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業務を変えるkintoneユーザー事例 第195回

伝統の内子座で行なわれた中国・四国地域のkintone hiveトップバッター

町役場はアナログで当然? 出向職員がkintoneで変えた業務と現場の意識

2023年08月28日 09時00分更新

文● 指田昌夫 編集●MOVIEW 清水

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 今年はリアル開催のみとなった「kintone hive 2023」。中国、四国地区編は、愛媛県内子町にある「内子座」を舞台にして5つの団体が事例を披露した。事例紹介のトップは、徳島県神山町役場の角南大雅氏が登壇し、役場職員の業務をkintoneで改善した過程を紹介した。

kintone hive 2023 matsuyamaの舞台となった内子座

伝統の内子座で最新のkintone事例を披露

 JR松山駅から特急電車で30分ほど南下した内子町にある内子座は、1916年(大正5年)に建てられた芝居小屋。歌舞伎や落語、映画などの出し物を上演し、舞台には奈落から人力で舞台へ人を持ち上げる「せり」も設置される本格的な施設である。1985年に劇場として復元され、多目的スペースとしてコンサートやイベントで活用されている。

内子座は大正時代から使われている芝居小屋

 そんな由緒正しい内子座の舞台に立った角南氏は地元徳島県の出身。Webエンジニアとして、本社が東京渋谷にあるITベンダーのモノサスに所属しているが、現在は「地域活性化起業人」として神山町役場に出向している。

 地域活性化起業人とは、地方自治体に都市の企業から人材を派遣し、企業のノウハウや知見を活かして地方の魅力向上に貢献する制度である。

 神山町は、徳島市から車で1時間ほど内陸に向かった先にある人口約5000人の町である。一見するとのどかな山間部にある小さい町だが、じつは、デジタルインフラが整備されていることで有名だ。そのインフラを生かして、IT企業のサテライトオフィスの誘致を積極的に進めている。モノサスも神山町にサテライトオフィスを構える1社だ。

 地方創生をリードする自治体として県内県外を問わず知られる神山町だが、町役場の業務は旧態依然のアナログだった。角南氏は、大量の紙の文書と手書きメモ、属人化した秘伝のExcel台帳が積み上がった状態に直面した。

「私が一番問題だと思ったのは、職員のかたがみな、普段の業務を変えられることに気づいていないことだった」(角南氏)

徳島県神山町役場の角南大雅氏

 角南氏は職員の意識を変えたいと思い、取り組みを開始する。業務のヒアリングを進め、職員のワークショップを何度も実施した。その結果、少しずつ職員から角南氏のもとへ、業務改善の相談が入るようになる。

 角南氏は、業務改善のツールとしてkintoneを使うことに決めていた。神山町には多くのIT企業のサテライトオフィスがあり、役場の職員がそれらの企業と関係を持つなかで、kintoneというツールがDXに使えるツールだという認知がされていたことが幸いし、導入のハードルを低くした。

音声通話しかできない山間部なら、音声認識を使えばいい

 角南氏は、kintoneで進めた業務改善の事例を2つ紹介した。最初は、包括支援センターにおける「留守電×kintone」の開発だ。包括支援センターは、町が保健師や社会福祉士などの専門職員とともに住民の生活支援を行う組織だ。支援の主な対象は高齢者だが、職員が業務に追われて高齢者を見守る時間が十分にとれなかった。

 包括支援センターの職員は、高齢者の自宅を訪問して状況を聞き取り、聞き取った内容を紙にメモして役場に戻り、PCで報告書を作成する。だがPCは役場に1台しかなく、他の職員が使っていると待たなければいけない。作成が数日後になることも多く、いざ書こうとするとメモの内容を思い出すのに時間がかかっていた。

報告書作成にかかる時間を短縮するためにスマホを活用

 この課題に対して、角南氏は最初に、スマートフォンからWebフォームに直接入力する方法を提案した。だが、これは不可能だった。高齢者の自宅は山深いところに散在しており、2018年当時、モバイルデータ通信が圏外の地域が存在していた。そのため、そもそもWebフォームを開けなかったのだ。また、職員のなかにはスマートフォンの入力に慣れていない人も多く、業務で使うことは難しかった。

 どうすれば山間部でもデジタルが使えるか。角南氏は思案の末、データ通信は無理でも音声通話は通じていることに着目する。電話で送った音声を自動文字起こし機能でテキスト化し、kintoneへ直接投稿する方法を思いついた。スマートフォンを操作する必要もなく、一石二鳥だった。「文字起こしの精度は100%ではないので、音声データそのものもkintoneに登録し、後から確認できるようにした」(角南氏)

 実際に作った訪問履歴アプリは、以下のように動作する。職員が決められた番号に電話をかけると、アプリに電話番号が記録され、職員が特定される。音声は文字起こしされてメモとして記録され、同時に録音データが保存される。職員は役場に戻ってアプリを開き、音声データを聞きながらメモを修正して報告書を完成させる。

 このアプリによって、住民訪問時の紙のメモが不要になった。また、電話をかけた時点で報告書の基本的な部分ができているので、手間を大幅に減らして安定した報告書の作成ができるようになった。その結果、包括支援センターでは、見守りの時間を増やすことが可能になった。

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