2019年、2022年度は2018年度と比べると18%の売上の増加だ。しかも、ショールーム来場数(12%減)、イベント実施数(21%減)、働き方改革により残業時間(31%減)が大幅に減少した上でだ。
「いまでこそ営業内でSalesforceはあって当たり前の存在となっているが、最初は社内で誰もSalesforceを信じていなかった」と振り返る新實氏。自身も「Salesforceを導入したら本当に売上が伸びるのか」と半信半疑だった。
そんな新實氏がなぜSalesforceの導入担当になり、今なお担当を続けているのかというと、「自社の営業を変えないと!」という強い危機感からだという。以前のタカラスタンダードは、いつでも電気がついていて“不夜城”と呼ばれるほど、根性で乗り切るような営業体制だった。新實氏は、シュリンクしていく業界を生き残るために必要なのは“データドリブン営業”だと思い、それを最速で実現するプラットフォームとしてSalesforceに行きついた。
Salesforce導入が成功した要因について、新實氏は「ずばり設計と定着がきちんとできたから」と分析する。
タカラスタンダードの営業部門のシステム構成は、Salesforceと基幹システムからなり、営業担当およびアドバイザーがSales Cloudでデータを扱い、業務はほぼこの中で完結する。基幹システムにおいては商品手配以降のデータを管理。そしてBIで、Salesforceと基幹システムのデータを連携して分析する構成をとっている。
Salesforceへ良質なデータが入力されるための業務フローの構築
まずは、業務フローの設計に関するポイントが説明された。新實氏は、データドリブン営業を目指す上で、「いかにスムーズにSalesforceへ良質なデータを入力してもらえるか」を重視したという。そのために、従来の業務をSalesforceに置き換えるのではなく、「Salesforce上に自然と情報が集約される」よう業務の流れ自体を組み立てなおした。
たとえば、営業担当やアドバイザーにとって必須となる顧客登録や見積作成といった業務を、Salesforce起点でしか作成できないように設計。これによりSalesforceのログイン率は100%となった。
BtoBとBtoCで異なる業務フローは、取引先を一意化したり、業務に関わるすべての情報が一元集約されるように設計した。これにより、引継ぎ時の情報伝達漏れがなくなり、取りこぼしが減少したとのことだ。
また、手書きやエクセルで作成してた日報は、ダッシュボードで多角的な軸で示されるようにし、訪問“件数”だけでの指導から、どういうところに、どのくらいの割合で訪問したかなど、訪問“内容”にもとづく指導が可能になった。
これらの成果もあり、成約率は11ポイントアップ(2018年度と2022年度の比較)し、営業担当とアドバイザーの対面での状況共有会議は64%削減された。