東京大学などの研究グループは、C型肝炎ウイルス駆除後の発がんリスクを予測する機械学習モデルを開発した。開発したモデルはWebアプリとして公開している。
東京大学などの研究グループは、C型肝炎ウイルス駆除後の発がんリスクを予測する機械学習モデルを開発した。開発したモデルはWebアプリとして公開している。 肝がんの大きな原因の1つであるC型肝炎ウイルスは、ほぼすべての症例で駆除できるようになったが、駆除後にも肝がんは発生し、そのリスクは患者によって大きく異なる。患者ごとに異なる発がんリスクを見積もることは難しく、効果的な治療戦略を立てることが困難だった。 研究グループは、C型肝炎ウイルス駆除後の肝がん発症に関する多施設研究グループである「SMART-Cグループ」に登録がある1742人の患者情報を利用して機械学習モデルを構築した。C型肝炎ウイルス駆除が済んだ時点の年齢、性別、BMI、肝臓の線維化マーカー(血小板)、炎症マーカー(AST、ALT)、腫瘍マーカー(AFP)、肝機能指標(総ビリルビン、アルブミン)、酸化ストレスマーカー(γ-GTP)、糖尿病の有無、飲酒歴の有無といったデータを患者1人ごとに抽出し、経過観察期間の肝がん発症リスクを予測する機械学習モデルを構築。大垣市民病院に登録がある977人の患者データでモデルの精度を検証した。 機械学習モデルは、さまざまな疾患リスクの予測に使われている「Cox比例ハザードモデル」を基にしたものに加え、「ランダム・サバイバル・フォレスト」を基にしたもの、深層学習を基にしたものなど4種類を構築。検証の結果、ランダム・サバイバル・フォレストを基にしたモデルが最も高い精度を記録した。このモデルのc-indexは、SMART-Cグループのデータで検証したときに0.936、大垣市民病院のデータで検証したときに0.839(1に近いほど精度が高い)となった。研究グループはこのモデルを最終モデルに選定し、SMARTモデルと命名した。 研究成果は9月14日、ジャーナル・オブ・ヘパトロジー(Journal of Hepatology)にオンライン掲載された。研究グループは、臨床現場で利用することで、患者ごとの発がんリスクに応じた個別化医療に貢献できるとしている。(笹田)