バイオベンチャーのちとせ研究所は、微生物による物質生産において、温度やpHなどの従来から用いられてきたデータに、色や匂いなどの匠の感覚をデータとして加えた、ビッグデータで訓練した人工知能(AI)による制御システムを開発。培養状態の最適化と、熟練者を超える高い生産量を達成できることを評価、検証した。
バイオベンチャーのちとせ研究所は、微生物による物質生産において、温度やpHなどの従来から用いられてきたデータに、色や匂いなどの匠の感覚をデータとして加えた、ビッグデータで訓練した人工知能(AI)による制御システムを開発。培養状態の最適化と、熟練者を超える高い生産量を達成できることを評価、検証した。 従来の微生物培養制御では、培養槽内に設置した各種センサーから得たデータと目的化合物の生産量や菌体量との因果関係から、熟練者が最適な培養条件を求め、その内容を基に培養制御をしている。研究チームは今回、AIに培養槽内の制御パラメーターと生産量の関係を詳細に学習させるために、多種多様な新規のセンサーデバイスを独自に開発。これらのデバイスから得られるデータを用いて、培養状態を予測するAIモデルを構築した。 構築したAIモデルを用いて、協和発酵バイオと共同で機能性食品素材の生産性実証試験を実施。最適な培養状態を高精度かつリアルタイムに自動制御することで、熟練者を約10%上回る生産量を達成できたという。 食品素材などの発酵生産では最適な培養条件の設定など安定的な生産のために熟練者の知恵やノウハウ、五感を駆使した、いわゆる「匠の技」が必要となる。だが、匠の技の継承や習得には非常に長い時間が必要であり、熟練者の高齢化や海外生産による技術流出に伴い、熟練者に代わって安定的に生産できる技術の開発が急務となっている。(中條)