スタッフの使いやすさにも配慮
東京ドームシティビジョンズで採用している「アダプティブアイデンティティシステム」は、ビジュアルコミュニケーションデザインスタジオの&Form(アンドフォーム)と、ジタルコンテンツシステム開発のaircordが協業でオリジナル開発し、実装した。
「操作を行う東京ドームシティのスタッフが、専門知識がなくても自由に使えるソフトウェアを開発した。ジォネレーティブデサインと呼ばれるソフトウェアであり、モーショングラフィックスや映像、画像を伴った様々なデザインを制作でき、来場者を飽きさせない様々な演出ができるようになる」(&Form LLC 代表の丸山新氏)という。
アダプティブアイデンティティシステムは、駅を降りた瞬間から感動を届け、進むにつれて感動を増幅させるビジョンを実現し、街全体に散りばめられたビジョンが、点、線、面となった多彩なストーリーを紡ぎ出すことを目指すという。
なお、大規模地震発生時などの災害時の情報発信にも対応。防災および防犯機能を向上させるとともに、行政と連携した地域の魅力向上のための情報発信も行っていくという。
東京ドームの長岡社長兼COOは、「東京ドームシティには、東京ドームホテルがあり、遊園地である東京ドームアトララクションズがあり、ラクーアや東京ドームがある。それぞれの施設は、それぞれに認知されていると自負しているが、東京ドームシティ全体として認知されていないという現実がある。約5年前から、東京ドームシティを、ひとつの街としてブランディングする活動に着手してきた」とし、「2023年3月31日には、東京ドームシティの新たなロゴマークを発表した。1種類のロゴでなく、文字の形や色が異なるものを複数用意した。東京ドームシティには様々な施設があり、それぞれの施設への来場者も異なる。イベントによっては、街の雰囲気ががらっと変わる。ロゴの色と形を変えることで、東京ドームシティというアイデンティティを保ちながら、東京ドームシティが持っている多彩な施設、多様な人々が集まってくることを表現する狙いがある。これも東京ドームシティビジョンズを通じて表現していきたい」と述べた。
東京ドームシティビジョンズによる大規模で、広範囲なビジョンへのデザインシステムの導入および運用する事例は、世界的にも稀だという。
来場者の非日常感の醸成や期待感の高揚、滞在快適性と回遊性の向上などを図り、街としての一体感と、より魅力的な空間を創出するために、東京ドームシティビジョンズが果たす役割は大きい。東京ドームシティが持っているアイデンティティを生かすことで、世界一のエンターテインメントシティへと進化するための一歩が、東京ドームシティビジョンズということになる。
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