日立GLSでは、2020年度にパーパスを制定したに続き、先ごろ、新たに事業ステートメントを制定した。
その狙いは、パーパスを実現するために、事業の方向性を明確にすることにある。
パーパスでは、「ひとりひとりに、笑顔のある暮らしを。人と社会にやさしい明日を。私たちは、未来をひらくイノベーションで世界中にハピネスをお届けします」としたのに対し、家電分野の事業ステートメントは、「変わり続けるライフスタイルに、多様な選択肢を。環境を思いやりながら、心地よい暮らしを。ホームソリューションで、あなたの毎日に便利を超えた豊かさをお届けします」とした。
ここでも、家電を通じて、多様化する新たな生活スタイルに対応して、生活を豊かなものにするという姿勢を明確にしている。
大隅社長は、2022年12月から、「社長メッセージ動画」を社員に向けて配信している。
社員の意見や、社員からの様々な質問に、大隅社長が直接答えるという内容で、すでに31回の配信を行っている。
社長室をスタジオとして活用。ひろゆきのYoutubeチャンネルの雰囲気を意識したようなカメラ配置で、社員からの質問に回答。「どんな質問からも逃げないのがモットー」だという。
動画では、今後のキャリア形成に関する質問に対して、大隅社長の経験をもとにアドバイスしたり、工場現場で設備の更新が遅れていることに対して、その理由を説明したりといったように、社員が納得できるようにわかりやすく答えている。
「社長メッセージ動画を開始した理由は、中堅社員や若手社員から、上司にモノを言いにくい状況があったり、言ったとしても経営層には届かないとあきらめていたりといった声を聞いたのが発端だった。それならば、私が、直接、答えようと考えた」という。
その課題は別の指標からも感じていたという。それは、日立GLSの社員エンゲージメントの指標は、日立グループ全体のなかでも低い方だったからだ。
「若手のあきらめ感や上意下達が強く、活性感が失われているという課題を感じていた。それを打破するために、私自身が、振り切ってやってみようと考えた。若手が声を出しやすくなるきっかけを作り、声を出して実行すると、会社が面白くなるということを実感してもらいたい」
社長メッセージ動画を開始して以降、エンゲージメント、チームワーク、会社への誇りに関する指数が向上。「働きがいのある職場」や「組織や職務の壁を越えた効果的なコラボレーション」に対する肯定回答が増加している。
「現場に行くと、社員からも声をかけてもらいやすくなっている。社員の意識の変化が、経営の活力になっていることを実感している」と、社内の変化に手応えを示す。
今年のエイプリルフールには、「社長・大隅英貴をイメージキャラクターに加え、『そこで日立!』をキーワードとした家電品のCM施策を展開」と題したリリースを打ち、X(旧Twitter)でその内容を公開。こうした活動も、大隅社長と社員のエンゲージメントを高めることにつながっているようだ。
また、「パーパスタイム」として、1日に15分間、好きなことができる環境を用意。モノづくりを行う社員が、デジタルを勉強したり、家電担当の社員が、空調事業に取り組んでみたりといったことが始まっている。
さらに、「ハピネス屋さんの語り場」として、組織の枠を超えて、社員が自らを語り、お互いを知ることができる活動も開始。洗濯機の開発者が、そのこだわりを徹底して語ることで、営業がそれを知り、その熱を、そのまま販売現場に伝えるといったことが起きている。
こうした風通しのいい組織づくりは、大隅社長が強くこだわっている点だ。
そうした枠にとらわれない風土のなかから、生活の困りごとを解決したり、多様化する生活スタイルに貢献したりする家電が生まれている。
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