「なんちゃって5G」が奏功か
そんななか、ソフトバンクがネットワーク品質の維持・向上で上手かったのが、5Gエリア展開を一気に進め、面展開を最優先したことだ。
実は5Gエリアをスポット的に展開していくと、「セルエッジ」と呼ばれる電波が吹いている端っこの部分がたくさんできてしまう。セルエッジでは通信品質が安定せず、5Gにつながっても、データが上手く流れなくなる。その結果、ユーザーには「5Gでも遅い」という体感になってしまうのだ。
また、アンカーバンドと呼ばれるLTE網にトラフィックが集中してしまう事態も起き、混雑による体感低下を生み出すことになるのだ。
そこで、ソフトバンクでは5Gエリアを一気に面展開することで、セルエッジができるだけでないようにした。またアンカーバンドも広げることで、混雑がなく、ユーザーに対するデータがスムーズに流れるようになったのだという。
ソフトバンクの関和智弘CNO(チーフ・ネットワーク・オフィサー)は「4Gと5Gをいかにミックスさせて活用していくかが重要」と語る。
実はソフトバンクでは5G用に割り当てられた周波数帯ではなく、4G用の周波数を5Gに転用していた。
もともとは4G用の周波数帯なので、5Gに期待されるような速度は出ないのだが、5Gでつながるエリアは確実に広がる。業界的には「なんちゃって5G」と言ったりもするのだ、この「なんちゃって5G」を優先したことで、結果として「真の5G」に近づくことができたのだ。
実際のところ、5Gに期待されるような大容量のファイルを扱うようなサービスというのはほとんど存在しない。ユーザーとしては「YouTubeのサムネイルをタッチしたら、すぐに動画が再生される」ほうが、快適にスマホを使っている感覚になれる。
ソフトバンクとしては、数Gbpsといった、いたずらに最高速を追うのではなく、ユーザーが「スマホをサクサク使える環境」を最優先したというわけだ。

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