本当の変化はリニア中央新幹線開通後
以上を踏まえ、筆者自身は、JR東海によるワゴン販売廃止の決断は経営側としては至極真っ当な判断であったと考えている。
普通車にモバイルオーダーを導入せず、車内販売を事実上グリーン車に限定したことはやり過ぎのようにも感じるが、東海道新幹線は普通車の座席数だけで1000席以上あるため、2023年現在の技術と人件費では致し方ない部分もあるだろう。
もっとも、グリーン車のモバイルオーダー制度も未来永劫安泰とは言い難い。JR東海が2027年度の部分開業を目指すリニア中央新幹線では、品川〜名古屋間が30分、大阪まで全線開通後は品川〜大阪間が約1時間となり、車内販売が実施されるかどうかは微妙なところだ。
さらに開通後は「のぞみ」利用者の多くがリニアへシフトすることから、東海道新幹線の車内販売も損益分岐点を下回る可能性がある。そう遠くない未来に、グリーン車のモバイルオーダーすら消滅することも十分あり得るのだ。
JR東海は販売員に十分なフォローを
今回のワゴン販売廃止により、決して少なくない数の人々が職を失うことになるはずだ。JR東海と関連する企業は、該当者に対して配置替えや再雇用の支援など十分にフォローする責任がある。これまで会社を支えてくれた人々に不義理を働くことのないよう切に願いたい。
最後に、この記事ではワゴン販売のことを散々批判したが、筆者はそれでもワゴン販売が大好きだ。一癖も二癖もあるワゴンと共に過ごした日々、特にお客様に何か買ってもらえたときの嬉しさは今でも忘れられない。
東海道新幹線のワゴン販売は10月31日まで。他の新幹線では11月1日以降もワゴン販売は残るが、こちらも年々縮小傾向にあることは確かだ。本コラムを読んでいる今、あなたが新幹線に乗っているなら、ぜひワゴン販売を利用してみて欲しい。たとえコーヒー1杯でも販売員は笑顔で歓迎してくれるはずだ。