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燃料電池内部の電流分布の可視化と安定稼働を実現=筑波大など

2023年09月28日 06時27分更新

文● MIT Technology Review Japan

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筑波大学と小山工業高等専門学校の共同研究チームは、磁気センサーを用いた非破壊診断により燃料電池内部の電流分布をリアルタイムに可視化する手法を開発し、電流分布には電圧波形に比べて回復遅れが生じることを明らかにした。さらに、電流分布のみを制御指標として、燃料電池の安定稼働を可能にする制御システムを実現した。

筑波大学と小山工業高等専門学校の共同研究チームは、磁気センサーを用いた非破壊診断により燃料電池内部の電流分布をリアルタイムに可視化する手法を開発し、電流分布には電圧波形に比べて回復遅れが生じることを明らかにした。さらに、電流分布のみを制御指標として、燃料電池の安定稼働を可能にする制御システムを実現した。 燃料電池は、発電時に二酸化炭素を発生せず、水しか出さないクリーンな発電技術として注目されている。しかし、水が電池内部に滞留して発電の邪魔をする「フラッディング」と、水を除去しすぎて水素イオンが透過する高分子膜が乾燥してしまう「ドライアウト」という二つの相反する現象の発生により、発電性能が低下するという問題がある。 研究チームはこれまで、磁気センサーを用いて燃料電池の不具合を検知し、これを制御する手法を検討してきた。今回は、電流分布の絶対的な値ではなく、運転初期状態からの差分という相対的な値を算出することでセンサー計測数と計算時間を削減。燃料電池内の電流分布をリアルタイムに可視化することに成功した。 さらに、同手法により、これまでに開発した電圧指標を用いた制御方法における電流分布を評価。この制御方法では電圧は安定するものの、電流分布には不具合時と同様の偏りがあることを明らかにし、電流分布のみに基づいたシンプルな制御方法により、燃料電池の電流分布を一定に保ち、安定状態での稼働を実現した。 研究論文は、アプライド・エナジー(Applied Energy)に2023年9月13日付けで掲載された

(中條)

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